第13話 総合科
寮生活初めての夜、クロウは眠れなかった。明日から本格的な学園生活が始まる。わくわくが止まらないというのが半分、もう半分は周りにいる女子についてだったが。
幸い、お風呂やトイレは全部屋共通の場所がある。食事も学園内に食堂があるのでそちらを使えば問題ない。この部屋で行うのは洗濯くらいだった。まあそれが一番問題ではあるが。
(まずこの学園で覚えるのは選択するための魔法だな。そうすれば変な気を使わなくて済むと思う。)
そんなことを考えながら就寝するのだった。
翌朝、鐘の音で目が覚める。学園内では消灯時間も起床時間も決められており、どちらの時間も鐘がなる。クロウは準備をするとそそくさと部屋を出て、決められた教室に移動する。会話はない。
総合科には総合科専用の棟があり一階が1年生が使うフロアだ。教室に入る。どうやら席は決まっていないらしい。そして始業の時間にも鐘がなる。鐘がなると男性がはいってくる。
真面目そうな人、姿勢が正しく、こちらの身も引き締まる。
「この四年間、このクラスを担当するセインだ。これから軽く一年間のスケジュールや時間割を伝える。」
挨拶をすると同時に軽く会釈をするセイン。そして伝達事項を話していく。
「まず総合科だが一年生の時期は午前中は座学を行う。午後は月、水が体術メイン、火、木は魔術メイン訓練、金、土は魔術、体術を含めた総合的な訓練を行う。日曜は休日だから各々好きなことをして暮らすように、訓練場や図書館は使いたい放題だ。
スケジュールだが順番に言うと7月末にダンジョン攻略を行ってもらう。8月9月は休業、だが課題はあるから提出を忘れるな。
12月にもまたダンジョン攻略を行ってもらう。そして3月に総合テストがある。詳しい説明はまた近くなったら伝えよう。」
ダンジョンとはマナが異常なまでに多く存在する特定の場所を指す。ダンジョン内に生息するのは魔物のみであり、非常に危険な場所。ただ通常の場所とは違いマナの多さから魔法の威力も上がる。一概に人間にとって不利な要素が固まっている場所というわけでもない。
そんなダンジョンを攻略することが2度もあることにクロウは歓喜する。危険であることは変わらないが、強くなれるチャンスでもあるのだから。
「そんでもって今から7月のダンジョン攻略に向けて説明をする。
7月のダンジョン攻略はこのクラス内で決められた班で攻略してもらう。初めての経験だと思うから一日のみ、それ以上ダンジョン内で活動していた場合、救助に入る。
金曜と土曜はその班に分かれて訓練を行てもらう、主に連携だな。リーダーもこちらで決めさせてもらう。」
そう言って、セインは班分けを発表していく。
「まず1班、クロウ、シース、カセ、セイニャ。リーダーはクロウ。」
ああ、どうしてこうもメンバーに恵まれないのだろうか。
「今日はとりあえず施設やこの場所に慣れるため、この後は自由行動だ。軽く班員同士で顔合わせを行ってから教室を出ろ、以上。」
そんなことを言ってセインは教室を去る。言われた通り班で集まるが...
・・・空気が重い。別にクロウが何か悪いことをしたわけではない。それでも試験の事を思い出すと気まずい...
「ええっと、自己紹介!私はセイニャ!体術よりも魔法が得意!得意なのは木の魔法!」
空気を和ませようと先陣を切って自己紹介をしてくれたセイニャ、明るい話し方と同年代にしては低い身長、どことなく妹のクロネを思い出す。ああ、クロネに会いに行きたい。
「リーダーをします!クロウです!得意な魔法は水の魔法です!」
なぜだか敬語。気まずかったり緊張すると敬語になる癖でもついてしまったのかもしれない。そしてリーダーという言葉にカセが反応しクロウを睨む。
やめてくれ、これから班になって仲間になるんだから。
「・・・チッ、カセ」
「・・・シース」
このテンションの落差、カセに至っては舌打ちもする。先ほどまで元気だったセイニャも苦笑いだ。
自己紹介が終わるとカセとシースは教室を出ていく。残ったのはセイニャとクロウだけだった。
「大丈夫かなあ」
「大丈夫!セイニャは僕が守るから!!任せて!」
セイニャとクロネを重ねてクロウは元気よく答える。流石にセイニャも引いているようだった。
「じゃあ!また明日!」
居心地が悪くなり、逃げるように退出するクロウだった。そして翌日の訓練もその次の訓練も班での連携が取れずさんざんな結果に終わったのだった。
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