第140話 新たな恋人

「ええっとこういう時はなんていうのでしたっけ? 勇者ちょろすぎワロタでしたか?」


「勇者ちょろすぎ草生えるだよお姉ちゃん」


「いや、確かに手を出せといったし、手を出させろと指示はしたけどさ。いくらなんでもその日のうちに全員お手付きにするとは思ってなかったんだけど? お兄様?」


「……」


 ディケ達姉妹に煽られ、手を出せと言ったリイズ本人にすら攻められ武藤は黙り込む。文句を言われる筋合いは全くないのだが、確かに後から考えると自身もどうかしているとしか思えないレベルで女性に手をだしていたと反省はしていた。

 

「これ他国のハニトラにも簡単に引っかかるんじゃないかって不安になるんだけど」


「いや、さすがにこの国の侍従に手を出したのはリイズという存在ありきだから。リイズがいわなきゃ手なんて出してなかったよ」


 そう言い切る武藤に周りの恋人達もリイズ達もじとっとした目を武藤へとむける。

 

「……それで10人を2周したと? 1周ではなく?」


「……その件につきましては当方に記憶がなく、早急に調査を進めて「調査も何もあるかあ!! 周りに当事者全員いるでしょ!!」」 


 現在、夕食後の後宮であり、昨日の欲望の部屋である。そして巨大ベッドのまわりというか壁際にはリイズの侍女たちが勢ぞろいしている。もちろん今日武藤が手を出した面々である。

 

「2回以上出された人」


 リイズがそういうと侍女たち全員が手をあげた。

 

「で? 調査がなんだって?」


「……し」


「し?」


「仕方なかったんやあああ!! メイド服が悪い!! 侍女たちが可愛いのが悪いんやあああ!!」


 そういって武藤はベッドの上で崩れ落ちた。可愛いといわれ侍女たちの顔は赤い。以前の糞勇者と違い、乱暴のようでいて気を使われ、尚且つ大事に女性として扱われたのだ。荒々しくも自身を獣のように求められて侍女たちは初めて女性としての幸せを感じたのである。

 

「……まあいいわ。この子達は私が認めたくらいいい子達だもの。手を出すのは全く問題ないわ。ただ出来れば私を先に孕ませて欲しいんだけど?」


 そういってリイズは上目遣いに武藤を見つめる。これは香苗の入れ知恵である。こうすれば武藤が興奮すると。

 

「きゃっ!!」


 得てしてリイズは武藤に襲い掛かられ、結局そのまま恋人達は昨日の繰り返しのように全員襲われた。ただ違うのは1周後、侍従達も巻き込まれて襲われたことだった。

 

 

 

 

「結局最後まではしてくれませんでしたわ」


 翌日。侍従まで含めて散々武藤に蹂躙された一同だったが、皇達3人だけは最後までされなかった。

 

「武君の中では地球人というくくりの中だと恋人という肩書が大事なんだろうねえ」


「間瀬さん何とかなりませんか?」


「まあ、なんとかしてみようかねえ」


「さすがですわ!!」


「「おねがいします!!」


 皇達3人は現状を打破する為、香苗へと縋るのだった。

 

 

 

 


「というわけで、そろそろ皇達を正式に恋人にしたらどうかと思うのだが?」


 城での朝食も終わり、拠点へと戻った恋人達一向。そこで武藤が城へと戻る前に香苗が武藤を呼び止めた。


「いや、思うのだがといわれても……」


「確かにこの3人は未だにまごうことなき処女だ。だが、ただ入れられてないだけだよ? この子達の首から下で武君の舌と指が触れていないところがあるのかい? お尻すら熱心に攻めていたようだが?」


「……」


 その言葉に武藤は視線をそらした。

 

「いくら最終ラインを守っているとはいえ、精液の味を覚えさせる程仕込んだ相手をまさか恋人ですらないなんて言わないよねえ?」


「……」


「セックスもしていないのだからセフレでもない。なら単なるおもちゃじゃないか」


「……確かにそうだな。すまなかった。言うのが遅くなったが、3人共彼女になって欲しい」


 本当は武藤の方も3人に惹かれているのはわかっていたのである。無論最後の一線は超えていないまでもそれ以外のことはほぼやっている為、ぶっちゃけ手を出しているといっても過言ではない。そんな訳なので責任はとるつもりだった。ただ恋人にするタイミングというか切っ掛けがなかっただけである。

 

「やりましたわ!!」


「これで漸く恋人だね!!」


「これで最後までしてくれるのね!!」


 3人共ハイタッチをして喜んだ。漸く武藤を陥落させたのである。

 

「だけど最後まではしない。弥生が先なのは譲れん」


 そこだけは武藤の譲れない一線だった。

 

「地球に帰れる見当はついてるのかい?」


「いや、まだわからん」


「いつまでも待たせるのはさすがに皇達に悪いから、とりあえず1か月くらいを目安に考えたらどうだい?」


「……わかった。1か月たっても帰れる目途が立たないようなら考える」


「1か月も先ですの!?」


「まあ、待ちなさい皇。要は考え方だよ」


「私のことは綺羅里とお呼びくださいまし」


「なら私のことは香苗と呼んでくれ」


「わかりましたわ香苗さん。それで考え方とはどういうことですの?」


「1か月経つ前に手を出させるように誘惑するんだ」


「「「!?」」」


「武君が最後までやったら君達の勝ち。そうでなければ武君の勝ちっていうゲームと思えばいいのさ」


「それは面白そうですわね」


「がんばっちゃうよ!!」


「絶対手を出させてやる!!」


「……お手柔らかにお願いします」


 今ですらかなり頑張って耐えている武藤である。後1か月も誘惑に耐える自信は全然なかった。

 

 

「ちなみに香苗さんのテクニックは武藤、いえ武さんから仕込まれたものですの?」


「いや、私の技術は百合直伝さ」


「百合さん!?」


「ああ、百合は武君を落とすために娼婦のお姉さんから教わったらしい」


「娼婦!? さすがにプロのテクニックはすごいのですわね」


「そうよ。どんな相手でも1分あればイカせられるって言ってたわ」


「すごっ!? 実際どうだったんですの?」


「武にやったらもう2度とするなって怒られた」


「怒ってはいないけどやめて欲しいとは言ったな。さすがに無理矢理、前立腺を刺激してイカせる為にお尻に指を突っ込むのは勘弁して欲しい」


「おしっ!? そ、それは武さんの気持ちもわかりますわ」


「あれ? でも綺羅里ちゃんお尻舐められてイってなかったっけ?」


「!? そ、そんな訳ありませんわ!!」


「隠さなくてもいいよ。ここにいる全員通っている道だからねえ」


「そうなんですの!?」


 恋人達は弥生を除いて全員後ろどころか全身開発済みである。それは一般女性なら生涯をかけても到達できないような快楽の極限に達するレベルであった。しかし、普通の男性ではそんな快感を与えることはできない。それを成す為には一人一人、まるで超絶難易度のパズルを解くかのような複雑な手順が必要なのである。それはされる女性自身すらも理解できないことであり、それができるのはこの世で武藤ただ一人である。

 

 そして武藤はそんな複雑な手順をせずとも一瞬でゴールに到達する裏技である魔法を使うことができるのだ。それはつまり、どんな相手でも極限の快楽を与えることができるということでもある。そんな武藤に抱かれたらどうなるか? 武藤に1度でも抱かれた女は武藤から離れられなくなるということである。

 

 武藤は世の女性を食い物にしている男達が全てをなげうってでも欲しがる究極の能力を持っていた。それを武藤は惜しみなく恋人達に使っているのである。まだ十代の女性がそんな技を日々日常で惜しみなく発揮されれば、武藤に依存してしまうのも無理はないことである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る