第159話 好きなのはどっち?
#愛莉side ────
颯斗が電話に出ない。
体調を崩したって言ってたから様子を聞きたかったのに。
(まだ本調子じゃなくて寝てるのかしらね)
久し振りの地元だから、友達と会ったりしてゆっくりしたいけど、颯斗の事も気になる。
……予定繰り上げて、早めに帰ろうかしら?
それとも子供じゃないんだし、心配し過ぎだって怒るかしらね。
「………」
違う、ホントはただ単純に声が聞きたいだけ。
声を聞いて、私が好きなのは颯斗だって安心したい。
(颯斗……、なんで何も言ってこないの?)
大和さんは私に好意を持ってる事を隠してないし、颯斗も分かってるはずだけど……。
何も言ってこないって事は、気にしてないって事なのかしら。
(バカ颯斗……、なんで電話に出ないのよ)
大和さんから告白された事を相談したかった。
まぁ冷静に考えれば、颯斗に相談するような事でもないんだけど。
「………はぁ……」
嘘、……ホントは話を聞いて欲しい。
聞いて、止めて欲しい。
(でも相談したところで止めてくれる訳ないわよね……)
それとも少しは焦って、私を意識してくれるかしら?
話をした後の颯斗の態度を色々と想像してみるけど、どれもしっくりこない。
(こんな風に話を聞いて欲しい時、誰かに傍にいて欲しい時……、思い浮かべるのは颯斗なのに、いつも傍に来てくれるのも、いてくれるのも大和さんなのよね……)
「はぁーー………」
モヤモヤした気持ちを吐き出すみたいに、深く大きく溜息を吐く。
(こういうのって……タイミングも大事なのよね)
一緒にいたい時、話をしたい時。タイミングが合わない人は、とことん合わない。
そうまた溜息を吐くと、スマホがメッセージの着信を知らせた。
慌てて画面を見るけど、颯斗からの折り返しじゃなくて、地元の友達からだった。
(……飲みに行かないか……か)
……よし!せっかく帰ってきてるんだから、部屋で腐ってても仕方ないわよね。
私はすぐに返事をすると、着替えるために鏡の前に立つ。
「………」
首にくっきりとあった痣はもうなくなってる。
でも今は絞められた跡じゃなくて、代わりに大和さんから付けられた跡が残ってる。
(これがいわゆるキスマーク……)
漫画やドラマの中でしか聞いたことのない単語だったのに、まさか私がキスマークを気にする事になるとはね。
この跡は首筋から胸元に至るまで、あちこち数カ所に残ってる。
今さらながら恥ずかしい。
(とりあえず…、ハイネックでごまかすか)
指先でキスマークに触れてみる。
跡が残ってるって事は、ここに大和さんが吸い付いたって事だ。
ふと大和さんの舌や唇の生々しい感触を思い出して、鏡の前で1人で赤くなってしまう。
(あの夜は雰囲気に飲まれた……!!ありえないわ!!あんな……!男の人に裸を見られたの初めて……!!!え、私の身体ってどこかおかしくなかったかしら?)
慌てて鏡に映る自分の身体をすみずみまで見回す。
日に焼けてるせいで、途中からくっきりと肌の色が変わっていて、改めて見ると変かも……と、恥ずかしくなる。
(でも大和さんは嬉しそうに、この日焼けの境目を撫でてたっけ……)
そう思い出して、同時に背中やお腹や胸を撫で回してた大和さんの大きな手を思い出して悶絶してしまう。
(うぅー…、思い出すな私!!)
頭をブンブンと振るけど、愛おしそうに私を見つめながら、優しく身体に触れてきた大和さんを思い出すと、胸がぎゅうっと痛くなる。
これが恋心なのか何なのか。
それが分からないまま、私は深く息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます