第9話
館内に戻った俺と先輩だったが、やっぱり先輩は熱中症のような症状がでていた。
「俺、スポーツドリンク買ってくるんで、ちょっと座って待っててください!」
「ご、ごめんねぇ……」
急いで自動販売機を探して走り回る。
もう雅彦とヒカリのことは完全に見失っている。
自動販売機を見つけると、急いでスポーツドリンクを買って先輩のところに戻る。
「ありがとぉー。お金はあとで返すからねぇ」
「別にいいですよ、それくらい」
「ダメダメ、こういうのはちゃんとしておかないと」
「……わかりました」
この人もきっとヒカリと同じで引かないタイプだろう。
少し休んでいる間、先輩と何か話そうと思ったが、元々女子と話す機会も少ないうえに初対面の年上の人だ、本当に何を話せばいいのかわからない。
「……えっと、大丈夫ですか?」
「うーん、春昭くんのおかげでだいぶ楽になってきたかな」
「それならよかったです」
「…………」
「…………」
「えっとさ、多分アタシも春昭くんも今同じこと思ってると思うんだけどさ、アタシ達なに話していいかわかんないよねぇー」
ちょっと照れた顔で微笑む。
さっきまで顔を直視できていなかったけど、先輩は笑うと八重歯がチラリと見えることにいま気がついた。
「あ、そうだ、飲み物もだけど、さっきありがとね……。あ、えっと……」
お礼を言おうと思って話しはじめたのかもしれないけど、俺もあの時の光景を思い出してしまった。
咄嗟だったのもあるけど、初対面の女性が倒れそうになったときはどこを掴めばいいんだろうか。
結局、そのままお互いに無言のまま時間が過ぎていった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます