第16話 ダンジョン攻略

 クロウ達、1班と教師のセインはメルキラ洞窟の前まで来ている。ここで最終確認を行う。


「まずダンジョン内でのルールは?」


「一人で行動しない、一日で帰れる距離までしか移動しない。」


 クロウが答える。確認したセインはクロウにネックレスを渡す。


「これは救難信号を出す。魔道具だ。もし命の危険を感じたらこのネックレスの意思の部分に魔力を流せ。仮に魔物に破壊されても、救難信号が出て、俺が助けに行く。


 その場でダンジョン攻略は終了だから気をつけろよ、じゃあ行ってこい!」


 そんなことを言われて1班はメルキラ洞窟の攻略を開始する。ダンジョン内はマナが異常に溜まる。そのせいか空間が歪み、外から見た様子よりも中は広い。


 1班の配置は、前衛がクロウとカセ、後衛がセイニャ、そしてその間にシースが配置している。基本的にみんなで戦うのだが、前衛二人が近接で戦い、後衛が魔法を使いとどめを刺したり、強力な攻撃を放つ。前衛が仕留めきれなかった魔物がセイニャを襲おうとしたときに守るのがシースの役目だった。


 この陣形は案外うまくいっていた。時々、シースとカセが位置を変えたりと様々なことをしながらダンジョンを進んでいく。


「いったん休憩しよう」


 ある程度進んだところでクロウが提案をし、一同休憩を取る。ここまではとても順調に進んできた。


「案外たダンジョンも楽だなあ。」


 カセが調子に乗ったように言う。だが実際同じようなことをみんな思っていた。初めてのダンジョンということもあり、学園側もそこを配慮したのだろう。目的としては、強くなるというよりは、ダンジョンに慣れるというところに重きを置いているイメージだった。

 だが今までの経験からクロウは油断しない。腹のすき具合からもおそらく半日は立っただろう。


「いや、ここらへんで戻ろう。」


 クロウは提案するがあまりみんな納得していない。


「まだいけるだろ」


「この調子ならもうちょっと進んでもいいんじゃない?」


「まだまだ余裕はあるんじゃない?」


 意外にもカセやシースだけでなく、セイニャもこのまま進んでいこうという意見だった。クロウ自身もまだまだ進みたいという気持ちはあった。


「ならもう少し進んで見るか。」


 結局1班は進んでいくことに決めた。その途中でも魔物に遭遇したのだが、特に苦戦することもなく、少し広い広場のような所にきた。恐らくここで引き返さなければ一日で帰れない。


「よし帰ろう」


 強くなるための収穫というものはなかった。そのことに対して全員が不満を持っているが、一日という制限があることを理解していた。引き返そうとする。


———ムシャ


 何かを食べている音がした。それに気づいたカセは指をさす。


「おい、アイツも魔物だろ、倒して帰ろうぜ」


(あれはやばい)


 クロウは何となく思う。根拠は何もない、ただの勘。ただ感覚に陥る。


「逃げるぞ、あれはだめだ」


「ビビってんのかよ!」


 そんなことを大声で話す、カセ。あの魔物はこちらを振り向く。いや果たして。アリのような見た目をした二律歩行のそれは立ち上がる。


 そんなアリの目は獲物を見つけたというような目をしている。


「コロ、、、ス」


 その声を聴いた瞬間、悪寒が走る。魔物が話した?


「逃げろ!!」


 クロウは叫んだがもう遅かった。アリは今まで食べていた魔物の骨をクロウ達が進んできた道の上に投げつける。すると破壊された岩が逃げ道を塞ぐ。


 すぐさま魔道具を発動させ、戦闘態勢に入る。


「救難信号は放った。後は生き残るだけだ!戦闘態勢に!」


 ここからクロウ達は、セインが来るまで、ある程度の知能を持った魔物・・・魔族との死闘が開始される。

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