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「……おや 数日ぶりですね」

「この前の話の関連で少し頼りたくてな」

 Sは一歩横にずれ、後ろについてきていたRをマスターに会わせた。Rはペコっと頭を下げ、一緒にマスターも頭を垂れた。

「お初にお目にかかります Night王国 国王様」

 マスターがそう言いながらカウンター席を案内しようと顔をあげると、Rは暗い顔をしていた。

「今はもう」

「んなことはどうでもいい マスター酒と……あー……何飲む?」

 手渡されたメニュー表を見てぽかん、とするRを見かねて「優しめの一つ」と頼んだSなのであった。

「こちら ダイキリ というカクテルでございます」

 グラスを受け取り、水面に映る自分の顔に巻かれた包帯を見つめていた。Sはカミカゼを飲みながら小さくため息をついた。

「マスター 知っていたらでいいんだがこいつの従者の情報とかないか?」

「王族をこいつ呼ばわりって……うーん しかしそう言われましても……」

「そんな都合よく転がってきてる訳無いか」

「私より 向こうの知り合いのほうが詳しいこと知ってるはずです 生き延びているとは思います すばしっこい奴なので」

「同業者に対してはちょっと口悪くなるよなお前は」

「ふふ 昔からの腐れ縁ですから」

 そのとき横でRはちぴっと唇をグラスにあてて飲もうとしたが、初めてのお酒の味にうっと顔をしかめていた。

「……ジュース お出ししましょうか?」

「いや……これ飲む……」

 そしてまた顔をしかめていたのであった。


 SとRは一度森に戻り、夜の草原を歩いていた。

「中華料理屋の猫の獣人か 外見は特徴的なのはわかったから生きてるならすぐ見つかるかもな」

「それなら嬉しいとは思うんだが この格好はなんだ」

 Rの格好は黒髪を隠すようにニット帽を被り、着ていた服はボロボロだったので隠れ家で借りてきたものを着ていた。

『ちゃんと返してよねぇ!』というAの伝言つき。

「そのままで国に帰ったら騒ぎになるだろうが 変装だ変装」

「そういう貴様はそのままじゃないか」

「いやもうどうあがいてもバレるからもう諦めたんだよ……」

「……なんかすまん」

 歩くうちに、小さな宿場町にたどり着いた。普段は多少の旅人で賑わう程度の宿場町が獣人でごった返している。小さな荷物や荷車をそばに置いて地べたに座る家族や、担架で運ばれる獣人が横切っていく。

「さて この中から探し出せればいいのだが あまり時間をかけていられなさそうだ」

 Sは目配せをし、顎でその方向を指した。その先には獣人の群れに紛れて人らしき影が消えていった。

「あれがなんだって言うんだ」

「あまり長くここに留まると面倒なことになる さっさと見つけよう」


「中華料理屋の店長?うーん見てないわねぇ」

「猫の獣人はたくさん居るし……この騒ぎじゃ難しいだろうよお姉さん」

「あ 知ってるわよ この村に一緒に来たわ」

「その方は一体どちらに?」

「逃げ出すときに怪我しちゃって‥‥そこの宿の個室で寝ているはずだわ」

 犬の獣人はそう言って近くの木造の宿を指さした。

 覗くと白い服装の獣人がバタバタと慌ただしく駆け回っていた。ロビーのソファーにも包帯に巻かれたモノや、うめき声を漏らすモノ、静かに泣くモノとそれを慰めるモノ、その光景だけが、内乱の内容を濃く物語った。

 行方不明者の情報提供の活動もあってか、探していた獣人にも早くも会うことが出来た。

「こちらの部屋です」

 看護師はSの顔を見ながら尻尾を隠していた。

「ありがとうございます」

 扉をノックすると「どうぞ〜」と中から声がした。

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