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 時間を遡り、数時間前。

「えっ あ……閉まっちゃった……」

 扉が閉まった直後、困惑したRはなんとかしてこじ開けようとしたが、溶接されたようにびくともしない。

 裏口に周り、地下への階段を進んでいくと、明かり一つない地下牢にたどり着いた。出口の壁にかけられていたランタンをつけ、あたりを見回す。

 牢屋の奥に唯一人、ポツンと、彼はそこに居た。

「お前 捕まってたのか」

「王子……!よくご無事で しかしなぜここへ!?」

 ガシャンっと男は中から顔を出してRに呼びかけた。

「とりあえず生命があってよかった 鍵…あるわけないか」

 あたりを見回して探し回ったが、諦めた顔で戻ってきたその足で牢屋を蹴った。鈍い音が響く。

「何してるんですか!?」

「いや……蹴破れると思ったんだ……無理だった……」

「でしょうね!? どこでそんな脳筋思考覚えてきたんですか」

「サメを天空に蹴り上げるのを見て……」

「誰ですかそれ!?」

 二人は涙目でクスクスと笑った。

「久しぶりにこんな会話をした」

 Rは涙を拭いながらはっとした顔をして

「あ こんなことしている場合じゃない 一緒に来た方と分断されてしまって」

 瞬間、爆発音と何かが崩れる音が響く。地下牢の天井もパラパラと砂を落とした。

「なんだ今の」

「あの 多分ご一緒の方 接敵してませんかね」

 男は牢屋の奥に引っ込み、二本の細い剣を持って戻ってきた。

「王子 聞いてほしいことがあります」

 男は剣を両手に持ち、Rを真剣な眼差しで見つめていた。


 時間を進め、戻って地上階。

 Sのは食堂を出て、奥へ奥へ進んでいった。他の部屋は導くように鍵がかかっており、進むしかなかった。

 大広間、舞踏会を盛大に開けるようなシャンデリアに青い炎が揺れていた。

 憎悪が一人、待っていた。

 剣先を向け

「呪いの髪が二人もいるなんて驚きだな」

そう吐き捨てた。

「どう言われようが構わんが 人探しの途中なんだ」

「此処から先は通さん」

 目は冷たく、相手の命を軽んじていた。

「先の二人の仇 とらせて貰う!」

 振り上げられた剣は床を割った。衝撃波が炎をいくつか吹き消した。美しかった大広間がどんどんボコボコになっていく。

「フィールド作りでもしてんのか」

「ちょこまかと……!」

 次々と叩き割り、壁さえも砕いたその剣を、引き締まった腕で振り回し続ける。

「よくスーツでそんなに動き回れる……いや、マスターも動き回ってたわ……」

 攻撃をかわしつつ、空中に青い画面を浮かべタップしようとし、それを叩き割られてしまった。

「噂通りだな 賞金首」

「チッ……」

 荒野のようになった地面で、距離を取って見合う。

「出生不明 住処も不明 謎の亜空間からミサイル出すっていうへんてこな噂付きの最高賞金首 そんな奴がどうしてこんな場所に来た?」

「付き添いでな……はぐれちまったが」

「生き残りだと思って出張ってきてみれば 検討違いも良いところだ」

 剣を構え直し、振り上げたその時。

 男の胸で輝いていた 青い宝石の薔薇が背中から何通してひび割れた。背後には二人分の影がマントをはためかせていた。

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