第234話 財務
「なんで1日で引っ越し終わってんの!!」
新居で弥生と風香と仲良くした後、武藤は風香を未来の家に送り届けた。新居はネットがまだ通っていなかったが、猪瀬の力により明日には使えるようになる。だが今日はまだ使えないため、結局風香は今晩、未来の家に泊まることになったのだ。
ちなみに水道と電気は既に通っていた為、お風呂には入ることができた。何故真っ昼間からお風呂に入ることになっているのかは言うまでもないことである。
つまり既に引っ越しが終わったと聞いて上記の未来の叫びである。ちなみにこれで引っ越しが必要なくなった為、加害者からもらえる賠償金に引越し費用を上乗せしてもらうことになっている。
「こまけえこたあいいんだよ!!」
「言い訳あるか!! こっちはお前を泊め――」
叫んでいる途中に未来は風香の匂いをかぎだした。そして隣りにいる弥生の匂いも。
「お前ら……やったな?」
「「!?」」
その言葉に2人は同時に未来から視線を逸らせた。ちなみにお風呂では2人とも武藤が持っていたシャンプー等を使用している。
「こんな明るいうちからおんなじ匂い!! してきたんでしょ!! エロ同人みたいに!!」
「なんで女がそんなもの知ってるんだ……」
武藤は15だが中学時代にクラスメイトが持ってきていた、兄の所有物という同人誌を見たことがあった為、そういうものの存在を知っている。
「女でもそういうのを普通に見るのですよたっくん」
風香も武藤をたっくんと呼ぶようになっていた。ちなみに風香には武藤武ということはもうバレている。
「私はもっぱら男同士のやつだけど」
「腐ってやがる……」
「早すぎたんだ」
風香は武藤のノリに普通についてきた。武藤は風香に親指をぐっと立てると風香もまた同じように返す。
「何か私よりわかりあってるきがするんだけど?」
そういって弥生が少しむくれた表情を見せる。配信者故にネットミームにそれなりに詳しい弥生だが、やはり普段からそういう文化に慣れ親しんでいないととっさには出てこないのである。
「今のはナウシカで早く出しすぎた巨神兵が腐ってるのを見てクロトワがいった台詞ね」
もちろん未来も余裕でついてきており、弥生に今節丁寧に説明をしていた。
その後、なんとか武藤を引き留めようとする未来を振り切り、武藤は弥生とともに地元へと帰っていく。そしてまた仕事三昧な日々が始まった。
「武藤明日だぞ。忘れてないだろうな?」
「……なにが?」
「やっぱり忘れてやがったな!! オークションだよ!!」
「あー」
地元に戻るなり剛三から連絡があった。以前から武藤の持っているものをオークションできないかという話があったのだ。
何故かと言えば、特別な客専用のすごいやつを用意することで、廉価版の武藤の薬もそこからの伝手で広く知らしめることができるということであった。そのため、VIP用のすごいアイテムが無いか打診されていたのだ。ちなみにそれらは既に剛三には教えてあり、情報は猪瀬に渡っている。
「世界中のVIPが来るんだからな。ほんと頼むぞ!!」
武藤としてはぶっちゃけどうでもいいのだが、売った金は諸費用以外、ほぼ全て武藤の懐に入るので武藤としても文句はなかった。猪瀬としてはこれで武藤の卸す薬の知名度があがり、販売路も作れるということで気合が入りまくりである。
非公開で裏のオークション扱いのため、もちろん非課税である。猪瀬は財務省の人間の手綱を握っている為、その辺りに抜かりはない。政治家ですら下に見ている財務省も、自身や家族の命を対価にされれば大人しく従うしか無いのである。ちなみに犯罪をしているわけではなく、ただ命を救ったことがあるだけであり、脅しているわけではない。幸せを満喫させた後、いつでも元に戻せるといってあるだけである。それでたまたま猪瀬が忖度される。それだけである。
ちなみに猪瀬が最初に抑えたのが財務省の人間である。そもそも剛三は財務省の人間には不信感しかもっていなかった為だ。まいどまいどマスコミが国の借金借金と報道しているが、借金1500兆というわりには資産が1600兆あるということは報道しないのである。そうすることで増税してもしょうがないと国民に思わせたいのが丸わかりである。実は減税しても全然大丈夫なのに自分たちに都合が悪いからそれを言わない。103万円の壁がどうとか言っているが、こんなに低いのは日本だけである。
ちなみに資産であるが、8割はすぐに売れるものである。なぜ売らないかと言えば、それは全て天下り先だからだ。天下り先がなくなるから財務省の官僚は資産を徹底的に隠すのである。故に消費税が増税されると、それをした職員は事務次官一直線、逆に減税すると降格させられるのが財務省という組織だ。
後、消費税なんかはイギリスは20%だから日本はまだ上げる余地があるとかのたまっているが、実質負担率は日本の10%とイギリスの20%は6.6%と同じである。なぜなら向こうは食料品や消耗品に殆ど消費税がかからないのだ。イギリスだとアイス等以外は気温より温度が低いと税がかからない。つまりフィッシュ&ポテト等露店で売っていると税がかかるが、冷凍で売っていたらかからないのだ。要は外食しなきゃ食料品にはかからないようなものである。
しかも消費税は社会保障費に当てられると財務大臣が答弁しているが、まったくのデタラメである。なにせ消費税収入が3億増えても社会保障費は前年と全く同じ時点で普通はおかしいと気がつく。全て使われているなら最低でも消費税と同じくらいはあがっていなければいけないはずである。ちなみにある年は30兆以上繰越金があった。政府のお金は貯金のようなマネができないので完全に無駄になったということだ。そもそも全て社会保障費に当てられているのなら社会保険も年金もこんなにあがるはずがないのだ。ではどこに流れているのかと言えば、大企業の減税キックバックである。
剛三は立場的には大企業の社長であるがそれを良しとせず、国を良くするためにはまず財務省を抑えなければいけないと判断したのである。ちなみに財務省の人間は知らないが、天下り先は年々猪瀬に消されている。なにせ財務大臣が天下りをすると、働きもしないのに毎年総理大臣の数倍の年収を貰って生活できるのだ。天下りで一番金を貰っているのは日銀総裁ではなく、財務省の人間なのである。その時になるまで本人達は知らないが、あとになって天下りを夢見ていた者たちは絶望することになる。下る先がなくなっているのだから。
ちなみに現在晴明において一番人気の仕事は健康診断である。体中を調べて異常がないかを検査するが、武藤は別に医者でもないので、違和感のある部分を指摘するだけである。病院で行われるそれは、一緒に医者も同席しており、武藤の指摘した場所と症状を聞いてさらに医療的な検査が行われる。例え健康であっても自身の身体に不安がまったくないといえる者は少ない。特に歳を取ればとるほどそれは顕著になっていく。故に病気があれば絶対にわかるという武藤の健康診断は大人気であった。実際、かなり初期のガンすら発見している為、噂が噂を呼んで現在は予約だけで1年待ちである。ちなみに最初の1回は無料であり、その後は時価となっている。現在の相場は500万程であり、治療がつくと億を超えるのだが、人気は衰えるどころか需要がどんどん増している状態だ。顧客で一番多いのが財務省の官僚達である。大金を手にし、欲を満たした後に最後に願うのは、自身の健康なのはどこの世界も同じであった。
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