第15話 まさかのNTR?
一方、百合の学校がそんなことになっていることも知らず、武藤は金策について幼馴染達と話していた。
「なんか宝くじとか株とか以外で、一攫千金の方法ない?」
「あったら俺がやっとるわ!!」
武藤の言葉は貝沼に一秒で一刀両断された。
「ネットの広告でよく見るけど、絶対もうかるとか資産が百倍になるとかさ、あれってそんなこといってるなら自分達がやれよって思うよな」
「本当にもうかるなら態々広告に出さないっていう」
「いや、わからんぞ。その広告を出して人に見せるっていうのが、その儲かる為の方法なのかもしれん」
「「なるほど!?」」
相も変わらず幼馴染三人は下らない話で盛り上がる。
「それはそうと武。百合ちゃんと買い物してたって母さんから聞いたぞ」
「そうそう、俺も。百合ちゃんとは言わなかったけど、すげえ可愛い女の子って言ってたから百合ちゃんだろ?」
「ああ、土曜日にな。手料理振る舞ってもらったんだ」
「おお!!」
「美少女の手料理とか羨まし過ぎる」
「正直、俺の人生で一番美味しかった」
「……憎しみで人が殺せたらいいのに」
「うおおい!? 物騒すぎるだろ!? そこまで!?」
モテない稲村の怨念にさすがの武藤も怖気づく。
「お前にはわかるまい。妹にすらバレンタインのチョコを貰えない俺の気持ちが」
「……なんかごめん。俺、去年薫からもらったわ」
「なん……だと……」
「あっ俺も貰ったけど?」
「なんでだああああ!?」
実は稲村の妹である薫から武藤も貝沼もチョコを貰っていた。形は明らかに武藤の方が良かったが、二人は別々にもらっていた為に気が付いていない。
「お前太り気味だから気を使ったんじゃね?」
「ああ、確かに最近の太り方は結構酷いもんなあ」
「うっ!?」
自身も気にしていた肥満を指摘され稲村は焦る。確かに最近かなり太ってきていると思っていたのだ。
「それにしたって駄菓子のチョコすら貰えないとか酷くね!?」
「……タカどんなのもらった?」
「形はいびつだったけど手作りのやつ。お前は?」
「俺も手作りのやつだったな。形はちゃんとしてたけど」
「ああ、なるほど。つまり俺のは失敗作で成功したのはお前のやつってことだな」
「なんでえええええええ!?」
まさか兄である自分以外は手作りチョコを貰っていると知って、ついに稲村は轟沈した。
「薫はほら、Sっ気あるから」
「ああ、なるほどな」
S気質のある稲村の妹薫は、心許せる相手にはSっ気が出ていじめてしまう傾向があるのだ。実際、武藤達のチョコにはからしやわさびがてんこ盛りだった。
「それはそうと金儲けの方法だよ。なんかない?」
「なんかって言われてもなあ。ギャンブル以外でってことだよな?」
「そう」
「じゃあ、順番に考えていこう。まず前提として日本人が誰でも付ける職業で、一発当たれば大儲けってやつだな」
「んーIT企業の社長とか?」
「アイデア次第だなあ。それにすぐ潰れる可能性も高いからリスクもかなり高いな」
「スポーツ選手は?」
「体育会系が嫌いだからそういうとこは却下で」
「面倒くさいなお前は。と、なると……eスポーツはどうだ?」
「チームじゃないeスポーツって格闘ゲームくらいじゃね?」
「格闘ゲームかあ。確かに得意っちゃあ得意だけど、儲かるか?」
「ピンキリだとは思うけど、上はスポンサーがつくからかなり儲かるらしいぞ」
「そうか、個人に付くスポンサーか。なんかテニスプレイヤーみたいだな」
「まあ、似てるっちゃあ似てるな。テニスはラケットとかの提供あるけど、ゲームプレイヤーはコントローラとかの提供があるって聞いたことがある」
「ちなみに今調べてみたけど、スポーツの個人賞金ランキングの上位はサッカー、バスケ、ゴルフの三つが殆どらしいぞ」
「メジャーリーグは入ってないのか。個人競技ならゴルフなんだろうけど……初期投資がなあ」
クラブを買ったり、練習場の準備だけでかなりの金額がかかる為、フィギュアと並んで金持ちのスポーツだというのは武藤も知っている。
「クラブなんて木で作ったドライバーとパターがあればプロになれるんだろ?」
「そのプロって絶対猿だろ……」
「猿君勝負だ!! 賞金は百万円!!」
「手作りの木のクラブってだけでハンデキャップ酷すぎるんだが……」
「旗包み狙ってOBになる未来しか見えないな」
古い漫画のネタでも武藤の家によく遊びにくる幼馴染二人は平気でついてくる。
「そもそもこの辺りでゴルフ部のある高校なんてあるか?」
「やっぱ私立しかないんじゃないか? 気にしたこともないから知らんけど」
やはりゴルフは厳しい様だと武藤はスポーツによる金儲けをあきらめる。
「スポーツを除外すると……やっぱり動画配信者か?」
「動画配信かあ……俺には無理だな」
簡単なように見えて続けるのが非常に難しいと武藤は思っている。毎日のネタ探しや、根気のいるゲームプレイ等、上に行くほど己の身を削る思いをすること請け合いである。
「しかも結構な斜陽産業だからなあ」
問題は誰でも簡単に始められる為、粗悪乱造が著しいことにある。例え一時的に伸びてもそれを継続することは非常に難しいし、後から後からどんどん新規参入が増えるのである。余程の才能がないと金儲けと呼ばれる程、一定以上稼ぎ続けることは難しいのだ。
「やっぱ簡単に儲かる話ってないな。不労所得でもあればいいのになあ」
「言ってることが完全に駄目人間のそれだぞ」
思考が完全に駄目人間になりつつある稲村だが、内心は武藤も同じことを思っていたために強くは言えなかった。
「山本さん」
その日の放課後。武藤から迎えに行くと連絡があり、香苗と聖子の二人と一緒に校門付近で待っていると、不意に百合は声を掛けられた。
「松井さんと相良さん?」
声をかけてきたのは、あまり百合とは接点のない隣のクラスの面々だった。
「ちょっといいかしら?」
「実は相談に乗ってもらいたいことがあって……」
「? 私に?」
「ええ」
校門でするような話ではないと、一行は近くのファストフード店に入る。もちろん百合は武藤に移動する旨を連絡済みだ。
「その……相談の前に確認したいことがあって」
「何かしら?」
「あの噂は本当なの?」
「噂?」
「その……昨日、初体験だったのに朝までやったあげくに気持ち良すぎて気絶したのに、口で無理やり大きくしてさらにお昼まで盛ってたっていう」
「なあっ!?」
なまじ間違っていない部分が多すぎて百合は否定することができない。
「ふむ……大体あってるな」
「ええええ!? ゆ、百合先輩!?」
その事実を初めて知った後輩の聖子は、思わず驚愕の声を漏らして百合を見つめ、香苗は冷静に噂を肯定する。
「事実だったのね……山本さん!! 頼みがあるの!!」
「……なに?」
盛っていた発言を否定できなかった百合は顔を真っ赤にしてなんとか返事する。
「実は私達……その……彼氏に求められて……」
二人は去年卒業した、高校生になる彼氏がいるのだが、その彼らに体を求められたときに上手くいかなかったということらしい。
「その……痛いだけで、全然気持ちよくなくて……最近はどんどんギクシャクしてきて……どうやったら山本さんみたいに気持ちよくなれるのか教えてもらいたくて」
「私はその……体を触られてもくすぐったいだけで……笑ってしまって、そういう雰囲気にならなくて……」
「えーと、それを私に相談されてもどうしようもないというか……」
「まあ、百合を開発してるのは武藤くんだから、そっちに聞いた方がいいだろうね」
「でも聞くって言ったってどうするの? 武に抱いてもらうくらいしか方法ないと思うんだけど?」
「その……気持ちよくなる為なら……一回くらいは彼も許してくれるんじゃないかなと……」
「そんなわけないでしょ!? それはもう立派な浮気でしょ!! 武だったら絶対嫌っていうわ!!」
一途な愛をささげてくれる一方で、武藤は非常に嫉妬深いのだ。
「でも……このままじゃ私、彼に嫌われちゃう……」
「松井さん……」
手で顔を覆い涙を流す松井に百合は、浮気ではなく真剣に悩んでいる為の苦渋の決断だというのに気がついた。
「私もその……このままじゃ一生男の子と付き合えないかなって……」
「相良さん……」
こちらも同じように涙を流していた。二人とも恥ずかしさを忍んで、本当に一大決心をして悩み相談してきている。なんとか力になってあげたい。でもそれにはどうやっても武藤が、この二人にエッチな行為をすることが必要になる。その場面を百合は想像する。
(……あれ?)
何故か百合の股間がしっとりとしてきた。
「百合どうした?」
(まさか私……興奮してる!?)
武藤が他の女性を目の前で抱いている姿を想像しただけで、百合は何故か香苗の言葉も耳に入らない程興奮し、鼻息が荒くなり、あそこが濡れだした。
「そ、そうね。ちょっと武に相談してみるわ」
「百合!?」
「先輩!?」
百合のまさかの提案に香苗と聖子は驚きを隠せない。二人は百合が何故そんなことを許すのか全く理解ができなかったのだ。
「あっいた」
十分後。お店に漸く武藤が到着する。知らないメンツまでいるが、女子中学生の集団はお店では非常に目立つのでわかりやすい。武藤はすぐに目当ての集団を見つけると近寄った。
「武、ちょっと相談があるんだけど」
「?」
そして百合が先ほどのことを話すと、さすがの武藤も顔をしかめた。
「それって俺がこの二人とそういうことをしないかぎり、解決しない気がするんだけど……百合はいいの?」
「も、もちろんやだけど、でも何とかしてあげたいっていうか……」
百合のその言葉に武藤は違和感を覚える。自分だけを彼氏だといい、浮気したら殺すとまで言っていた百合がそんなことをいうだろうか? そして何故か顔を赤らめているし、あの足の動きは間違いなく興奮して濡れている。
「!?」
そこで武藤は天啓ともいうべきひらめきを得た。
「まさか百合……興奮してる?」
「!?」
武藤のその言葉が百合はまさに図星といわんばかりにびくりと体を震わせた。
「そ、そんなことない……よ?」
「正直にいいなさい。お前まさか……寝取られを想像してないか?」
武藤のその言葉についにバレたといわんばかりに百合は露骨にびくっと体を震わせる。
「寝取られ?」
「寝取られってなんですか?」
そういうことに疎い百合の友人二人は素朴な疑問を呈す。
「自分の恋人や配偶者が、自分以外の人と肉体的な関係を持ったり、精神的に奪われたりすることだな」
「「……ええーっ!?」」
二人は一瞬何を言っているのかわかっていなかったが、その言葉を次第に飲み込んで理解した時、驚愕の声をあげた。
「そ、それってその……武藤くんが他の子と?」
香苗のその言葉に百合は手で顔を覆い赤らめた顔を隠す。
「な、なんでそんな……」
信じられない百合の性癖にさしもの二人も絶句する。
「以前百合が、俺の性癖ならなんでも受け止めるって言ってくれた時に、じゃあ寝取られは? って言ったことがあったんだ。そしたら百合は嫌だって言ってくれたんだが……」
まさかの彼女側がNTR性癖にはまるとは、さしもの武藤も想像できなかった。
「わ、私がやるのは絶対嫌だよ? 武も嫌だって言ってくれたし。でも武が他の子とするのを想像したら……なんかすごい興奮するというか、体が熱くなるというか……」
「駄目だこいつ……早くなんとかしないと……」
「武藤先輩!! なんでこんなになるまで放っておいたんですか!!」
「俺のせい!?」
お店の一部がカオスな空間になっていた。
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