第63話 とある昼休み
「どしたん真由っち? なんか機嫌よさげじゃね?」
翌日の昼。昼食を一緒にとっている美紀は真由が時折にやけていることにきがついた。
「実は……私もご主人様の恋人に……」
「マ!? やったじゃん!!」
「おめでとう真由。これでずっと一緒だね」
「美紀、洋子……ありがと」
同じ男に懸想したのにも関わらず、一緒に喜んでくれる親友二人に真由は一生この二人は大事にしようと心に誓う。
「でも恋人になっちゃったらバイトはどうなるの?」
「バイトのが先だったからそのまま続けてもらって問題ないって。そこはきっちりするみたい」
「手を出しておいてきっちりってねえ。で、ダーリンどうだった?」
「……すごかった。弟のと全然違った。何あれ? 男の人ってみんなあんな大きくなるの?」
「あー、いうてあーしら他の男の見たことないからなあ」
「私だって見たことないよ。でも十分満足してるんだから問題なくね?」
「確かに。まあカナちゃん曰く普通じゃないらしいけど」
「それで真由、何回やった?」
「最初は2回やって、その後百合ちゃんが来て一緒に2回……」
「そんなに!?」
「って百合ちゃんずるい!! 私も行けばよかった!!」
「昨日は私ら二人とも仕事あったしねえ」
美紀はモデルの仕事があり、洋子はマネージャーとしてそれについていっている。実際のマネージングは本職のマネージャーがいるが、暇なときは現場に洋子もついていっているのだ。
「で、どうやってやったの? 真由っちから迫ったの?」
「弟が朝作った作り置きを夕食に食べてるっていったら、旦那様が夕食をもっと多めに作ってまかないとして持って帰っていいっていってくれて、その後弟が一人で夕食とってるなら家に呼んで一緒に食べようって……」
「あー旦那様そういうとこ気が回るから」
「それで、もう好きすぎて感情が高ぶっちゃって、気が付いたら抱きしめてて……」
「あーそれはわかる。あーしもそうだったもん」
女性は下心に敏感である。だから武藤が全く下心なく優しくしてくれているのがわかるのだ。
「で、百合ちゃんからOK貰ってたからそれを伝えたら……」
「百合ちゃんのOKでてるなら即でしょ」
「うん。即押し倒されてリビングで……」
「リビングで!? ソファ?」
「うん。ソファで押し倒されてそのまま……」
「で、どうだった?」
「最初は少し痛いかなって思ったけど、気持ちよすぎてすぐにわけわかんなくなって……」
「そうなんだよ。旦那様ってすごい上手いのよ」
「気づいたら気絶させられてるんだよね。カナちゃんの話じゃ普通じゃないらしいけど」
「私昨日4回も気絶しちゃったんだけど」
「あーそれ普通だから」
「ダーリン相手なら普通だね」
「あれが普通なの!?」
ちなみにここは高校の教室である。いくら騒がしいとはいえカーストトップの美少女3人の会話である。耳を澄ませて聞いている者も多い。
(4回気絶!? どんなことしてるの!?)
(3人とも同じ男相手に!?)
(まさか我らの女神様たちがどこぞの悪魔の毒牙に……)
教室に来ていた者たちの思いは様々だが、一貫しているのは名前の出てこない3人に共通する男に対しての興味であった。何せこの学校のTOP3ともいわれる美少女3人の男である。猪瀬の監視を掻い潜って手を出しているのか、はたまた公認なのか。その辺りも周りは興味が尽きない。しかしご主人様、ダーリン、旦那様。呼び方は多々あれど名前が一向に出てこなかった。
「そういえば土曜日にご主人様とデートするんだけど、みんな聞いてる?」
「マジ? 聞いてないんだけど? 土曜日私も空いてるから一緒に行きたい」
「昨日思いついたみたいだからまだ連絡してないんじゃないかな」
「あっ土曜日仕事ある? ってメッセ来てた」
「朝来てたやつっしょ。私は暇って返してあるよ」
「じゃあ一緒に行けるね。今度はどこにいくんだろ。真由っち知ってる?」
「一応その……私のブラを買いに……」
「あーなるほど。真由ッちだとサイズがないからねえ」
この二人はもちろん真由が隠れ巨乳ということは知っている。
「ってことはついに解放するの?」
「ご主人さまが形が崩れたら嫌だっていうから……」
「それはわかる。大きいのにサイズ崩れたら悲惨でしょ」
「変な虫寄ってこなけりゃいいけど」
「美紀と洋子と一緒にいれば大丈夫でしょ」
「でも仕事でいないときに寄ってこない?」
「旦那様の恋人ってことで家から護衛つけとくよ」
武藤は猪瀬にとって最重要人物である。その恋人となれば必然的に護衛対象となるのだ。
「楽しみだねえ」
「これで6Pになるのか」
「ろっ!? みんな一緒にやるの!?」
「もちろん。うちらはもうお互い恥ずかしいとこなんてないくらい全部見られてるよ」
「真由っち土曜日は泊るって言っといたほうがいいよ」
「泊まり? ってまさか!?」
「寝られると思わないでね?」
洋子達の言葉に真由はごくりと喉を鳴らした。あの数時間で4回気絶したのである。それが一晩中……一体どんなことになるのか戦々恐々とするのだった。
一方、とある中学校では。
「百合」
「なに?」
「最近、武くんとその……してない気がしないか?」
「う、うん」
「ダウト」
「え?」
「今のはうそをついている反応だ。いつだ? 言え!!」
「き、昨日その……」
「昨日!? 君という奴はそんな抜け駆けを……」
「抜け駆けじゃなくてなんとなくなりゆきで――」
「なりゆきだと? 昨日映見達と遊んだ帰りに武くんの家にいったというのか?」
「その……夕方に真由さんがその……」
「あーあの子か。つまり1人増えたと?」
「うん」
「それで一緒になってやったと?」
「は、はい」
百合の言葉は少なめだが香苗は全て理解していた。
「自分は誘えという割に私は誘わなかったと?」
「だってもう暗かったし、香苗の家ちょっと離れてるし……」
「ずるい」
「え?」
「ずーるーいー!! 百合だけずーるーいー!!」
それは普段クールな香苗からは想像もつかない年相応どころか駄々をこねる幼稚な姿だった。そんな姿を初めて見るクラスメートの反応も様々だった。
(あのクールビューティーな間瀬さんがあんな姿を!?)
(間瀬さんかわいい!!)
(恋は人を変えるっていうけど変わりすぎでしょ!?)
普段とのギャップからおおむね好評価のようだった。
「ど、土曜日デートするから。その時に……ね?」
「……わかった」
渋々とだが香苗は了承した。ちなみに百合は最近香苗が歳相応の少女らしい態度をとる姿をよく見ている。偏にそれも武藤のおかげだということにはもちろん気が付いていた。
(他の男がーとか言ってる割に香苗は武にぞっこんだよねえ)
自分もそうなのを棚に上げて百合は一人心でごちた。
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