第12話 夜が明けて
「ん」
チュンチュンとなく雀の声と、薄らとカーテンの隙間からさす光に武藤は夜が明けたことに気が付く。寝たのはついさっきだ。つまり……朝まで盛ってしまったのだ。若い情熱を抑えることができず、ついついやりすぎてしまったと武藤は反省する。隣を見れば百合はまだぐっすりと寝ている。これは仕方がないだろう。何せ処女喪失から抜かずに延々とやり続け、気が付けば百合の目は虚ろのままで、あえぐ声以外にまともな言葉を発せない状態になり、その上で武藤が腰を振り続けるという傍から見たら完全にレイプ状態だったのだ。異世界で完全に開発しきった百合の体を、再び一から開発できるという夢のような行為に武藤は興奮を隠せなく、気が付けばやりすぎていた。
(さすがに怒られるかな……)
さすがの武藤も反省していた。ひょっとして嫌われたのではないかと不安もあるが、その場合、完全に落ちるまで抱き続けようと恐ろしいことも考えていた。
(そうだ。記念にとっとこう)
武藤は布団からでるとスマホで写真を撮る。処女喪失の証拠と可愛らしい愛する女の寝姿を写真に収めた。百合は疲れすぎたのか起きる気配すら感じない。それならばと武藤は百合の隣に寝て腕枕をし、自撮りでツーショット写真を撮った。布団で百合の裸は見えないが、肩は出ているので裸だと想像はつくので思いの外エロかった。
(これで誰に何を言われても百合は俺のものだと証明できるだろう)
他人に見せる気はないが、彼女だと証明しろと言われても、そんなもの結婚でもしないかぎり証明なんてできやしない。故に証拠を作っておくのだ。武藤はそう自分に言い聞かせた。本当はただ愛する百合のエッチな写真が欲しかっただけともいう。
「うん……」
朝10時になろうとするくらいに漸く百合が目を覚ました。
「おはよう百合」
「おはよう武。……!? あれ? なんで武が!? あれ? ここは……ああ、そっか」
完全に寝ぼけていた百合が漸く現状に納得する。
「さっそくだけどはい、チーズ」
「え?」
武藤は問答無用でツーショット写真を撮った。もちろん百合は布団で体を隠していたが、やはり寝ているときより余計にエロく感じる1枚になったと武藤は思っている。
「記念にね。俺達の最初の一歩だから」
「そっか……ってなるかあ!! 消しなさい!!」
勢いで押そうとしたら思いの外、百合が現実に戻るのが早かった。
「駄目?」
「駄目」
「どうしても?」
「どうしても」
「だったら……力づくで認めさせてやる」
「え? きゃあっ!!」
武藤は百合をベッドに押し倒すと昨晩の続きと言わんばかりに全身を攻めだした。
「昨日あれだけやったのにまだやるのっ!? ってこらっ!! 朝っぱらからやめなさい!!」
武藤は百合の静止も聞かず、一心不乱に百合を責め立てる。すると段々攻める声は聞こえず、悩ましい声が聞こえ始め、最終的には喘ぎ声しか聞こえなくなった。
「馬鹿」
「申し訳ありません」
時計が11時を指す頃。武藤はベッドの脇で土下座していた。目の前には全裸の百合が仁王立ちしている。
「駄目って言ったよね?」
「はい」
「なんで襲ったの?」
「百合がいけない」
「え?」
「百合が可愛すぎるのがいけない!!」
「えっと……そ、そんなこといっても騙されないんだから!!」
「騙してない。本当の本気でそう思ってる」
「え? ……もう、許すのは今回だ――んっ」
突然の百合の妖艶な声に土下座していた武藤が顔を上げると、そこには百合の太ももの内側を流れる白い液体があった。
「もう、あんなに出すから、出てきちゃったじゃな――きゃあっ!?」
「百合!! 百合!!」
「ちょっと待ちなさい!!さっきやったばか――あんっ!!」
気が付けば時計は12時を回っていた。
「武」
「はい、すみません」
「本当に反省してる?」
「はい、もちろんです。でも一ついいですか?」
「なに?」
「向こうに居たころから俺の夢だったんです。一緒にお風呂に入ってもらえませんでしょうか」
「え?」
「えっちなことをした後に、彼女と一緒にお風呂に入ってみたいんです!!」
言っていることはどうしようもないことなのに、初めてみる武藤の力説にさすがの百合もたじろいだ。
「はあ、夢なら仕方ないわね。いいわよ。但し一緒に入るだ――きゃあっ!!」
百合の台詞を最後まで言わせず、武藤は百合を抱えて風呂場に一直線で走っていった。
「入るだけって……いったのに……あっあっああああっ!!」
「百合、百合!!」
気が付けば百合はお風呂場で立ったまま後ろから武藤に突かれまくっていた。百合も何となくこうなるとは思っていたので、怒っているように見せているのはあくまで振りである。
13時を回った頃、漸く百合は解放された。
「一体何回すれば気が済むのよ!!」
「百合が居る限り無限」
「むげっ!? しばらくエッチ禁止!!」
「!?」
百合のその一言で武藤は膝から崩れ落ちた。
「あんまりされると、実はやりたいだけなんじゃないかって不安になるのよ」
「やりたいと思うのは駄目なのか?」
「え?」
「百合だけが欲しいのに。百合だから欲しいのに。その欲求は駄目なのか?」
武藤の純粋な質問に百合も答えが返せない。
「わ、私だって本当は……でも駄目なの」
「なんで?」
「気持ち良すぎて、それ以外考えられなくなっちゃいそうだから」
既に百合は一度武藤に完全攻略されている。その経験を活かし、武藤は更に百合が快楽に溺れるように魔法すら使って開発を始めた。処女だった中学生の未成熟な体に施された開発は、さすがの百合もその精神が揺れる程の快楽を得てしまい、とても恐ろしく感じていた。
「わかった。百合の為だというのなら、これからは極力我慢する」
「ごめんね。もっと慣れたら大丈夫かもしれないから。それまで……ね」
さしもの武藤も百合の本気の言葉には逆らえず、渋々とだが従うことにした。
その後、昨日の残りで昼食を摂り、リビングで二人はイチャイチャしながら映画を見ていた。
『叔母さん』
「ひっ!?」
テレビの中から聞こえる声に百合は驚き、武藤の腕に抱き付く。場面は死んだはずの人の声が聞こえてきたところだ。
「こわ、怖かった……見るんじゃなかった。絶対今日の夜、一人でおトイレいけない」
見たことがないというので有名なホラー映画を見たのだが、その効果は抜群だったようで、百合は終始振るえていた。
「この作者、最初はファンタジー小説書いてたんだよねえ。何か賞貰ってたし。でも気が付いたらホラー作家になってたんだよなあ」
ホラーに慣れている武藤はそんな豆知識を披露するも百合はそれどころではなく、全く聞いていなかった。
「そもそも今の時代、そうそうビデオデッキとかないでしょ? 家にはあるけど」
武藤の家には普通にVHSのビデオデッキが存在していた。父親の物持ちが良すぎて、今でも現役で動くくらいには手入れがされているのだ。
「……ある」
「え?」
「うちもお父さんが偶に見るからリビングに……」
「そうなんだ。案外珍しいものじゃないのかなあ」
武藤は呑気にそんなことを思うも百合としてはたまったものではなかった。
「夜は俺とのエッチなことを思い出したら怖くないんじゃないかな?」
「え? それは……たしかに余計なことは考えなくなるかもしれないけど、別な問題で大変なことになりそうな気がする」
どちらにせよ百合にとって今夜は大変だろうと、武藤は慰めるように百合の頭を優しくなでた。
夕方になり、暗くなる前に武藤は百合を家まで送る。
「ここでいいよ。万一お父さんに見つかったら面倒だから」
そういって百合宅目前の最後の曲がり角の前で、百合は武藤から自身の荷物を手渡される。
「それじゃあ、また明日ね。夜電話するから」
「……うん」
返事をするも名残惜しそうに悲しそうな顔をする武藤見た百合は思わず胸がキュンとしてしまった。
「もう。そんな顔しないの。私だって名残惜しいけど、もう会えないわけじゃないでしょ」
そういって百合は武藤に抱き着き、口づけをする。
「ん、んん」
軽いキスは次第に濃厚になっていき、気づけば舌が絡み合い辺りに唾液のまじりあう音が響いた。
「はい、おしまい。元気でた?」
「出すぎました」
武藤のその言葉に?マークが浮かぶもすぐに状況を察し、顔を赤らめて「……えっち」と百合は呟いた。
「それじゃあ、ま――!?」
武藤と別れようとした際、振り向く途中で、一瞬視線があった人物がいた。
「お、おば様、こ、こんにちは」
「こんにちは、百合ちゃん。彼氏さん?」
「あっはい。それじゃ失礼します。武もまたね!!」
そういって百合は恥ずかしそうに走り去ってしまった。まさか一部始終を勇者であった吉田弘の母親に見られていたとは思っていなかったのだ。弘の母親としても気まずかっただろう。何せ家の目の前で弘の嫁に欲しいと思っていた少女が、全く知らない男の子と濃厚なキスをしている場面を目撃してしまったのだから。武藤は相手がだれかもわからず、とりあえず会釈をしてその場を後にした。
その日の吉田家夕食の食卓。
「そういえば弘。あんたがトロトロしてるから百合ちゃん取られちゃったじゃないの」
「はあ? 何言ってんだ?」
「えっ? お兄ちゃん百合ちゃん取られちゃったの? 私、百合ちゃんお姉ちゃんになってほしかったのに!!」
母の言葉に疑問を浮かべる弘。特に心当たりが思い浮かばなかったのだ。
「確かに最近一緒に学校行ってなかったけど、あれは百合が女友達を優先してたからだろ?」
弘はまさか自分が避けられている等、夢にも思っていなかった。
「はあ……そんなこと言ってるから横からかっさらわれるんだよ。いいかい? 夕方百合ちゃんにあったんだよ。家の前で。何してたと思う?」
「ん? 家の前なんて家に帰るか出かけるかくらいで、何するものでもないだろ? 家の前で何するんだよ」
「それがね……キスしてたんだよ」
「はあ!? 嘘だろ!?」
「それも軽いやつじゃなくてとびっきり濃厚なやつを。何しろピチャピチャと舌が絡まりあう音が周りに聞こえるくらいだったからね」
その言葉に弘の思考は停止した。百合がキス? それも濃厚な? 俺ともまだなのに。弘の思考は全くまとまらない状態だ。既に武藤達が帰還した時の光景は都合よく記憶から消えている。
「ありゃあ、百合ちゃんの方がべたぼれだね。男の方もべたぼれみたいだったけど、それ以上に百合ちゃんが惚れてる。間違いない」
「な、なんでそんなことわかるんだよ!!」
「これでも母さんも女だからね。見りゃわかるよ」
そういって豪快に笑う母親に弘は突っ込む気力さえわかなかった。
「しかも大きな荷物を持ってたんだ。デートにしては大荷物だったし、来た方向的に駅からも反対方向だし、ありゃあ下手したら……泊ったね」
「とまった?」
「彼氏の家に」
「!?!?」
そこで弘の思考は完全に停止した。泊った? 男の家に? それはつまり……そういうことである。自分の幼馴染が自分以外の男とそういうことをした。弘の頭は現実を受け入れられなかった。
「そういえば百合ちゃんいつのまにか完全に女の顔をしてたねえ。全く、幼馴染だからって余裕こいてるから取られるんだよ。あんな優良物件そうそうないってのに……」
そういいながら片付けを始める母親の言葉は、もう弘の耳には入っていなかった。
「ねえねえお母さん、百合ちゃんの彼氏ってどんな人だった?」
弘の妹である美穂は百合の妹である茜と同級生である。御多分に漏れず好奇心旺盛の為、大好きな百合の彼氏が気になってしかたがない。
「あー見た感じ普通の男の子だったよ。ただ、優しそうで気遣いができそうだったわ」
「へえー例えばどんなとこが?」
「当然のように百合ちゃんの荷物持ってたし、歩くときに自然と車道側を歩いてたし、本当に相手に気付かれないくらい自然に百合ちゃんを守ってる感じだったわ。わかる人にはわかる感じだけど、それに気づくようないい女なら惚れても仕方ないわ」
思いのほか弘の母親は武藤を大絶賛である。
「百合ちゃんいなかったら美穂におすすめしてたわ。アンタも顔だけじゃなくて、ああいういい男捕まえなさい」
「へえ、お母さんがそこまで褒める男なんて、お父さん以外じゃ初めて聞いたわ。イケメン芸能人とかいつもボロクソいうのに」
「自分の評価の為に作ってやってるのか、本当に相手のことを思ってやってるのかなんて見ればわかるわ。あの男の子は本当に百合ちゃんのことだけを思ってたわ。あーあんな子が義理の息子に欲しかったわ。美穂、今からでもがんばっていい男捕まえてきなさい」
「小学生になんてこと期待してるのよ!! さすがにまだ早いわ!!」
帰宅の遅い父親を除いた家族団らんの場だったが、姦しいのは女性陣だけで、現状唯一の男である弘は無言で固まったままだった。
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