第103話 新人?2

「でもさあ、一つ問題があって」


「なに?」


「5股魔法使いさんって実際は8股魔法使いさんだったの」


「……え?」


「恋人8人もいたの」


「「「「えええええええ!!」」」」


「は、8股ってこと?」


「そう」


「それ刺されないの?」


「恋人達全員めっちゃ仲いいの」


「なんで!?」


「なんか聞いたところによると、魔法使いさんめっちゃお金持ちらしくて、全員責任取るって……」


「「「「はあ!?」」」」


「しかも親のお金とかじゃなくて自分で稼いでるんだって」


「マジか……超優良物件じゃん」


「でもさ、実際あんないい男、女が放っておくわけないって思ったよ。1番じゃなくてもいいから愛されたいって思っちゃうくらいにはいい男だもん」


「そりゃ実際助けられたマーちゃんからすればそうだろうね。私だって死のうとしたところを颯爽と助けられたらころっと落ちちゃうわ」


「そんな漫画の主人公みたいな人実在するんだね」


「イケメンで、芸能事務所とコネがあって、ゲームが上手くて、お金持ちで、めちゃくちゃ優しい? 天は魔法使いさんに何物与えてんの?」


「それで……その……こういう放送で言っちゃいけないのかもしれないけど……」


「なになに? こうなったらYou言っちゃいなYO!!」


「夜の方もすごいらしいの」


「……え?」


「なんで複数の恋人で争わないのかと思ったら、8人いても太刀打ちできないらしくて……1人なんて到底体が持たないから無理なんだって」


「……」


 さすがのVtuber達も黙った。4人中、3人は男に免疫がないので何も言えず、最後の1人も旦那は所謂、普通とよべる男性の為、一晩で何度もなんていうマネはされたことがないのだ。


「その……私、よくわからないんだけど、男の人ってそういうものなの?」


「知るかああああ!! こちとら空想上でしか男なんぞしらんわ!!」


「ちょっとあかりちゃん!! ぶっちゃけすぎ!!」


「お前らもそうだろうが!!」


「こらっ!! 勝手にばらすな!!」


「女子高で何が悪いんでござるか!! 殿方なんて全くいなかったでござるよ!!」


「はいはい、みんなおちついてね」


 既婚の冬空茜以外のメンバーが暴走した。それに伴い、暴走メンバーのコメント欄ではガチ恋勢が大歓喜でお祭り状態だった。特にユニコーンと呼ばれる処女性を信仰、いや狂信する者達の喜びはすごく、課金コメントが飛び交いまくり、もはや混乱といってもいい状態になっていた。



「はあ、はあ、ごめん」


「まあ、あかりちゃんが暴走する気持ちもわかるけど」


 マーチと同じ17歳として配信しているが、実際は男っけ0のままアラサーまで来ている生粋の未通女おぼこである。既に行き遅れ感が漂いまくっている状態で、男のことを聞かれたら暴走しても無理はない。

 

「でも8人も面倒見られるのなら1人2人増えても平気じゃない?」


「行き遅れたら私も面倒見てもらえないかなあ」


「あかりちゃん……」


「だって!! 浮気さえしなきゃ好き勝手させてもらえそうじゃない?」


「たぶんさせて貰えると思う。男は彼だけを見てれば多分後は配信者してしようが、遊び呆けてようが、学校に通ってようが許してくれそう」


「なにそれ天国?」


「せ、拙者は愛してもらえるなら8番目でも10番目でも全然……」


「こらござる!! 抜け駆けすんな!!」


「ござるっていうな!! だって、8人いても全然問題ないんだよ? 8人全員ものすごく愛されてるに決まってるでござる!! そうじゃなきゃ絶対ギスギスしてるところがあるはずでござる!!」


「見た感じ全然そういうところは見えなかったなあ。私の方が愛されてるっ!! とかそういうのはなくて、運命共同体というか、戦友というか。あっ今の私達みたいな感じだった」


「なにそれめっちゃ艦長の理想の環境なんだけど」


「拙者の理想郷でござる」


「私達全員でその人のところに行ったらずっと今のままみんなで居られるってこと?」


「「「「!?」」」」


「……8人もいるなら4人くらい増えても問題ないと思わない?」


「こらあ!! 問題ありまくりでしょ!!」


 宇宙未来の暴言にさすがに冬空茜が突っ込みを入れる。


「全然問題ないでござるな」


「このちゃん!?」


 常識枠だと思っていた忍者、まさかの裏切りである。汚い。さすが忍者汚い。

 

「同じ人に嫁ぐとなれば、みんな子供出来たらみんなの子供を一緒に育てることになるんじゃない? 私、このちゃんとマーちゃんの子供を自分の子供と一緒に育てるの夢だったんだよねえ」


「「!?」」


「な、ななななんで拙者の子供でござるか!!」


「だってこのちゃんとマーちゃんの子供なら絶対かわいいじゃん。絶対私をママって言わせるの」


「確かに2人の子供なら絶対可愛いよね。私もママって言わせたい」


「あかりちゃんやっぱわかってるね。でもママは私よ」


「あかりママと風香ママでいいんじゃない?」


 気が付けば4人とも嫁いでさらに子供を産んだ後にまで妄想が広がっていた。

 

「っていう冗談はここまでにして、話を戻そうね」


 配信ではわからないが、実際演者たちはオフコラボ、即ち同じスタジオにいる。にこやかに笑いながら目が全く笑っていない冬空茜の顔を見て、残りのメンバーは額から汗が止まらなかった。

 

「で、マーちゃんの今後の活動方針は?」


「ほぼ今まで通りかな。ただ色々と最初っからになるし、事務所は猪瀬だけどVTから機材借りたり、スタジオ借りたりしながら配信することになると思う」


「出てった意味あるのかそれ?」


「そう思えるようにしてくれたのも全部魔法使いさんのお陰だよ。彼が居なかったら今頃私この世に居なかっただろうし。こんな風にみんなで笑っていられなかったと思う」


「確かにね。マーちゃんだけを犠牲にして私等だけ続けるってのはさすがに精神持たないわ」


「拙者多分寝込むと思うでござる」


「私は気にしすぎて引退してたかも」


「風香はやさしすぎるから確かにそういうのめっちゃ気にするもんね」


「そうそう。風ちゃんもこのちゃんも他人のことを自分のことみたいに思っちゃうくらい感受性が高いよね。私のペットの猫が死んだときなんて二人の方が先に号泣してたし。なんでお前らが泣くんだよって」


「わあああ!! 言わないでよ!!」


「いっちゃ駄目でござる!! クールビューティーなくのいちのイメージが!!」


「お前にクールビューティーなんてイメージはデビューから一度もないだろうが!!」


「ひどいでござる!!」


「はいっということで、鷹濱マーチ改め鷹原マーチを以前と変わらず、今後もよろしくお願いしますということですね」


「「茜ちゃんぶったぎって締めにはいらないで!!」」 


 こうして小鳥遊弥生のVtuber生活はほぼ今まで通りに戻ることとなった。



そして配信終了後。


「で、マーちゃんいつ紹介してくれるの?」


「え?」


「私達の旦那様ですよ」


「?? !? ま、まさか……」


「あんたたち本気で言ってたの!?」


 宇宙未来と緑木葉の言葉に弥生と冬空茜は驚愕した。さすがにあれは番組を盛り上げる為だけの発言と思っていたのだ。


「もちろん本気と書いてマジだよ。そんな超優良物件逃す方がおかしいでしょ!!」


「配信者やめることになってもみんなと一緒にいたいもん」


「えーと、年齢的にさすがに無理かなあって思うかなあ」


「え? 魔法使いさん何歳なの?」


「あかりさんと一回りは違うかな」


「はあっ!? ってことは……39!? あんたそんなおじさんに!?」


 宇宙未来は17歳で売っているが実際は27歳である。


「逆よ逆。1年だから多分まだ15歳ね」


「15!? 未成年!?」


「マジでござるか!?」


 思わず営業用のござる言葉が出てしまうほどに緑木葉も焦っていた。


「そっか。マーちゃん実年齢も17だったもんね」


 ただ1人、既婚の冬空茜だけは冷静であった。


「じ、19は大丈夫でござるか!?」


「に、21は!?」


 緑木葉(19)と風花風香(21)は武藤のストライクゾーンに入っているかどうかが気になるようだ。


「こらあ!! お前ら裏切んな!!」


 ただ一人、明らかに大きくストライクゾーンを外れていると思っている宇宙未来だけが非常に焦っていた。


 弥生は武藤と出会って日が浅い為、武藤の魔法のこと等は何一つ知らない。故に年齢なんてどうにでもなる・・・・・・・・・・・・ということを知らなかった。

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