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「いやぁ〜中々奥まった所に住んでるっスね〜」
青と白のキャップの男を先頭に、後ろからかんざしを着けた女と角のような髪型の女がついていっている。靴のまま乗り込もうとする男をかんざしの女が止め、敷居をまたいだ。
「泊まり込みが多いと思ったらそういうことでしたか 通勤大変そうですね」
「これだったらMarsに住めばいいのに……そういう訳にいかないのね……」
「しっかし いつ見ても素敵な内装っス! 憧れちゃうッス〜!」
「あぁ いらっしゃいぃ バタバタしててごめんねぇ」
音を聞きつけてAがリビングから小走りで近づいてくる。
「Aちゃ〜ん! 久しぶりッスね〜!」
男はAをひょいっと持ち上げてぐるぐると回った。
「Helmes兄さんお久しぶりぃ〜」
「降ろしてあげなさいよ 忙しそうでしょ」
「華暮姉さんも Hydoor先生もお久しぶりですぅ」
「本当に久しぶりですね弟くん」
「リーダーの調子 どうッスか?」
HeはAを降ろして眉毛を下げた。
「一日様子見たけどぉ 全然良くなる兆しがなくてぇ……医学書読み漁っても該当するやつ見つからなくててんやわんやだよぉ……」
「弟くんが分からないとなると 相当特殊な病ですね」
Hydが腕を組みながらAの目線までかがんだ。
「助けてぇ先生ぃ 俺の勉強不足で兄貴が死んじゃうよぉ〜」
べしょべしょの顔でHydに抱きついたAの頭を、まだ中学低学年ほどの体でこなすには荷が重いだろうな、と華暮が撫で落ち着かせた。
「そういえば 靴がもう一個あったんスけど あれ誰のッスか?」
「あれはえーっとぉ……親戚ぃ!」
彼の顔に嘘だと思いっきり書いてある。
「今はちょっと顔を合わせたらまずいんだってぇ…隠れててぇ…えへ……えへへ…」
「ふぅん……親戚さんならご挨拶しないとね?」
華暮がにっこり笑っているが
「先輩 その笑顔はこえぇッス」
HeとAは青ざめて一歩下がってしまった。
「(変な輩だったら成敗してくれるわ)」
Aを連れてリビングに入った三人は……その奥のキッチンの棚の隙間で多分隠れている青い毛玉を視界に入れてしまった。時々もぞっとうごめくそれは、知らない人から見れば知らない生物に見えるが
「あれ 隠れてるんスかね?」
「噂から予想できないほど雑な……あの方猫の血でも入ってるんですかね」
「んなわけ無いでしょ 一滴の血もない機械なのよあいつは」
華暮はそのふわふわに近づき手を伸ばす。
毛先一本に触れた瞬間、ふわふわは人に成り代わり、手の隠しナイフが首を狙う。とっさに太ももから差し込んだ小刀で受け止めた衝撃で数秒の沈黙が流れる。
「お姉さんん! 敵じゃないよぉ〜!!」
「真後ろから来られたらびっくりするわぁ!!」
「背を向けてたのはお姉さんッスよぉ」
「久しぶりね賞金首さん?」
「ついでに捕まえに来たのか?」
お互いにナイフを収めながらキッチンから移動する。
「有給取ってお見舞いに来たのよ」
「リーダーが体調不良なんて イワシが降るより珍しいッスからね」
「それよりもA あいつ角生えてたんだがあいつ人間じゃないのか?」
Aがきょとんとした顔でお茶を入れる手を止めた。
「あれぇ お薬はまだ切れてないはずなんだけど……先生ぇ?」
その会話を聞いていたHydが真っ青な顔で、白い上着にお茶を溢してしまっていた。
「薬が切れてないのに角が見えるようになったですって?」
「あぁ 先程様子を見に行ったら頭抱えて唸ってたから何事かと」
彼女は考え込んで下を向いてから、服のシミの元に気がついた。
「先生これタオルぅ 着替えるぅ?」
「大丈夫です それより 私リーダーの病状が理解できてしまったかもしれません」
「ほんとぉ!」
「ただ特効薬はありません 彼の体力が持つことを祈るしかありませが……一つだけ」
「ただしこれは 龍の血を持つ我々では手出しができないんです」
とある一人に視線が集まる。
「……えっ私しか居ないのか」
「ここお姉さん以外全員龍の血入ってるッス」
「Aも?」
「俺も兄貴もハーフだよぉ」
「!?」
お前ら人間じゃないのかよ!?と森にこだました。
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