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「これはお前で間違いないな? 」

 Sは青年の寝るベットの横に腰掛け、印刷した新聞の写真を見せた。

 青年は表情こそ変わらないものの、掛ふとんを握る手に一層力がこもった。

「その髪を見間違える訳がないとは思ったが……やはり見比べないと確証は持てんな」

 写真の男の髪は白髪で、両方のこめかみからだけ黒髪が肩辺りまで長く伸びているのが特徴的だ。青年も、短くざっくばらんになっているものの、同じようにこめかみから黒髪が生えている。

「Rubbino Klinod」それが青年の名前だった。

 内乱から逃げ延びてきたこと。目の傷は逃げる際に負ったこと。従者に逃されてこの森へたどり着いたこと。森へ入った直後からここまでの記憶が曖昧なこと。なんとしても戻らないといけないこと。

 このあたりで青年Rは咳き込み始めた。喉の火傷に障ったようだった。

「まだ治ってないからぁ これ以上はだめですぅ」

「そうか すまない」

 Sはベッドから腰を上げ、

「無理をさせたな」

 カーテンの仕切りを出てその場で考え込み始めた。ただ単純に情報を整理する。なにに活用できるのか。この状況を利用するに最適解の方法。相手は国に戻りたい。ただ戻るだけではなく、国を取り戻さないと本人の安全も保証されない。であれば内乱を収めるか、元凶を叩くか。向こうの詳しい状況が知りたいところだが……生憎、そんな都合のいい情報源は…‥。

 ハッとした。カーテンを切るように翻した。

「うわぁ、急にどうしたのぉ」

「お前 王子なんだよな 従者はどうした」

「まだ落ち合えていない どこで落ち合うのか忘れてしまって……」

「生きている確証は? 」

「……ある」

「なら 交渉しないか」


 Rは怪訝そうな顔をする。Sが交渉内容を話している後ろで、Aが回転椅子に座り回りながら眺めていた。

「(そういえばあの男の人ぉ お姉さん見ても怖がったりしなかったなぁ)」

 呪われていると言われる珍しい髪色。暗闇でもぼんやり光る生気のない瞳。物騒な見た目と言うには足りないが、賞金首までかけられたら役満で、情報屋としては向かない身なりなのだ。

「(笑ったりするところは見たことないけどぉ 俺は何故か怖くなないんだよなぁ)」

 なんでだろうなぁ、とAはふんわり上の空なっていたが、奥からのカーテンの閉まる音で戻ってきた。Sが仕切りから出てきていた。 

「一体何を話していたのぉ?」

 問いかけられたSは、ん……と一呼吸置いてから

「仕事の話だ」

 とだけ答えた。

「まぁた教えてくれないのねぇ」

「誰かにバラされたら困るんでな」

 むっと頬を膨らませたAをあしらいながら、Sは医務室を出ていった。廊下から遠ざかる足音が聞こえてくる。

「もうぅ……いいけどぉ、終わったら聞かせてもらうからねぇ! 」

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