第124話 問題
「おはよう。みんなよく寝られたかな?」
「寝られるわけありませんわ!!」
「寝られるわけないでしょ!!」
「寝られるか!!」
翌朝。一睡もしていない武藤がリビングに行くと、皇一派と陰キャグループが集まっていた。そして何故か武藤は非難轟々の憂き目になっていた。
「どしたん? 枕がなかったから?」
「枕なんか関係ねえよ!!」
「おまえさあ……おまえさあ」
吉田は興奮し、光瀬に至ってはもう何を言っているのかわからなかった。
「吉田君落ち着いて!!」
「光瀬君も帰ってきて!!」
吉田と光瀬を岩重と佐藤がフォローする。何かいい雰囲気だと武藤は感づいた。
「はあ、はあ、ちょっと落ち着いて冷静になろう。まず、ここはお前が岩山を掘って作ったいわば洞窟なわけだ」
「?? そうだな」
「そしてお前はアリの巣のように部屋は作ったが……ドアは作っていない」
「?? そうだな」
「つまりな……声がものすごく反響するんだ」
「?? つまり?」
「昨日の夜からずっとお前達の声が響き渡ってんだよ!! 洞窟中に!!」
「?? そうか」
ちなみにここには武藤しかいない。恋人達は全員未だに全裸でお休み中である。
「そうか……じゃありませんわ!! な、なんですの一晩中終わることなく……獣ですの!!」
「ずっと聞いてたのか?」
「聞こえてきたんですの!! 私達はお隣の部屋なんですよ!! アリーナ席でしたわ!!」
「まさか山本さんどころか間瀬さんまで、あんなに乱れるとは思わなかったね」
「朝まで声がやまない何て、さすがに想像してなかった」
つい先ほどまでその声が響き渡っていたのである。最後のクリスがダウンするまで交代で延々とループしていた為、結局夜通し夜の宴は続いていたのだ。
「ってことで少なくとも今日の午前中は彼女達は起き上がれないと思うから今日は午後から薪拾いにしよう」
「まさかこれが毎日じゃありませんわよね?」
「……」
「それだと毎日午後からじゃありませんか!! 昨日早朝と言ってたのはなんだったんですの!!」
武藤としてもさすがに毎日は……なんて思っていた。昨晩も本当は百合と香苗の2人だけの予定だったのだ。とはいっても同じ場所で全員寝ているのである。気が付けばトロンとした目のクリス達が傍におり、気が付けば朝まで大乱交であった。
基本的に武藤は恋人のお願いを断れないのだ。それでいて自分を好いてくれている超絶美少女が抱いてとこちらを上目づかいで見つめてくるのである。やりたい盛りの男子高生がそんな誘惑に逆らえるはずもない。しかも全員魔力が欲しいということで中に求めてくるのである。昨日武藤は5人×2で10回ほどやっている。これを毎日なんて普通の人間なら無理だが、武藤なら可能なのだ。だが可能ではあるが、疲れないわけではない。
「間瀬さんが5人でも全然足りないっていってたのがよくわかったね」
「男の人ってみんなそうなの?」
「化け物と一緒にすんな!!」
「いくら女神が相手だったとしてもさすがに無理。AV男優でも無理だろ」
松井と加賀美の言葉に吉田と光瀬が反論する。
「やはり武藤君が特殊なのですわね。英雄色を好むと言いますし……やはり私達も加わった方が?」
「これで3人も増えたら武藤君さすがに死んじゃわない?」
「その辺りが女の私達じゃわかんないよねえ」
皇達の言葉に吉田も光瀬も内心で「死ぬだろ」と思っていたが、もう一方で
「まさか陰キャ仲間と思っていた武藤が、陽キャどもよりもリア充してるとはな」
「童貞仲間だと思ってたのに、あんな声を聞かされ続ければ否が応でも納得させれるな」
武藤が女神たちと恋人という話は聞いていたが、信じ切れていない部分もあった。しかし、昨晩のアレを聞いてからは死ぬほど納得させられたのである。
「これからは武藤さんと呼んだ方がいいか?」
「いや、武藤様だろ」
「どあほう」
男として完敗した童貞2人の言葉を武藤は一刀両断した。もちろん3人とも冗談だとわかった上での発言である。
「ああ、みんな集まっているんだねえ。おはよう」
そうこうしていると香苗が起きてきた。他のメンバーはまだお休み中のようである。
「お、おはようですわ」
皇達は全員、若干顔を赤らめていた。
「?? ああ、昨日の声を聞いていたのかい? はずかしいねえ」
そういいつつも香苗は全く恥ずかしいとは思っていないような態度であった。
「武君、お風呂に入りたいのだが、大丈夫かい?」
「ああ、常に浄化する魔石と熱を一定に上げ続ける魔石を置いてあるからいつでも入れるぞ」
「それはありがたい。贅沢ついでに一つ聞いてもいいかな?」
「なに?」
「替えの服と下着が欲しいのだが……」
「さすがに武藤君でも女性ものの服はまだしも下着なんて持ってるわけ――」
「……」
「ありますの!?」
香苗達の言葉に武藤の視線が逸れたのを見て、皇が驚いた。
「それはさすがに私でもドン引きなんだけど」
「恋人に着て欲しい服とか持っててなにが悪いんだ!! だったらお前はずっと同じの着続けてろ!!」
「!? ご、ごめんなさい!! 全然おかしくないです!!」
武藤の反論にさすがの加賀美も即座に謝罪した。ただ普通に女物の服を持っていたらさすがにアレだが、武藤は恋人達に着せる為の服なのだ。なんらおかしいところはない。
「ああ、あの時に買ったやつか」
香苗も思い出した。以前、武藤が恋人達と買い物に行った時に下着やら服やらを大量に購入した時がある。さすがにそんなものを全部持って帰ると親に何を言われるかわからない為、武藤が持っていて欲しいと言われたのだ。
「そういえば美紀達の分も一緒に買ったし、なんならパジャマとかもお揃いで買った気がするねえ」
「全部入ってるよ」
「美紀達には悪いが、後でまた買いに行くとしてその分を使わせて貰うとしようかねえ」
ちなみにパジャマやルームウェアは予備としてそれぞれ3着程余計に買っているので、ここにいる全員分はあることになる。
「サイズは大きい分には問題ないからねえ。真由さんのやつは……加賀美が着ればいいし」
明らかに真由のはサイズが小さいのである。ただ胸がパツパツで着れない可能性も考慮して大き目の奴も買ってある。購入時に真由がいなかった為、パジャマは試着していないのでわからなかったのだ。
「Tシャツなんかもあったな」
そういって武藤は1枚Tシャツを取り出した。
「なんだその陽キャが着そうなTシャツ」
「胸のとこに字だけとかたまに見かけるけど、それおしゃれなのか?」
「まあ、俺はオシャレなんかそもそもわからん。ちなみにこれただのTシャツだぞ? わかるよな?」
「そりゃみりゃわかるよ」
「1枚2万するんだぞこれ」
「「はあ!?」」
とあるブランドのTシャツである。ただメーカーの名前が書いてあるだけでアホのように高いのだ。
「こんな布切れ1枚が!?」
「赤スパ2回分!?」
「赤スパてなんだよ」
武藤は恋人に配信者はいるが、動画配信については詳しくなかった。
「あ、男は俺の着替え用のTシャツがいくつかあるから、それやるよ。1枚500円だけど」
「なんで自分の分は500円なんだよ!!」
「男が着飾ってどうすんだよ。着れればいいだろ」
一番金を持っている武藤が一番値段にこだわっていなかった。普通とは逆の意味で。他のものには死ぬほどこだわり、普通の意味で値段にこだわっていないのに何故か普段着るものについては全くこだわらない男なのだ。
「なあ」
「なんだ?」
「胸の部分にただ【拉麺】て書かれてるTシャツとかどこに売ってんだよ!?」
「こっちのなんて【ド根性】だぞ。せめてカエルの絵くらいかけよ!!」
武藤が取り出したTシャツは吉田と光瀬から非難轟々であった。
「売れないから安売りしてたんだろうな。俺的にはいいと思うんだけど……ド根性とか即死攻撃くらってもHP1で耐えそうじゃね?」
「わかるけど!! その気持ちはすげえよくわかるけども!!」
ゲーマーである吉田は武藤に渋々と同意していた。
「でも拉麺とか書いたこのTシャツの販売にゴーサインだしたやつは何をもって売れると思ったんだろうなあ」
偶にある謎Tシャツシリーズである。大体そういうやつは意味の分からない言葉が多い。
「2万もするTシャツ買えるならせめてもう少しまともなやつを買えよ……」
「贅沢言ってんじゃねえよ。嫌なら着るな」
「いや、着るけどもさ」
「女子のTシャツに比べて納得のいかなさったらないなあと」
「納得しろ」
「……お前男に対して厳しすぎん?」
「男に優しくする意味あんのか?」
「……ないな」
陰キャグループ男子は今日もいつも通りだった。
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すみません。予約時間が1日ずれてました。
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