第141話 1花
皇達が恋人になったその日のお城も相変わらず大変であった。いたるところで女性の艶声が聞こえてくるのだ。勿論武藤のせいである。武藤から襲うことはないのだが、侍女からいい寄られればこの男はホイホイと食べてしまうのだ。
「お兄様。何故呼んだがわかるよね?」
笑顔に見えるが目が全く笑っていないリイズに呼び出された武藤は、執務室で床に正座させられていた。
「えーと何かな?」
「何かなじゃないーい!! 手を出してもいいとは言ったけど、1花の10人全員気絶して仕事がまわらないじゃないの!! 午前中だけで全員に手を出すって獣すぎるでしょ!!」
ちなみに1花とはリイズに仕える侍従の1軍、即ち側近中の側近のことである。決して裏切ることのない信頼のある者だけが付ける超エリートである。
「ディケとエウノミアに手を出さなかっただけ、まだ理性があったと思うべきなのかしら……ん?」
リイズのその言葉にディケとエウノミアの姉妹はそろって視線をリイズから逸らした。
「あなた達まさか……」
「その……」
「実は朝一でやってるから復帰までが早かっただけ」
「はあ!?」
そう。この2人は早朝一番早くに武藤と致している。それも2回づつ。今の武藤はメイド服にたいして守備力0なのである。
「姫様、がんばれ」
「がんばれじゃない!! このままだと私より先に侍従達が孕んじゃうでしょ!!」
「侍従なら問題ない」
「確かに順番は問題ないけど、このペースで盛られたら全員妊娠して仕事が立ち行かなくなるでしょ!!」
「2花に仕事を振るしかありませんね」
「うーん2花はねえ」
ちなみに2花はリイズ付きではない通常の侍従であり、お城全般のことを担当している者達である。単に勇者吉田に傷物にされなかった為、リイズの恩が売れなくて逆に信頼がない為に側近になれなかった者達でもある。そして問題なのが、1花よりも身分が高い子女が多いということだ。1花は一番上でも子爵令嬢なのに対し、2花は侯爵令嬢も存在する。その為、2花の侍従は1花の侍従達を面白く思っておらず、対立することもしばしばある程である。とはいっても喧嘩を売ってくるのは2花側であり、1花の侍従達はそもそも2花を相手にしていない。女王の側近である。そんなことに労力を割くほど暇ではないのだ。
「2花にも1花程の忠誠心があればねえ」
1花のリイズへの忠誠心は狂信レベルである。何をしてもリイズのことを優先する。武藤との肉体関係も女王の命令だから優先しているだけである。1回出されても「もっと……」等といって2回戦を要求したりするのも、見かけた瞬間に抱き着いて誘惑したりするのも、他の侍従が致していると即座に混ざってしまうのも、武藤からプレゼントされた下着をチラ見させて誘惑したりするのも命令だから仕方なしにである。きっと……。
「しばらく2花の一部をローテーションで1花の仕事に回しますか」
「そうね。1花が全員いなくても仕事が回るように引継ぎはしておいて」
「畏まりました」
2花は昼夜交代制だが100人以上いるので、一部が抜けても問題はない。1花も本来は昼夜交代制で8人が日中、2人が夜間なのだが、結局現在は夜間に全員武藤に抱かれて一緒に居る為、夜間勤務はなくなっている。何せリイズ本人も一緒に抱かれている為、あえて業務として起きている必要がないのだ。本来なら寝ないでも大丈夫なディケとエウノミアがいる為、夜間は誰も起きて居なくてもいいのだが、現在はこの2人も夜は気絶している。ずっと起きているのは武藤ただ一人なのである。
「えっと、その娘達には手を出しても?」
「言いわけあるかああああ!!」
リイズは叫びながら思わず机の上の書類をぶちまけた。
「2花の子はね。大体婚約者がいるの。わかる? 傷物にでもしようものならあっという間に責任取らされて賠償金払った挙句に結婚させられるわよ?」
「それって1花でも同じじゃ?」
「全然違うわ。1花の子達なら家の影響はほぼないのよ。あの子達を見捨ててるからね。何を言って来ようと突っぱねられるの。だけど2花の子は違うの。間違いなく家が出てくるわ。そして絶対無茶な要求をしてくる」
絶対的な強権を持てども貴族の派閥というものは存在する。表面上はリイズに逆らわなくとも、裏で足を引っ張って自身の権力を強めようとする者は少なからず存在するのだ。そういった者の縁者が後宮に入られると非常に面倒になる。普通なら派閥のバランスを考えて入れるのだが、幸いにも現在は傷物とされた1花の面々がいる。彼女達は元は色々な派閥の者である為、理屈の上では派閥間のバランスが非常にとれているのである。
色々いるとは言っても1花の面々は非常に結束が強く、派閥など通り越して仲間意識が非常に強い。そもそも家に見捨てられている以上、派閥なんてどうでもいいと全員考えている程である。しかも全員武藤のお手付きである。同じ男に同時に抱かれている為、武藤がくる前以上に結束が強くなっていた。何せ互いの痴態を見せ合った仲なのだ。もはや隠すことなどないレベルでお互いの痴態を見られている以上、結束が強くもなろう。
「だから2花の子には絶対手を出しちゃだめだからね!!」
「わかった」
「ふう、危なかったわ」
「確認してなかったら大惨事でしたね」
「どう転んでも地獄だった」
武藤の言葉に3人は安堵する。武藤はリイズ付きの侍女に手を出していいと言われていた為、あのまま行けば2花だろうが問答無用で武藤に食われていた可能性が高い(性的に)
何故なら武藤は自分からは手を出さないが、許可が出ている相手が自分からくる分には現在の武藤はウェルカムなのである。つまりメイド服を来たハニートラップを仕掛けられていたら間違いなく回避不可であった。何せ手を出してもいい相手と思っているのである。そんな中で餌を垂らされればどうなるか? 間違いなく今の武藤なら釣り糸を垂らした瞬間フィーッシュ!! の入れ食いである
しかも現在は嫌というポーズをとって誘ってくる侍女もいる。ちょっとでも紛らわしい動作をすれば、武藤なら即座に誘いだと判断して即食いだっただろう。地球のヤリチンも真っ青の所業である。
「一応言っておきますと1花の子はどこかしらに青い花の飾りをつけておりますので、それを見て確認してください」
そういえば確かに青い花の飾りがついていたなと武藤も侍女たちのことを思い浮かべる。そういう制服の一部だと思っていたが、リイズの側近特有のものらしい。どうやら青い花がリイズ固有の紋章らしく、それをつけることで側近ということを表しているそうだ。
「あれ? ディケはつけてるの?」
「どこについてると思います?」
そういってディケはにやりと笑い、胸元を強調するようなポーズをとる。
「ゴクリ」
唾を飲みこみながら武藤はフラフラとまるで誘蛾灯に誘い出されるようにディケへと近寄っていった。
「ゴクリじゃなあああい!! ディケ、あんた花つけてないでしょうが!! お兄様も簡単に釣られすぎよ!! 襲うならまず私でしょうが!!」
そういって興奮するリイズに武藤は直ぐに近寄って後ろから抱きしめる。
「え?」
そしてあっという間に服の中に手が入り込んで色々といじりだした。
「え!? あっだ、駄目っ」
一応リイズも形ばかりに抵抗はしようとするもののあっさりとその手は阻まれ、気が付けば執務室で情事に耽ることとなった。もちろん当たり前のようにディケとエウノミアも加わってきたことはいうまでもない。
今日も異世界のお城は平和だった。
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