第4話 彼女
その日の放課後。何故か一日中騒然とした感じになっていたクラスを後に武藤はいつものメンバーで帰る。武藤、タカ、ムネの三人は全員帰宅部なのだ。
「マジで!? 武に彼女できたの!?」
帰る際にいきなり彼女が出来たと報告を受けた、ムネこと稲村は驚愕の声をあげる。
「マジかあ、俺も欲しいなあ」
「でも今年受験だぞ? 大丈夫か?」
「彼女が出来たくらいで落ちるんなら、最初からその高校に受かる可能性なんかねえよ」
自信満々に駄目な発言をする武藤に、幼馴染は(駄目な方向に男らしいなあ)と同じ感想を抱く。
「ん? なんだあれ? 校門に人集まってない?」
見ると校門のところに人だかりができていた。何故か男ばかり。
「あっ!! 武っ!!」
そういって手を振ってかけてくるのは、武藤の最愛の彼女、山本百合であった。
「百合!? なんでここおっと」
何故ここにいるのか聞いてる最中に百合は武藤の胸に飛び込んできた。
「彼女が彼氏に会いに来るのに理由がいるの?」
「そんなものは一つもありませんよ姫。でも心配だから今度からは俺が迎えにいくよ」
「!? 武……好き」
そうして百合は武藤の胸に顔を埋める。
「マジか……すげえかわいいじゃん」
「これでお互い一目ぼれってあり得るのか? 世界は不公平だなあ」
相変わらず場所を考えずにイチャイチャするバカップルに、幼馴染の二人が冷静に感想を述べる。
「ああ、こいつら俺の幼馴染のムネとタカ」
「タカこと貝沼孝弘です。タカって呼んでください」
「ムネこと稲村宗和です。同じくムネって呼んでくれ」
「あっ初めまして。武の彼女で、西中三年の山本百合です。将来は武藤百合になりますから、呼ぶ時は武藤より百合の方がいいかもしれません。宜しくお願いしますね」
そういって可愛くお辞儀をする美少女に幼馴染達だけでなく、周囲の男達も溜息を洩らす。
「今日も家来る?」
「うん」
「今日も……だと……」
「昨日あったばかりで既に家に行っているということか……」
その会話を聞いた周囲が騒然とする。
「なんだこの人だかり。あれ? 武? なにし――」
武藤が校門でイチャイチャしていると、急に後ろから声がかかる。振り向けばそこには浜本が無表情で固まっていた。
「かわいい」
「え?」
「ま、まさか……その子が武の彼女?」
「えっはい、やま――」
百合が武の知り合いかと思い自己紹介をしようとしたその瞬間、武藤は浜本から百合を庇うように抱きしめて後ろに回した。
「駄目だ百合。こいつには近寄っちゃいけない。こいつは女をとっかえひっかえして捨てる悪魔だから」
「おいっ!! そんな言い方ないだろう!!」
「事実だからな」
「事実だろ」
「くっ!?」
武藤の言葉に浜本は反論するも、残りの幼馴染二人に事実だと告げられ、それ以上言葉を発せなかった。
「じゃあ帰ろうか」
そういって武藤達は浜本を置き去りにして帰ってしまった。
「あれは注意しといた方がいいぞ」
「ああ、絶対何か企む」
「わかってるよ」
「?」
帰り道、幼馴染三人が長年の付き合いらしい、短い会話でお互いの意思疎通を図る。
「あの浜本ってやつが百合を狙って何かしてくるってこと」
「!?」
「これからさ、俺が呼んでるとか俺に関わる何かがあった場合、必ず俺自身に連絡とって。そうじゃない場合は何かしらの罠ってことだから」
「わかった。ちゃんと武に連絡して確認するね」
「後、女子からの呼び出しとかも注意してね。あいつ意外にモテるから女の子を使って何かしてくる可能性もあるから」
「みるからにチャラそうだったけど、やっぱりそうなの?」
「あいつの苦情が何故か全部俺に来るんだ」
「え? なんで?」
「何故かあいつが俺を親友なんて広めてるせいで……まあ、それも今日全部断ったから。俺に近づく女性は百合だけでいいし」
「やだっ武ったら……」
「なんだこのバカップル」
「これがあの武だと……」
完全に恋愛脳に染まってしまった武藤に幼馴染二人は戦慄が奔る。
「そうだ。百合、彼氏が欲しい友達いる?」
ピキッ。そんな音が聞こえたのは聞き間違いだろうか。百合の額に青筋が立ち、辺りには何故かプレッシャーが立ち込める。
「この二人に紹介してやりたいんだ」
「武!!」
「心の友よ!!」
「お前はジャイアンか。どっちかっていうとタケシって名前の分、俺がジャイアンじゃないのか?」
幼馴染の親友達と相変わらずの馬鹿話をする武藤を見て、百合は乱れた心を落ち着ける。この優しい人が自分を傷つけるようなことをするわけがない。百合は一瞬でも疑ってしまった自分を恥じた。
「いいよ。何人かいるんで今度一緒に遊ぼうか」
「やった!!」
「神はいた!! この場所に!!」
「どうせならもうすぐ夏休みだから、その時のがよくない?」
「!? 天才はいる……悔しいが」
「武……お前が天才か……」
完全に浮かれて頭がおかしくなってしまった幼馴染達を放置し、武藤は百合と夏休みの予定について話をつづけた。
「一応今年受験だから、さすがにそんなには空いてないの。ごめんなさいね」
「まあ、一緒に勉強するっていっても絶対イチャイチャしちゃって、それどころじゃなくなるだろうしなあ」
むしろ勉強一割できればよし。下手したら、えっち九割どころかえっち十割になりかねないと武藤も百合も思っている。それぐらい若い男女のリビドーは凄いのだ。
「おじゃましまーす」
武藤の家に到着し、慣れた家のように百合は武藤の部屋に行く。
「ん!?」
部屋に入るや否や、いきなり武藤は百合に襲い掛かり唇を奪う。百合は一瞬驚きながらもすぐに受け入れ体の力を抜いた。
体をまさぐられ、服も下着も全部脱がされ、気が付けばお互い全裸でベッドに寝ていた。
「土曜日じゃなかったの?」
「勿論最後まではしないよ。昨日してもらったから今日は俺がしようかと」
「え!? シャワーくらい浴びさせてよ!!」
「昨日俺だって浴びてないし、百合の匂い好きだし、百合の体に汚いところなんてないから俺は全然平気」
「私が平気じゃないの!! てこらあっ!! あっ!! 駄目ったら!!」
問答無用で百合を押し倒し、武藤は百合の全身を嘗め回す。
「百合のは大きくなるのがわかってるからな。この未発達な青い果実の状態は貴重だ」
そういって武藤は百合の胸を執拗に嘗め回し、指で胸をもてあそび、乳首をもてあそぶ。
「あっだめったら……ああっ!!」
執拗に愛する男に胸を攻められ、百合も言葉以外では抵抗できなくなる。そして気が付けば武藤の手は百合の股間へとのびていた。
「すごく濡れてる」
「……馬鹿っ」
そういいながらも百合は嫌ではないようで、若干体をひねるも武藤の指を受け入れる。お互い肉体的には初めての状態だが、実際には異世界で何年も愛し合ったことがある為、お互いの気持ちいい場所は完全に理解されているのだ。
「確かここがいいんだったよな」
「!? あっばかっだめっだっあああああ!!」
服を脱がされてからわずか十分で百合は一度目の絶頂にたどり着いた。
「はあ、はあ」
いった後は少し休ませてくれる。これは武藤が優しい時だと百合は異世界でのセックスを思い出す。意地悪な時はいってる最中でも執拗に攻めてきて、気絶させられてしまうのだ。
「日が長くなったとはいえ、暗くなる前に送っていくから、今から一時間以内に後四回は逝かせるから覚悟してね」
「え? あっだめっ!!」
それから武藤の言葉は有言実行され、口と指だけで百合はきっち四回いかされてしばらく起き上がれなくなった。
「ばか」
「すみません、調子にのりました」
へろへろになりながらもシャワーを浴びて、現在服を着ている彼女に武藤は攻められる。本気で怒っていないのは長年の付き合いでわかっている。ただ照れているだけだと。だが男としてはその攻めを受け入れなければならないと思っているので、武藤は言われるがままに謝罪をしている。
「中学生の体をこんなに開発しちゃって……ちゃんと責任とってよ?」
「勿論だ。将来的には俺に触れただけで絶頂するくらいに開発してみせる!!」
「するな!! 外で手も繋げなくなっちゃうでしょ!?」
そんな会話をしながら、武藤は百合を家まで送る。
「明日からは俺が迎えに行くから、学校でもお店でも、できればナンパがない人通りのある場所で待ってて。急用とかあったら連絡しといて欲しい」
「わかった」
そういって手をつないで百合は家路へと向かう。こんなに楽しい日々がくるなんて異世界では想像もしていなかった。いや、想像はしていた。もし、異世界にこないで、こちらの世界で武藤と出会っていたなら……と。手をつないで、デートして、結婚して子供を産んで……そんな妄想がまさか現実に起こり得るとは思っても居なかった。
「ふふっ」
幸せすぎるその時間をかみしめて、百合は思わず笑みがこぼれた。
「どうしたの?」
「なんでもない」
「おねえちゃん?」
「げっ茜」
幸せ過ぎて手をつなぐから腕を組むにランクアップして歩いていると、家の近くで百合の妹である茜と遭遇した。
「お姉ちゃん誰その人? 彼氏?」
「……そうよ。お父さんには内緒にしてね」
「ええええ!? 本当に彼氏なの!? お姉ちゃんが!? 弘くんは!?」
「弘くん? 何か関係あるの?」
「え? だって……弘くんお姉ちゃんと付き合うのは時間の問題で、今でも実質付き合ってるようなものだって……」
「はあ? ありえないんだけど? 私の旦那様は武だけよ」
そういって百合は武藤の腕を強く抱きしめる。
「えっと、妹さん?」
「えっあっはい。妹の茜です。西小六年です!!」
「東中三年の武藤武です。百合の彼氏です。よろしくね」
そういって茜に挨拶すると、その場で百合とも別れ、武藤は一人帰宅する。
「なんかいい人そうだね」
「そうじゃなくていい人よ」
「弘くんよりかっこよかったね」
「世界一かっこいいよ」
「ああ、はいはい。べたぼれなのね」
「武も私に夢中よ?」
「ごちそうさま。それよりなんでお父さんに言っちゃダメなの?」
「絶対煩いでしょ。家に連れて来いとか」
「ああ、確かに。じゃあ今度お父さんいないときに家に呼んでよ」
「考えとく」
姉妹でそんな会話をしつつ、山本姉妹は家に帰っていった。帰宅後、何故連れてこないのかと母親の機嫌が悪くなるも、帰宅の遅い父親抜きの女性三人で百合の彼氏についての話で大盛り上がりであった。特にえっちなことに興味津々な小学生である茜は、百合が一時間に五回もいかされたという話を母に漏らしてしまったことに食いつき、詳しく話そうとしない姉に絡みついて中々離れず大変だったと、その日の夜に電話で聞かされた武藤の唯一口からでた感想が「小学生怖い」であった。
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