第158話 私の事、好きなようにしていいんだよ?

#みゆりside ────



何が起きてるのか、理解が追い付かない。

この……で、流れるように私を押し倒したのは誰??


私の知ってる真城クンとは思えない。

私の知ってる真城クンはもっと女慣れしてなくて、なんかこぅ……だからこそ可愛くて、からかいたくなると言うか。


(そうだ……、前に一度だけこんな真城クンを見た事が……)


目の奥に情欲を秘めた、いつもとは違う真城クン。

あの時もそうだったケド、この真城クンは少し危険な感じがする。


(どうなってんのぉー?別人みたいなんだけど!!)


今私を押し倒してる真城クンは、明らかにになってる。


私から迫るならまだ分かるけど、私からは何もしてないのに、真城クンから迫ってくるなんてありえなくない?

いや、全然いい!全然良いんだけども!!


(そうよ……コレはチャンスでもある……)


自分で言うのもアレだけど、私は真城クンに会う時、いつでも準備OKな状態だもん。

たとえ今限りの感情で、後から後悔したとしても(もちろん私じゃなくて真城クンがね?)、ヤっちゃえば既成事実にはなる。


私はそっと真城クンの頬に触れた。


「ヤりたくなっちゃった?……いいよぉ?。私の事……真城クンの好きなようにして良いんだよ?」


そう言うと、真城クンは愉しそうに笑う。

……違う、真城クンじゃない気がする。

愉しそうに笑う真城クンの顔がイヤらしい。

真城クンってこんなに性格悪そうに笑うっけ??


(いやいや、だから誰?!ホントに真城クン!?)


いつもならこんな風に言うと、真っ赤な顔で「何言ってんだ痴女!そんなつもりじゃねーよ!」なんて言って私から逃げるんだけど。


今回は逃げる様子はないし、どっちかっていうとヤる気満々?


こんな危険な雰囲気の真城クンもカッコ良いけど………、なんか調子が狂う。

いつもみたいにこっちから迫る方が、私の性に合ってる感じするし。


(この妙な違和感は何だろ?)


目の前にいるのは確かに真城クンなのに、何故か真城クンじゃない人と一緒にいるみたいな感じがする。

まさかの真城クン双子説?とか思うけど、そんなの聞いた事ないもんねぇ。


いつもの素直じゃなさそうに笑う顔とか、照れた顔じゃない。

この獲物を前にした肉食獣みたいな顔で笑ってるのは、なんか知らない人な気がする。


(そんなはずないんだけどぉ……、ソックリさん使ったドッキリとか?……いや、こんなイケメンそうそういないでしょ)


手慣れた流れ作業みたいに、真城クンの手が無駄なく私の服を脱がしてく。


(……いいのかなぁ?このままヤっちゃって)


胸の中……いや、頭の奥で何かが警告してる気がする。

勘というか何というか??


これは……は……、私のじゃないって言うか……。


そう何かが警告するのに、色欲のこもった目で私を見下ろすのは間違いなく真城クンで……。


(…ぁ、ヤバ……)


真城クンの指先が的確に、感度のいいトコロをなぞってく。

……絶ッ対真城クンじゃない!

あの女嫌いが、こんなに女の子の身体を熟知してるわけない!


女の子の感度や気持ちを、少しずつ高めてくみたいな触り方、真城クンに出来るわけない……!


そんな違和感が頭の中をグルグルしてるのに、身体中を這い回る手や舌に、真城クンから与えられる快感以外は何も考えられなくなる。


……与えられる快感だけに集中して、追いかけていたくなる。


(……ん?)


そのくせ、私を押し倒すと同時に床に放り投げた真城クンのスマホが、着信を知らせる音はしっかり聞こえた。


ついスマホの方を見ると、スマホ画面には愛莉さんの名前が表示されている。

一瞬だけドキリするけど、太ももの内側を這う真城クンの舌に溺れて、私は見なかった事にして強く目を閉じた。


(もういい……、考えるのやめよう)


真城クンの手がゆっくりとテーブルの上のリモコンに伸びて、部屋の電気が消される。


もう時間が時間なだけに、電気を消すと部屋は真っ暗。

この後ベッドへ行くかとも思ったけど、行かなかった。


ムードも何もあったもんじゃない、リビングのソファの上。

2人分の体重できしむスプリングの音を聞きながら、何故か私はの真城クンじゃない、真城クンの顔を思い出してた。

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