第4話 覚悟
「あなたがマリアさんですね。お話があります。」
アメノは今まで山の中で起きた出来事を全てマリアに話した。カイはある程度魔法で回復をさせてはいるが、少なくとも1週間は安静にするべきということで、村で治療ができる家のベットで寝ている。
マリアはアメノの話を真剣に聞いて質問をする。
「あのカイは、私の夫の様子はどうなんですか。」
涙をこらえながら問いかける。母親として今辛いクロウの前で泣くわけにはいかない。また夫と息子の命の恩人でもあるアメノに対して失礼なこともできず、カイの元に行きたいことをぐっとこらえている。
「恐らくですが、左腕と足はもう...」
辛い現実を押し付けるのはアメノの良心を傷つける。ただここで安易に嘘をつくのは良くない。自身が思う可能性の話をした。
それを聞いたマリアは俯き、涙を流す。俯いたのはクロウに涙を見せたくなかったから。その場にいたクロウも察したのかマリアをあまり見ないようアメノの顔を見つめている。
「ここでの生活は狩りと農業。大黒柱であるカイさんを失ったのは辛いことでしょう。」
アメノは基本的に優しい人だ。だからこそ厳しい現実を突きつける。そしてその対策案を。
「クロウ君に魔法を教えましょう、そうすれば魔物ではなくとも普通の動物なら簡単に狩れるようになります」
村に行く途中でクロウが教えを乞いたことはアメノにとってもこの家族にとっても必要なことであった。大黒柱を失い、母の手一つでこの家計を回していくことは厳しいそれに...
「失礼ですが妊娠なされていますよね?」
そうマリアは妊娠していた。ここからは余計農業もできなくなる。村人に頼りっぱなしもできない。
「はい...ですが...」
マリアは考えている。仮にクロウが魔法を使え狩りに行けるようになればとても助かる。しかしまだ幼い息子、危ない目には合わせたくない。もし今回のことがまた合ったら...
「母さん、僕、強くなるよ。父さんも母さんも守れるくらいに」
クロウの発言でやっとマリアはクロウの顔を見る。6歳とは思えないくらいに強い瞳。今回の経験はクロウを成長させていた。
「少し考えさせてください。」
ここで決断できるほど冷静なマリアではなかった。とにかくカイとも話がしたい。カイが目覚めるのを待つしかない。
「わかりました。安全のため一カ月はこの村に滞在します。それまで皆さんの協力をしましょう。」
そう言って話は終わる。マリアはそのあとカイの様子を見に走って向かう。クロウとアメノは家に残った。
「あなたは行かなくていいのですが」
「心配です。でも今は魔法について知りたい。」
クロウは決めていた。たとえ親になんと言われようとも魔法を学ぶことを。自分の大切なものを守れるように。
「わかりました。では手を出してください。」
アメノに言われた通り手を出すと、アメノはクロウと手を合わせる。するとクロウはアメノの手から何か温かい不思議なものが流れてくる。
「これが魔力です。あなたはまず魔力を感じること、魔力を操れるようになることを覚えてください。本格的なものはやはりマリアさんたちの意見を聞いてからにしましょう。」
マリアがカイの元にたどり着くとカイは目を覚ましていた。
「あなた...」
「ごめん、でも生きてたわ」
笑顔で言うカイ、それを見たマリアは大量の涙を流しながらカイに抱き着く。しばらくして落ち着いてからクロウについての相談をした。
「たぶんこれから狩りはクロウになると思う。だからクロウの意思を尊重しよう」
「でも...」
「大丈夫、クロウはもう大丈夫だから」
どうやらカイも決めているらしい。後日カイトクロウ、マリアを含めて話をする。クロウの覚悟も硬く、魔法を覚える方針で決まったのだった。
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