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再び夜の国に足を運んだSは、そのまま真っすぐとある飲食店に入っていった。
「いらっしゃいませ〜」
扉を開くと溢れ出てくる中華の香りにそそられて、貴方なら腹の虫を鳴らすだろう。
店内の端をこっそりと通り、料理を運ぶ店員に手のひらを見せた。それを見た店員は無言のまま奥の部屋へ通るように伝えた。
大きな回転台を乗せた円テーブルの個室へ通され、座りながら
「あぁ 済まないが私はものを受け付けない体でな 水とか料理は大丈夫だから」
そういうと店員はまた無言のまま一礼し静かに出ていった。
しばらくして、被り物をした猫の獣人が入ってきた。
「お待たせしました お久しぶりですね」
それは宿場町の宿で話を聞いた獣人、Kotze Seiyemだった。
「すっかり良くなったようで安心したよ」
「お陰様で お店を再開できたのも貴方のおかげですよ」
向かい側の席につくが、扉はまだ開いたままだ。
「そうそう 紹介したいひとが居るんですよ」
「あぁ 噂は聞いてる」
そこにはパンダの獣人が袖を合わせて立っていた。
「Tosyunと申すヨ オ初にオ目にかかるネ 最強の情報屋サン」
その可愛らしい姿とは裏腹に、貫くように鋭い目線を首に向けられていた。
「王を助けていただいたのデ オ礼に参ったノヨ」
「特に何もしていないが」
あの話はその後、Sの姿は抹消された。
裏世界の住民を快く思わないものも居る。そのため表に出された記事や噂には「新たな王の 勇気ある冒険譚」として広められた。
いつものことだ。もう何も思うまい。
「オ役に立てるならいつでも呼んで欲しいネ」
「王国1の武人に守られてたら さぞかし気の休まる生活が出来るんだろうな」
「全くお互い皮肉ってないで仲良くしたらどうです? おなじ情報で飯食ってるんですから」
Koが呆れた顔で二人を諌めた。
「私が本業だが向こうは兼業だろう」
「両立してル とも言えるネ」
結局火花が収まるのに数分はかかった。
「それで……本題に入りましょうか」
「和国の現状について その他関連情報なんでもいい」
「全く掴めていないわけジャ無いでショ?」
「まあな しかしマスターも居てくれれば心強かったが」
「向こうは和国とも近いですから仕方がありませんよ また今度皆で顔出しに行きましょ」
片や中華料理店の店長、片や王室付きの従者が裏の顔を顕にする。その仕事は夜が明けるまで続いた。
「終了だ」「終わった」「完了ネ」
空が明るくなって来た頃には、テーブルの上はぐちゃぐちゃになっており、床や椅子の上でぐったりする3人がいた。
Sは白んだ空を視界に入れると立ち上がり、さっさと身を整えて扉に手をかけた。
「……もう出発なさるんですか」
「便利なことに睡眠も食事もいらない体なのでな」
「どうあれちゃんと休ませないと どこかで行き倒れても知りませんからね」
「無い肝に命じておくよ」
「無いんなら出来ないでしょうに」
Toはその間ぐっすりと床で寝潰れていた。
「報酬は後で届ける 急を要するのでな じゃあ」
早番で出勤してきた店員に奥の部屋の二人の介抱を任せ、Sは足早にまた国を出ていった。
冷たい夜風の残りが呪いの髪を愛でていく。体温のないその顔を更に冷やして消えてゆく。
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