第225話 悪魔
世界中で有名になろうとも武藤の生活が変わることはない。恋人達と爛れた日常を送り、仕事で世界中を飛び回る。いつもと変わらない日常であった。ただ変わったのは移動時に海外であっても変装を余儀なくされることである。どこでバレるかわからないからだ。
(まあ、いつもと変わらんけど)
海外では素顔だったのが、日本と同じようにメガネにマスク姿になっただけである。武藤としてはいつも通りである。
電話も武藤の連絡先を知っているものは殆ど居ない為、かかってくることはほとんど無い。つまり武藤の日常はそれほど変わっていなかった。
ちなみに現在武藤が一番はまっているのは……新規組の開発である。どういうことかといえば、家に泊まっている瑠美、結愛、六花の3人の体を開発しまくっているのである。
「もうやめて!! 彼女達が人に戻れなくなる!!」
と百合が叫んでしまうほど、3人はそれはもうドロドロのグチョグチョでやばいアヘ顔をさらして気絶させられていた。殆どの女性が生涯知ることがないであろうレベルの快楽を与えられ続けているのである。
「やりすぎだねえ」
と、香苗からストップがかかってしまい、3人はようやく武藤から開放されたのであった。
その代わりといってはなんだが、現在は一番開発されていない弥生が次のターゲットとなっている。ただ、こちらはイチャラブ主体であり、そこまで徹底的に仕込むというようなことはしておらず、ゆっくりと進めている状態である。
ちなみに件の3人を何故徹底的に襲ったのかと言えば、関係がまだ浅いために自信がない武藤が、誰にも3人を取られまいと頑張った結果である。
「たっくんちょっといいかな?」
情事が終わりピロートークをしていると弥生がためらいながら声をかけた。
「なに?」
「たっくんて幽霊見える?」
「見えるよ」
幽霊という存在は様々な種類があり、武藤の判断する幽霊とはオーラがその場に残っているもの、魔力が何かしらの媒体を通じて物体のように具現化しているもの等、いろいろある。だが一言いうならば、どんな状態であろうが武藤は見ることも感知することもできるということである。
「知り合いのVtuberがね。なんか心霊現象に悩まされてるみたいなの」
「気のせいじゃないの?」
「それが、この前スタジオであったらものすごいやつれてて……」
「病は気からっていうからただ神経質になってるだけだと思うけど、まあ弥生がいうなら見てあげるよ」
「ほんとっ!! なるべく早いほうがいいから連絡してみるね!!」
そういって弥生は早速電話する。
「はるちゃん? ちょっと大丈夫? はるちゃん? はるちゃん??」
「どうしたん?」
「家にいるはずなのに……電話の後ろでザーザーと音がうるさくてよく聞こえなくて」
「……まずいな。すぐいったほうがいいかも」
心当たりがある武藤はすぐさま弥生を連れて東京へと転移し、弥生に連れられて件の人物のマンションへと足を運んだ。
「出てこない。マネージャーに連絡してみるね」
件の家に到着し、呼び鈴を押すも扉を叩くも全く出てこない。そのため、合鍵を持っている彼女のマネージャーに電話して来てもらい、鍵を開けてもらうこととなった。
「そちらの方は?」
「私の彼氏です」
「!? そ、そうでしたか」
女性マネージャーは武藤を見るなり警戒したが、弥生の彼氏だというと警戒を若干ではあるが解いたようだ。
「汚なっ!!」
入るなり武藤が叫んだ。玄関にまでゴミ袋が散乱しているのである。
「先月掃除したばっかりなのに!!」
マネージャーが叫んだ。どうやら元々汚部屋の住人のようである。
「はるかー!! どこー!!」
足の踏み場もない廊下を進みながら、マネージャーははるかという人物を探していく。
「ここが防音室です」
そういってマネージャーが部屋の扉を開ける。
「はるか!!」
「はるちゃん!!」
扉を開けると、中には女性が一人倒れていた。マネージャーと弥生がすぐさま駆け寄り、女性を起こすと息はしているようで、ただ寝ているだけのようであった。
「はるかっ!! 起きなさい!! はるか!!」
「はるちゃん起きて!!」
「んっえっ? 弥生? マネちゃん?」
「もー心配させないでよ……」
「電話も出ずになにやってるんですか!!」
弥生とマネージャーは安堵の息を漏らす。だが同時にマネージャーはお説教を開始した。
「えっ? 電話? かかってこなかったよ?」
「またスマホほったらかしにして見失ったんでしょ」
彼女は何度かお部屋にスマホを落として見失ったことがある。
「違うよ!! ずっと手元に置いてたもん!!」
そういってベッドの上にあるスマホを手に取ると履歴を確認する。
「ほらっ」
スマホには確かにマネージャーと弥生からの着信がなかった。
「え? どういうこと? 私さっきつながったよ? ザーザー音がずっと鳴っててなにも聞こえなかったけど」
弥生の言葉にマネージャーもはるかも青い顔になり身体を震わせた。
「音がなってたのに着信の履歴すらないってどういうこと?」
マネージャーは思考の海に沈む。
「まさか着信拒否してないわよね?」
「するわけないでしょ!! 起きれないじゃん!!」
マネージャーに基本起こしてもらっているとバレる駄目発言である。
「これは一体……」
「たっくんなにかわかる?」
「え? 男!? 弥生誰よそれ!!」
「私の彼氏」
「えええええ!? か、彼氏!? 私より年下のくせに!!」
Vtuber万刀射火。本名、海野春華。20歳、彼氏なし。酒好きギャンブル好きの紛うことなきダメ人間であった。
「……一言でいうとやばいね」
「え?」
「これ……多分だけど今じゃなくて、元々小さい頃から不思議なこと起きてない?」
「え? なんで知ってんの?」
「これ霊っていうよりは……悪魔だね」
「「「ええええええええ!!」」」
武藤の一言に3人の絶叫が重なった。
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