第94話 チャリティーカップ

「武藤昨日の放送みたか!? ついに謎の1位が表舞台に出てきたぞ!!」


「それより俺のマーチちゃんと絡みやがって……絶ってえゆるさねえ!!」


 教室にくると大興奮している友人達2人がいた。

 

「なんのことかわからんけど興奮するなよ」


「これが興奮せずにいられるか!! ついに謎の世界1位の実力が見られるんだぞ!!」


「トップVtuber5人のチームだったのがいきなりどこの誰ともしらない男が混じってるんだぞ!!」 


 興奮の方向性は違えども二人が興奮しているのは間違いないなさそうである。

 

 武藤はそんな2人を適当にあしらいつつ、本番の大会に思いをはせていた。

 

 

「何故……」


 そして本番の土曜日。参加者が多すぎる為、大会は朝から開始されるのだが、何故か武藤宅には恋人達がそろって押し寄せていた。

 

「そりゃあダーリン今日休みっていってたし、恋人ならくるに決まってるじゃん」


「今日はゲーム大会があって忙しいっていったのに……」


「始まるまで時間あるでしょ?」


「そりゃ朝も7時からくれば時間あるけどさあ」

 

 大会は10時からである。武藤の第1試合は12時過ぎる為、お昼までは時間が空く。

 

「ってことは1人1時間は頑張れるわけじゃん」


 何を頑張るって勿論ナニである。

 

 

 


「ふう」


 正午になり、武藤は寝室を出る。寝室は5人の美少女が色々な汁にまみれて全員気絶中である。最近恋人全員が武藤への欲求が凄まじく、平日もほぼ毎日誰かしらと致している状態である。普通の人間なら腎虚で死んでいそうな過酷なローテーションだが、武藤は平然としていた。

 ちなみにだが最初はリビングでいきなり美紀に襲われた為、リビングで大乱交だったのだが、途中でクリス達3人が来てしまった。急いで服を着た真由が対応したのだが、クリスは直ぐにかけだしてリビングに入ってしまった為、その現場を目撃してしまったのだ。それを追いかけてきた斎藤姉妹も目撃してしまい、顔を真っ赤にして固まってしまった。そう、クラスメイトである百合が武藤と致しているところを見てしまったのだ。しかもがっつりとつながっているところである。

 3人とも手は顔にあるが目の部分はがら空き、所謂ガン見であった。

 

 その後、色々あった……色々。

 

 

 


 

 武藤は父の書斎にゲーム機とディスプレイを運びそこでゲームをすることにした。さすがにリビングではできないとの判断である。

 


「おはようございまーす。今日はがんばりましょう!!」


 通話アプリをつけると鷹濱マーチの元気な声が聞こえてきた。既に全員そろっているようである。

 

「魔法使いさん今日は頼みますね」


「がんばります」


 武藤は無難な返事をしておく。

 

「もっと気合いれてくださいよー」


「俺が全勝してやる!! とか言い切っちゃってくださいよ」


 撮れ高を気にしてか、Vtuber達が煽ってくる。全勝も何も武藤は未だかつてこのゲームで1度も負けたことがない。Vtuber達は世界1位ということは知っていても無敗ということまでは知らないようだ。

 

「あーじゃあ、みなさんが負けても俺が全部勝つから皆さんは緊張しないで楽しんでプレイしてください」


「「「おおー言い切った!?」」」


「やばいちょっとかっこいいかも」


「これは惚れる」


「ちょっと!? みんなガチ恋勢が荒れるからそういうことはいっちゃだめでしょ?」


 案の定惚れる要素を少しでも出したところのコメントは荒れていた。


「ゆにこおおおおおおん!!」


「ちょとおおおおお!! サイコフレーム詰んだあいつ呼ばないでよ!! 魔法使いさんが一番駄目なこといってるじゃん!! あそこ怖いんだから!! 配信できなくなっちゃうから!!」


「えっと私はそのネタわからないんですが」


「「右に同じ」」


 武藤のネタに反応できたのはマーチ1人だけだった。


「えーとですね。版権的にちょっとまずいというか放送できなくなっちゃうというか」


「「「ああ、了解です」」」


 それだけで残りのVtuber達には話が通じた。長年配信者をやっているのでその辺りの機微にはたけているのである。


「本当に魔法使いさん勘弁してくださいよ?」


「今は反省している」


「絶対してないやつじゃないですか!?」


 そんなこんなで試合が始まる時間になった。


「一応この大会プレイ中のアドバイスは有りなので、魔法使いさん、何かあったらアドバイスお願いします」


「それじゃわかりやすいのを3つだけ先に言っておくと、ラッシュといったらラッシュを警戒してください」


 ラッシュとはゲージを使って高速で前に移動するシステムのことである。

 

「上といったら対空警戒してください。投げといったら投げを警戒してください。基本この3つを意識して聞いてください」


「はーいわかりました」


 このチーム。鷹濱マーチ以外は初心者であり、マーチだけは中級者くらいのレベルである。この大会は全員プロなんていうチームすらあるくらい上の方はレベルが高い。どう考えても武藤1人のチームになることが目に見えていた。

 

 

 そして試合本番。案の定3人の初心者はあっという間に負ける。

 

「マーちゃんがんばって!!」


 みんなの声援と武藤のアドバイスを受け鷹濱マーチが2人抜きをした。それなりに強い相手だったが、マーチ独特の読みの鋭さで勝った感じだ。1試合先取だと後で挽回等ができない為、緊張で動けなかったりすると上級者でも負けることが多くなるのだ。

 

(すごい、魔法使いさんが言った通りにくる)


 武藤がラッシュと言ったらラッシュが来て、上といったら飛んでくる。まさに予知能力並の読みである。自身の対戦でもないのに完璧に読み切ったアドバイスをすることにより、武藤のチート疑惑は既に誰も頭からなくなっていた。

 

 しかし、いくらアドバイスが正確でも細かいアドバイスを咄嗟にして操作が間に合うはずがない。攻撃を食らってしまえばアドバイスも何もないのだ。結局、マーチは中堅相手に負けてしまった。

 

「ごめんなさい」

 

「どんまいどんまい」


「後は魔法使いさんが何とかしてくれるよ」


 そして満を持して武藤の出番である。噂の世界1位の登場に配信を見ている者たちも騒ぎ出した。

 

 そして武藤は……全てを圧倒した。

 

(なんだこれっ!? 最強難易度のCPUより酷いぞ!!)


 対戦相手は困惑した。なにもできない・・・・・・・のである。 

 

(動くと殴られる。飛んでも落とされるし、飛び道具も反応してテレポートされて投げられる。どうしろっていうんだ!?)


 そのあまりの試合っぷりに味方すら黙ってドン引きであった。結局残り3人全員から全てパーフェクトという頭のおかしい結果を残して武藤のチームは勝ち上がった。

 

「なんだろう。味方なのにこういっちゃなんだけど相手がかわいそうになってきた」


「このゲームってこういうゲームだっけ??」


「これはひどい」


 味方からも散々ないわれ様であった。

 

「これが……世界1位」


 その中で唯一鷹濱マーチだけが嬉しそうな声を上げていた。

 

(これが頂点。極めると人間てこんなことができるの!?)


 武藤の人知を超えた読みにマーチは戦慄していた。これが人に可能な動きなのかと。ちなみに武藤は魔法も何も使っていない。純粋に自分の能力のみで戦っている。

 

 ドン引きする3人と感激する1人を引き連れ武藤は順調に勝ち進んでいった。そして無敗のままグランドファイナルまできてしまった。

 

「えー誰がこの結果を予想したでしょう。まさかのVtuberチームがグランドファイナル進出です」


 実況が呆れたような声を出す。


「いやあ、世界1位は伊達じゃないですね。っていうかこいつ1人いればいいじゃんって感じになってますね」


 解説に呼ばれているプロも呆れている。何せほぼ武藤1人で全てなぎ倒してきているのだ。これには武藤のチームメイトのVtuber達も混乱していた。ある程度勝てば登録者数が増える結果につながるかもしれないと、プロではないが有名な人を呼んでみたもののまさか試合前に言っていた全部倒すを本当にやられるとは思ってもみなかったのだ。

 

(これはまずった。まさか勝ち残るとは……)


 鷹濱マーチは焦っていた。これがプロのいるチームならいい。プロはやっぱり強いんだなあと視聴者も参加者も納得できる。だが、世界1位とはいえたった1人でアマがプロ含め全員打ち倒すのはさすがにやりすぎだ。これではチームメイトが完全な寄生でしかない。生配信の為、まさかわざと負けてくれともいえずここまで来てしまった。これで万が一優勝でもしようものなら色々なところに波紋を呼んでしまう。Vtuber達はどこか大会とは別の意味で緊張した面持ちでいた。

 

 そして案の定、グランドファイナルも武藤1人の蹂躙劇で終わってしまった。一応最後の大将戦だけは初めて互いに1Rを取り合う接戦となった為、大いに盛り上がったが、最後の最後でやはり武藤が勝ち、結局深夜まで及んだ大会は、チーム仮想現実が全勝優勝を決めたのだった。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る