第181話 無自覚たらし
「随分とあの子を気にかけてない?」
「私が知る限り武くんから求めたのは初めてじゃないかねえ」
「そこのところ詳しく聞きたいですわね」
武藤は知らぬ間に四面楚歌になっていた。
「えーと……」
「ん? 言いにくいことでもあるのかねえ?」
「……よ」
「ん?」
「みんなに指輪を作ってもらおうと思ってたんだよ」
「ゆび……!?」
その言葉に恋人たち全員が驚きの表情で固まった。
「俺は魔法は込めれるけど指輪は作れんし、デザイン力も皆無だ。あの子の指輪を見てこれならデザイン的にもいいし、魔力を込めて作って貰えればそれを魔法に置き換えれるしいいかなあって。もちろん手を出すってのは冗談だよ? あの子のノリがいいからからかっただけで……」
「ダーリン……あーし、なんか疲れちゃった。ちょっと休憩しない?」
「ん? ああ、ならどっか喫茶店でも――」
武藤は唐突な話題転換を訝しげに思いながら休める場所を思い浮かべる。
「あーし、あそこのお城がいいなあ」
だが次の瞬間美紀が提示したのはとんでもない場所であった。
「おし……あの、美紀さん? 僕たち高校生なんですけど?」
どうみても愛のあるホテルである。
「ダーリンがいけないんだよ!!」
「そうだねえ、今のは武くんがいけないねえ」
武藤が周りを見ると全員が頷いていた。
「なんで!?」
気づけば武藤は恋人たちにお城へと連行されていった。ちなみにお城は猪瀬の系列らしく、VIPなお部屋を女子会の名目で借りることとなった。もちろん入る際に武藤は姿を消してもらっている。
「ふう」
夕方になり、武藤は一息つく。武藤が心当たりがないままに唐突に12人が発情状態となった為、結局全員を気絶させるまで相手をしたのである。
全員気持ちよさそうに寝ているので、このまま泊まってもいい気もするがそうはいかないのである。
「弥生、起きて。今日配信するっていってなかった?」
武藤が優しく揺り動かすと、弥生は目をこすりながらもなんとか起き上がった。
「おはようたっくん。その……すごかった」
つい先日まで経験のなかった弥生にそう言われ、武藤は嬉しくなった。そのまま抱きしめ、あわや2回戦開始か? と思われたが、弥生はその誘惑をなんとか耐えた。
「だ、駄目だ!! これからしたら配信に間に合わなくなってしまう!!」
有名配信者としての矜持か、はたまたまだ肉欲に溺れていないのか、弥生は武藤の誘惑に耐えられる数少ない恋人であった。
その後、全員起こしてファミレスで2席を専有して夕食を摂り、弥生だけは帰宅し、残りは何故か武藤宅へとついてきた。
(お昼あれだけやったのにまさか……そんな訳ないよな)
武藤は嫌な予感がしつつもまさかそんな訳はないと高を括り、全員で一緒に弥生の配信を見ていた。
「弥生先輩めっちゃ強いね」
どうやら人狼系のゲームのようだったが、弥生はどちら側でも無双に近い状態であった。
「初手重なりKILLとか殺意高すぎるだろ」
普段の温厚な様子とは裏腹に、弥生は鬼になったときの殺意が非常に高かった。いや、割り切りが早いのだろう。やれると思ったら一瞬の躊躇もなく殺しまわり、平然と責任を他になすりつけるその姿にその場にいた恋人たちはドン引きであった。
「弥生先輩は怒らせないようにしよう」
何故か恋人たちの気持ちが一致団結していた。
「お風呂誰から入る?」
「あーしいっちばーん!!」
(!? 風呂!?)
武藤は嫌な予感が当たってしまったことに気づく。帰るのなら風呂に入る必要等ない。なら何故順番決めをしている? 決まっている。泊まる為だ。
(何故かみんなの着替えはこの家に常備されている。つまり……抜かりはないということか)
地球でも武藤の長い夜は変わらないのであった。
「おはようたっくん」
「おはよう武藤くん」
翌朝。昨日一緒にいられなかった瑠美と結愛、そして泊まれなかった弥生が朝一から武藤宅へとやってきた。
そして気がついたらリビングで3人とも朝から武藤に美味しくいただかれていた。何故リビングかといえば寝室は既に裸で寝ている子がいっぱいだからである。
「あーおはよう弥生先輩って言っても聞こえないか」
昼時になり漸く泊まったメンバーが起きてリビングへ降りると、そこでは弥生が後ろから突かれまくっていた。
「――!?」
声もなくビクビクっと痙攣して弥生はソファに倒れ込んだ。ちなみに瑠美と結愛は既に気絶して床に寝ている。
それからしばらくして漸く全員が起き、身支度を整えて真由が作ってくれた昼食を摂る。
「今日は武藤くんに頼みがあったのだ」
最近では朝陽達も武呼びするようになった為、恋人の中で武藤呼びをしてくるのは結愛だけとなった。まだたまに瑠美が武藤くんと呼ぶときもあるが、基本は武くんである。
「その……お祖父様にあって貰いたくて」
話を聞くと孫に初めての彼氏が出来たと聞いて、非常に関心があるとのこと。武藤としては嫌な予感しかしなかった。
(どう考えてもお前に孫はやらんってことだよなあ……)
今朝も散々体を好き放題したあげくに無視はできない。武藤は何故か他の恋人たちも一緒に優愛の祖父の元へと行くことになった。
「ここか」
電車を使って1時間程。武藤達は結愛の祖父の居る道場へとついた。
「結構おおきいね」
「あれ? ゆあっち以外に門下生いるんだっけ?」
「近所の子供達が何人か。普段はお祖父様が教えていますが、師範代は私だけです」
運動というかスポーツというか、そういう括りに入る塾のような感じなのだろうか。武藤はそんなことを思いながら道場の門をくぐった。
「孫がほしければ儂を倒してからにせいっ!!」
武藤は道場に入るなり、座っている老人にそう告げられた。
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