第47話 夏休み最後の日

(しかし、4人も嫁が出来てしまうと日替わりローテーションで搾り取られることになる。魔法で回復できないと死ぬのでは?)


 武藤は嫁を沢山貰うことを真剣に考えていた。武藤は魔法で精力も体力も回復することができる。その為、朝まで続けることができるのだ。だがそれを毎日できるのかと問われれば難しい。やろうと思えばできる。だが、それをいつまで続けるのか? と。大人になれば子供が出来るまでと明確に区切ればいい。だが学生時代は作れない。と、なれば休む日がない・・・・・・のである。1人なら何日かおきとかでいいだろう。だが4人も居たらそうもできない。何日か間をあけるとなるとかなりの間が空いてしまう人が出てしまうからだ。


(百合と香苗は下手したら毎日求めてくる可能性だってある。生理以外に休める日がないともなれば……ハーレムが作られない理由がよくわかる)


 どんな性豪でも朝まで毎日続けるなんて不可能である。だが武藤は出来てしまうし、何より他人と比べたことがないのでそれが普通だと思っている。故にハーレムというものが恐ろしい難易度だと思っているのだ。


(そうか!? 相手をイかせればいいだけで、自分は出す必要はないのか!?)


 そこで武藤は天啓を授かる。相手をイかせて気絶させてしまえばいいのだ。一夫多妻の義務となったセックスは、男の為ではなく女の為。ならば相手に気持ちよくなって貰えばいい。武藤はそう考えた。


(出すのは子供を作る時だけでいい。なんだ簡単なことじゃないか)


 普通では無理だが武藤なら造作もないことである。


(それなら1日に2人以上相手にしてもいけるな。休める日が作れるぞ)


 武藤は段々と思考がおかしいことになっていることに気付いていなかった。




 引き続き美紀と洋子とのデートは続いていた。だが最初に来た時と変わったことがある。それは2人が武藤の知りあいというカテゴリーから守るべき対象へと移り変わったことだ。


「ねえ、ダーリン服みにいこ?」


 そういって腕を組んでくるのは美紀。現役のモデルであり、最近はTVに出たりと芸能活動もしている所謂インフルエンサーだ。


「……」


 そして武藤のもう片方の手を上目使いでそっとつまむように持っているのは猪瀬組の娘である洋子だ。実は男と手をつないだこともない純粋培養のお嬢様だったことが発覚している。


 昨日までの元気なギャルという雰囲気はなく、今ではどこからどうみても清楚なお嬢様である。


 そんな二人にくっつかれている武藤はといえば、マスクに眼鏡の完全不審者スタイルである。故に周りからの視線もいろんな意味で熱い。


「なんであんな男が!!」


「めっちゃ、かわいいこいる!!」


 等、3人が通ると必ず振り向かれるのだ。そして武藤については恨みつらみの罵詈雑言。女性2人については間違いなくかわいいとの評価である。



「ねえ、ダーリンて使える魔法ってどんなのがあるの?」


「人前で魔法使いとか言わないでほしいんだが」


「あっ!? ご、ごめん」


「俺の歳で魔法使いなんて珍しくないからな」


「ええ!? そうなの!?」


「世間一般で言う魔法使いってのは30歳まで童貞の男のことだから」


「へ?」


「そういう意味でも言わない方がいいっていってるの」


 そういうと2人は顔を真っ赤にしていた。本当は自慰行為すら禁止だったっけ? と武藤はどうでもいいことを考えていた。


「……ねえ、ここまできといてなんだけど、ダーリンの家いっていい?」


「? 昨日も来たじゃん」


「今から!!」


「……いや別にいいけど」


「やった!! 早く行こっ!! ほらっ洋子も!!」


 そういって武藤と洋子の手を引っ張り、美紀はウキウキで武藤家へと向かった。





「それで急にどうしたんだ?」


 家に到着するなり急に静かになった美紀に武藤が尋ねる。洋子も特に理由を知っている訳ではなく戸惑っているようだ。


「カナちゃんに聞いたんだけど、ダーリンてさ、結構女の人に裏切られて来たんでしょ? でもさ、百合ちゃんとカナちゃんには裏切られてないじゃん? それってさ、ダーリンと肉体関係を持った相手、しかも処女を捧げた相手は絶対に裏切らないってことじゃないの?」


「!?」


 武藤は唐突に何を言っているんだ? と思ったが、案外的を射ているのか? と言われたことを考える。裏切る裏切らないに肉体関係は関係あるのか? あるなら寝取られなんて言葉はない気がする。武藤は冷静に考える。そうなると考えられるのは相手の女を満足させているかどうか・・・・・・・・・・・・・・・・ではないだろうか? それを初めての相手に行えば裏切られない? そんな仮説が武藤の頭に思い浮かんだ。


「今ここにぴちぴちの処女二人いるよ? しかもどっちもダーリンが大好きで他のお嫁さんも認めてる希少な美少女だよ?今を逃したらもう2度とあえないかも?」


 その言葉に武藤の心が揺れる。つい先ほどお互いのことを知ってからの方がいいっていったばかりなのに、今襲ったらどの口で言ってるんだといわれそうと考えていた。


「こうみえて私も洋子も身持ち硬いよ? ちなみに百合ちゃんに聞いたら洋子もOKだってさ」


「!?」


 その言葉に再び武藤の心が揺れた。武藤における最優先対称の百合のお許しは何よりも大きいファクターである。というか絶対である。


「私一応芸能人だしさ。お仕事柄そういう要求もされると思うんだよねえ。もちろん断るけど、ある日無理やりやられちゃうかも……そしたら多分私自殺しちゃうだろうなあ」


「!?」


「でも大好きな人に初めてを捧げてたら、なんとか生き残るかもしれないなあ」


「!?」


「洋子だってさらわれる可能性だってあるわけだし。やっぱ大好きな人にはじめてをささげたかどうかはその後の人生にも重要だと思うんだよねえ」


 武藤は悩んでいた。武藤の心の中の天使と悪魔が戦っている。


『悩む必要なんてねえ、やっちゃえよ!! 何より女どもがそれを望んでるんだぜ?』


『女性達に恥をかかせてはいけません。そこはやさしく思いを受け止めるべきでしょう』


『『やっちゃえ!! やっちゃえ!!』』


 全然戦っていなかった。


「ここまでいって駄目なら素直に諦めるよ。私は好きでもないおっさん達に好きに汚されまくる人生になるだろうし、洋子は婿を迎えることになるだろうねえ。洋子はどうなの? 黙ってないで何か言ってみ?」


「え? え? だって……突然のことでどうしていいかわかんないんだもん!!」


 洋子はテンパっていた。何せ唐突に訪れた機会である。男のことなど右も左もわからない洋子にとっては難易度高すぎるのである。


「簡単よ。私達とずっと一緒にいたかどうか。それだけよ」


「私もいっしょがいいいい、仲間外れにしないでええええ!!」


 そういって洋子は武藤に抱き付いてきた。


「どうするダーリン? 私達の運命はダーリンが握ってるよ?」


 その言葉に武藤の心の防壁はついに崩壊した。





「う……ん」


 夕方になり、武藤が目を覚ますと両隣には二人の美少女が一糸纏わぬ姿で幸せそうにすやすやと眠っていた。


(やってしまった……)


 いくら鉄壁でも恋人枠という城壁内に入って内側から扉をこじ開けられたらさすがの城壁も肩無しである。


 あれだけ拒んでいたにも関わらず、結局美少女2人に言い寄られたらリビドーあふれる中学生男子の肉体では抗うのは不可能であった。


 決定的だったのは百合がOKを出したということである。それが無ければ最終防壁突破は出来なかったであろう。逆を言えばそこさえ突破してしまえば、なんとかなってしまうのが武藤である。結局やさしい男は女に勝てない生き物なのだ。


 ちなみに二人とも腕枕で寝ている為、武藤は身動きがとれない。だが腕は動く。そして動く範囲には男のロマンおっぱいがある。やることは一つである。


「ん……」


「あん……」


 寝ていても二人の反応は上々である。調子に乗った武藤は延々と揉みしだいた。


「あっあっ……んっんん?」


「あっん、なに?」


 武藤もただ欲望のままに揉んでいたわけではない。今日は夏休みの最終日。さすがに泊まらせる訳にはいかないのだ。故に起こした。それだけである。決してただ揉んでみたかった訳ではないのだ。


「あっダーリンおはよう。なに? またするの?」


「あっおはよう武藤君。その……私はいいけど……」


 既に二人はやる気満々である。


「そろそろ帰らないとまずいでしょ」


「あっ!?」


「もうそんな時間!?」


「あっ待って記念写真とっとこ」


 そういって洋子は武藤が胸元を隠した裸の二人を抱き寄せるところを写真に撮る。


「こうしとけば私達はダーリンの女だって証拠になるよね。他の子に見せてもいいよ。でも動画の方はやめてね。さすがに恥ずかしいから」


 そう。実はまたもや動画撮影済みである。カナちゃんに頼まれたとのことだったので、間違いなく諸悪の根源は阿奴である。それによりまたもやヤバい物が出来上がった。その名も美少女モデルJK無修正処女喪失3P中出しハメ撮り動画である。どこのAVの広告なのか。


(やばいパワーワードが多すぎる。しかも誇大広告の部分が何一つないのがさらにやばい……)


 武藤がそんなことを考えていることを知らないまま、二人は起き上がると武藤に案内されシャワーを浴びに行った。


「仕事でそういうことされそうになったら言ってくれ。すぐに処理するから」


「あっ心配してくれてたの? ありがとうダーリン!! でも大丈夫よ?」


「うちがそういったこと許すわけないでしょ。うちの会社そういうの超厳しいから」


 誘われるのは本当だし、そういうことを要求してくる業界人も多いことは確かである。だがそれを許す猪瀬組ではないのだ。


「ちゃんと誰に手をだそうとしてるのかわからせてるから」


 そういってほほ笑む洋子は先ほどまでの初心な少女ではなく、まさに姉御といった感じでとても頼もしそうだった。


「え……じゃあ……」


「嘘は言ってないよ? 誘われるのは本当だし、洋子がさらわれる可能性だって本当。ただ十分な護衛が付いてるって言わなかっただけで」


 そういって舌を出す美紀に「やられたっ」と武藤が思うのも無理はなかった。よく考えればわかることだったのを、そう気が回らないように話をした美紀の完全勝利だった。



「今日はありがとうね、ダーリン。これで既成事実もできたことだし、一安心だね。これからもよろしく!!」


「その……私の方もよろしく!!」


 そういって左右から同時にキスされた。


「「また連絡するね!!」」


 そういって二人は帰っていった。帰りは猪瀬の車の様だ。


「4人かあ。養えるかなあ」


 気が付けば嫁が4人になってしまった武藤は将来設計を真剣に考えるべく、部屋に戻るのだった。



 その日の夜。

 

『やったの?』


 電話から聞こえる声に武藤は怯える。そして相手が電話にも関わらず武藤は正座をしていた。


「……やりました」


 武藤は素直に答える。


『まさか昨日の今日で手を出すとは思わなかったわ』


 その言葉に武藤は何も言えなくなる。まさにその通りと自分でも思っているからだ。

 

『あのね。やったことに文句を言ってるわけじゃないの』


「??」


『なんで私も呼ばないのよ!!』


 そういえばそうだった。この子はそういう性癖だった。武藤は最愛の人の性癖を思い出し、心からため息をついた。

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