第10話
休んだことで先輩も回復したようだったが、既に雅彦とヒカリの姿はどこにもなかった。
いや、イルカショーを見ていた時点で追うのは諦めていたけれども……。
俺の少し先を進む先輩が展示ごとに止まり、追いついたと思ったらまた先へ。
そんなことを繰り返していたら、先輩は俺の方を向かず、展示されている生き物を見ながら独り言ごとのように語り始めた。
「前から君のことはヒカリちゃんから聞いてはいたんだ。それこそ少し前まで毎日のように何かあれば『ハルくん! ハルくん!』ってさ」
アイツ、そんなに毎日なにを喋っていたんだよ。
「それでいて、恋人との初デートなんていう気まずい場所にまで付き合ってくれるような関係なんて、普通はなかなかいないと思うからね」
まぁ、結構無理やり連れてこられて来た感はあるけどな。
「ヒカリちゃんは本当に良い友人に巡り会えてたんだねぇ……。ちょっと嫉妬しちゃうなぁー」
先輩はくるりと振り返り俺の顔を見てにっこりと微笑む。
「それを言ったら平野先輩だって、部活の後輩の初デートに付き合う先輩なんてのもなかなかいないと思いますよ」
「いやぁ、確かにそう言われると否定は出来ないかもなぁー」
平野先輩は歩みを緩やかにし、俺と歩調を合わせてきた。
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