第34話 水着でポロリはお約束?

とりあえず一時休戦して外に出ると、颯斗と大和も水着を着てる。


…って言うか、二人とも着痩せするんだ。

水着で上半身が裸になると、颯斗も大和も、適度な筋肉がついた引き締まった良い身体つきをしてる。


「ハハハ!皆んな似合うな!早速だが、女の子二人はフロアで接客。大和は俺の手伝い、それから颯斗君は料理も出来るらしいから、キッチンの手伝いを頼む」


…そうか、颯斗はキッチン…。

一緒に楽しく仕事できるかと思ってたけど、あまり関わらなそうね。



#颯斗side ────



やっぱり想像通りの忙しさだった。

どんなに急いで作っても、次々とオーダーが入ってくる。


(クソ…!何だこの忙しさ…。どいつもこいつも、海なんぞで浮かれやがって)


アホみてぇな暑さの中、ひたすら火の前で料理する身にもなってみろ。


フロアを見ると、愛莉ばかり動き回っていて、みゆりが全く仕事していない。

ナンパ目的の野郎共と、長話してる姿に舌を鳴らす。


(あのバカが…、仕事しやがれ)


何か注文を受けたのか、ヒラヒラ野郎共に手を振ったみゆりは、こっちに来て面倒そうにオーダーを入れて来た。


「かき氷のイチゴ味、2つお願いしまぁーす」


「…おいみゆり、かき氷くらい自分で作れるだろ、キッチンこっちは手一杯なんだ」


「えー、かき氷の機械ってどれぇ?」


カウンターの上に、たゆん。と牛みたいな乳を乗せながら、みゆりはダルそうな声を出す。


「カウンター内にあんだろ!目の前だ!…クソ、おい愛莉!かき氷頼む!」


やる気のなさそうなみゆりにイラついて、愛莉に声を掛けると、みゆりは「分かった!やるわよ!」と唇を尖らせる。


…どうやら愛莉に対抗心があるみたいだな。

これは利用出来そうだ。


それからは、何を頼むにも愛莉を呼ぶと、みゆりが返事をするようになった。


(ククク…、俺の手のひらの上で踊らされおって…)


こいつには、いつも面倒な思いをさせられてる。

少しくらいはこき使っても、バチは当たらんだろう。


さっきまでとは打って変わって、忙しく動き回るみゆりの後ろ姿を見てほくそ笑む。


(ん…?)


みゆりの際どい水着姿に、客の男たちの視線が集まっている。


動くたびに揺れる爆乳ばくにゅうと、下チチや下ケツがハミ出るくらいに面積の少ない水着だからな。

…仕方がないと言ったらそれまでなんだが。


(あのバカが…、バイトに来てるって、分かってやがんのか?)


オーダーの焼きそばを作りながら見ていると、みゆりの背後をずっとウロついている男がいるのに気付く。


(なんだ?あの野郎…)


オーダーか?

いや、だったら頼めば済む事で、みゆりの背後をつけ回す必要はない。

なんか嫌な予感がする。


みゆりの水着は、上下ともヒモで結んであるタイプの水着だ。

あんなの少しヒモを引っ張られれば、あっという間にポロリだぞ。


(あー、クソ。俺もたいがい心配性だよなぁ…)


ボリボリと頭を掻いて、みゆりを手招きする。


「おい、みゆり」


警戒心ゼロで、ケツ振りながら歩くみゆりを、いったん裏に下げようと声をかけると、みゆりが素直に立ち止まる。


「え?なにー?」


そう言って、みゆりが俺の方を見た瞬間。

みゆりの背後にいた男の手が、みゆりの水着のヒモに伸びた。


(…しまっ…)


呼び止めるんじゃなかった。


俺は慌てて受付カウンターを飛び越えると、気付いていないみゆりの腕を、力一杯に引いた。


すると、みゆりの水着のブラだけが男の手に残り、みゆりは俺の胸の中に倒れ込んでくる。


上半身が裸になったみゆりを腕の中に隠しながら、変態野郎から水着を取り返そうとすると、フロアが騒がしくなった。


カウンター近くに座っていたカップルが、一部始終を見ていたからだ。


「誰かー!この人、店員の女の子の水着を取ったわよ!」


「警備員を呼べ!!」


店内は一気に騒然となり、気のいい男たちが変態野郎を取り押さえてくれる。


腕の中で茫然自失になってたみゆりは、やっと状況が飲み込めたらしく、顔を真っ赤にしてうずくまる。


愛莉が慌ててみゆりの背中にパーカーをかけると、二人はスタッフルームへ引っ込んで行った。


(客が警備員呼んでくれたみてーだし、とりあえず一安心か…)


その後、無事に変態野郎を警備員に引き渡し、俺はまたキッチンに戻った。


なんて事はない、海ではあんなバカが増えるもんだ。

日常茶飯事なんだろう。

店もまた元通り、混み始める。


すると大和が店の奥から姿を見せた。

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