第10話 幼馴染登場。
その連絡が来たのは、夕方自宅に戻った直後だった。
(…?誰だ?)
マンションの入り口でロックを外してロビーに入った瞬間に電話が鳴ったのだ。
スマホをポケットから取り出して着信を確認する。
「…
愛莉といえば、同じ歳の俺の幼馴染だ。
隣に住んでいて、ガキの頃はよく遊んだが、中学に入ってからは、急にツンツンし出して遊ぶ事がなくなった。
連絡先は一応知ってはいたが、親戚の葬式や、年末年始などで田舎に帰る時しか会う事もなかった。
ただ、田舎というのは噂が広まるのが早い。
高校卒業後は進学も就職もせずに、アルバイトをしていると聞いている。
…何の用なんだ?
「もしもし?」
「颯斗?」
「…何だよ、どうした?」
少し声が緊張してるみたいだ。
「…何だ?何かあったのか?」
愛莉は今でも地元に住んでいる。
実家や親戚に何かあったのか?
だがそういう不幸の連絡なら、まずは親父かお袋あたりから連絡が来るだろうし、…違うか。
「おーい、どうした愛莉」
「…あのね、私今…◯◯駅にいるんだけど…、その…」
「何だよ、はっきり言え」
「…た…助けて欲しいの」
♢♢♢♢♢♢
「………却下」
「えぇー!どうしてよ!」
急に助けてなんて言うから何事かと思ったぜ。
駅まで迎えに行って、ちゃんと話を聞いてみれば、家出して東京まで来たから、一緒にこのマンションに住ませてくれ。って話だった。
「当たり前だろ、田舎に帰れっつーの。なんで俺がお前の面倒見なきゃならねーんだよ。帰れ帰れ」
「お願い!私漫画家になりたいの!」
「…はぁ?」
「中学の頃から漫画を描いてきて、色々な賞に応募したけどダメだった…。でも諦めたくないの!それなのにお父さんとお母さんが…」
「諦めて就職しろってか?当たり前だ」
「諦めたくないんだってば!」
「仕事しながらでも漫画は描けるだろ?」
「…ぅ…」
「どう考えても、お前をここに住まわせるメリットが、俺にはねぇ。とっとと帰れ」
「メ…メリットならあるよ!」
「…ほぉ?例えば」
ワガママ放題で、可愛がられて甘やかされてきたお前に、一体何が出来るのかと、白い目でみると。
「家事得意!」
「そうか、家でおじさん達の手伝いでもしてやれ」
問題外だ。
呆れて物も言えん。
「嫌だってば!ねぇ、ここに置いてくれたら、食事も掃除も何でもやる」
「あのなぁ…、だったら一人暮らしでもすれば良いだろ」
「お金がかかるじゃん。ねぇ颯斗…私、漫画を描きながら家事するから…」
ちらりと見ると、色じかけのつもりなのか。
胸元の大きく開いた服で前のめりになって、俺に谷間を見せ付けるようにして近寄って来る。
「……」
よくもこんなガキみたいな身体つきで、色じかけなんて思い付くもんだ。
と言うか、色じかけ自体が全く無意味なんだが、とりあえず今夜はここに泊まらせないと、放り出したら何するか分からん。
下手に出会い系なんぞで、泊まらせてくれる人を探されても困る。
俺は深ぁーく溜め息を吐くと、スマホを取り出した。
「とりあえず今夜は泊まっていい。おじさんには連絡するぞ?」
「…ありがとう!颯斗はお父さん達の信頼あついから、きっと許してもらえる!」
何とか迎えに来させようと思っていたが、おじさんもおばさんも電話に出ない。
「…あー、安心したらお腹すいちゃったぁー。冷蔵庫開けて良い?あ、その前にシャワー浴びたーい。バスルームどこ?…あっち?」
「おい!そっちは俺の寝室…」
「うわー、けっこう綺麗にしてるね!あ!ダブルベットじゃん!颯斗のくせに生意気ー」
「勝手に入るな、俺は寝相が悪いから、シングルだと落ちるんだよ」
…ん?
ベッドと言えば、ここには来客用の寝具なんてねぇぞ。
どうするつもりなんだ、アイツ。
♢♢♢♢♢♢
取り敢えずの10話。
絶対に登場させたかった幼馴染キャラが出せました。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます♪
面白い、これからも読もうと思って下さる方がいれば
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