第7話 大猿
クロウは現在持っている武器の確認をする。あるのは腰のナイフ、そして猟銃を背負っている。狩りに行く際に持つ武器はこの二つだった。あとは縄と水分補給のための水筒がカバンの中に入っているくらいだ。
(猟銃は玉を詰め込む時間がいる。時間はかかるけど威力は一番大きいかな。)
大猿の動く速さはわからないが、今まで見たことをないことを考えると相手は魔物、その上体長2mほどと来た。動く速さは大猿の方が上だろう。
「いいですか、相手がもし自分より強く、周りに自分の事を助けてくれる人がいなければ逃げてください。魔力切れで動けなくなってしまったら命はありません。もしも...」
師であるアメノの言葉を思い出す。もちろん魔法を使えば機動力という面では同格、それ以上にもなる可能性もあるが、できれば使いたくない。仮に魔法の機動力で負けた場合、こちらに勝ち目は完全になくなってしまう。
そして機動力をどうにかしても肝心の決め手にかける。高威力の魔法もあるにはあるが相手に効くかわからない。
(大猿の強さは多分僕より上、油断している今が最大のチャンス。)
大猿の蹴りを防いだ腕がまだ痛む。そして運の良いことに相手は油断している。現に今も手を叩いてにやついているだけだった。勝機はここだった。
クロウは猟銃と玉を取り出してからカバンを横の茂みに投げつける。そしてそのまま森の中に逃げ込む。どこも獣道ではあるがいつもクロウが移動に使う道は少し広い。狭い木々の間を抜ければそう簡単に追いつくことは無い。
最も、大猿がおってくればの話だが...
大猿を確認しながら木々の中を駆け抜ける。幸い大猿はこちらについてきてくれている。走りながら猟銃の発砲準備を行う。
追いかけてくる間も大猿の笑顔は消えない。どうやら自分より弱い人間を追い詰めていることに愉悦を感じているのだろう。そしてクロウは止まり、猟銃を構えている。
(ここが正念場。)
大猿は走って追いかける。恐らく本気では追ってきていないのだろう。
(引き寄せる、まだ、まだ、まだ...今!!!)
その時、大猿の右足が縄の輪に引っかかり体が宙に舞う。クロウが仕掛けていた罠が発動していた。
この罠は設置型の罠だが起動する際は自分の手で縄を引く必要があった。クロウの狩りのスタイルは、魔法で相手を倒す場合、猟銃っで仕留める場合、そして罠を使う場合に分けられる。
罠の横を通る際に魔法で生成した水を縄にしみこませ、大猿の右足が縄の輪の中に入ったと同時に縄を引き上げたのだ。この隙を見逃すクロウではない。
「
すぐ抜けてしまう可能性だってある、魔法で急接近し、大猿の額に1発、打ち込む。
―ガギン
生物に猟銃を打ち込んだとは思えない音が響く。そして大猿にも変化が現れる。先ほどまで茶色だった毛が灰色に変わる。そしてみるみる顔がゆがんでいく。
大猿は怒り出したのだ。大猿は素早く尻尾で縄を切る。魔法を使った以上もう出し惜しみはできない。クロウに残された選択は魔法による撃破のみだった。素早く腕を前に交差させ、大量の水をまとわりつかせる。
大猿はその上から殴りつける。大猿の右拳が大量の水に触れた瞬間から威力を消すように、水が流れを作る。しかしクロウは大きく吹き飛ばされてしまう。
木を一本折り、二本目の木を抉るほどの腕力だった。その衝撃でか、頭から血が流れる。両腕もこの分では折れてしまっていた。
(まだだ、最後の決め手はまだある。)
まだクロウはあきらめてはいない。ここで諦めてしまっては家族に被害が出てしまう。改めてクロウは覚悟を決めたのだった。
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