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「お前ら人間じゃねぇのかよ!?」
寝耳に水の情報に、Sは前のめりになった。
「知らなかったんですね」
「知るも何も 情報全部人間に書き換えられて……」
「Marsのお膝元で働くってことは そういうことッスよ」
空気が一気に重くなる。
「偽装……か」
「国じゃ当たり前ッスよ 女王様に許されたグレーってやつッス」
「私達はほぼ全員 和国出身です」
Hydは神妙な面持ちで、周りに目線を配ってから一息ついて話し始めた。
「和国の成り立ちはご存でしょうけど」
世界の西に位置するその国は、龍人が住み着いた村が成長して出来上がった国である。その詳しい歴史はまた今度皆さんには話そう。
その歴史がある分、職業などは襲名制が多く残っており、兄弟の一番上がそれを受け継ぐのを伝統だという店もある。となると兄弟が居たり双子だったりすると食い扶持に困る子が出てくる。人口が増え続ける分仕方がないことだが、殆どの店が家族経営である国内で働きに出ることも難しい。
そういう子達は国外に出稼ぎに出る子も居るのだ。
宿場町や村、それこそNight王国へも行ける。ただNight王国については世界の反対側、とてもこれから出稼ぎに行くという体ではたどり着くかどうかも定かではない。そんな危ない橋を渡る龍人も少なくないが、Marsへ行く龍人も居る。
「ただその国で働くには法律に引っかかるんですよ」
「働くには国籍を持たなければならない……そして国籍をもらえるのは」
「『人間』だけってこと 角も尾も翼もあったらアウト」
「それで公認偽装と」
「向こうも龍人のパワーってもんが欲しいんスよ いっちばん強いッスからね」
Heがガッツポーズで鼻高々に言った。
「表には出てない極秘事項です 裏世界でも徹底的に潰しているのは流石ですね」
「あのマスターも知らないなら……そうなるな」
Sの目の色が仕事の色をしていた。
「国を人間だけで防衛するのは流石に無理だったんでしょうね 別のルートで雇われるのよ私達は」
「最弱の種族か」
「人間が弱いなんて誰が言ったんスかねぇ 狡猾でしぶといじゃないっすか」
Heは頭の後ろで手を組みながらぼやいた。
「そういうわけで 治療法が存在する和国に今現在近づけないんです」
「和国にすら近づけない?」
「疫病で閉鎖されています それが私達には命取りなんです」
「龍の血にしか伝染しない病 か」
「俺もハーフだからぁ……兄貴があれだと俺もやられちゃうよねぇ……」
Sは立ち上がって
「じゃぁあの国に行けば あの野郎を治療できる手立てが手に入るんだな?」
見下ろして言う。
「確証がありますわ」
「あいつの減らず口がないと反吐が出るほど調子が狂う」
「行ってくる 和国」
「お気をつけて 今国内がどうなっているのか分かったもんじゃないので」
「ついでにツテ回って情報集めてから急いで行く」
その夜、Sはまた草原へ足を踏み出していった。
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