羽宮さんが、笑顔になったら告白する。

あまみや

#1 真逆の2人

僕は笑顔が好きだ。

常に笑っていたいし皆にも笑っていて欲しい。

けれど…


隣の席の「羽宮さん」だけは、笑ってくれない。ぴくっとなることもくすっとなることもないのだ。

所謂“ポーカーフェイス”というやつなのだろうか。僕には分からない。無表情になることがあまりにもなさすぎて分からない…

ポーカーフェイスで近寄り難い人のはずなのに友達は多い。放課、隣の席に居るはずの羽宮さんが見えない程人で埋まっている。


「いーなー…。」と羨ましく思えてしまう程に…。



「次移動教室だよいろはー!」


「……そうだっけ?なら早くしないと…。」



偶に友達から

「羽宮とはどうなんだよー??」と聞かれるが僕は恋愛には興味ない…いやあるかも……あはは…。

でもだとしても相手は羽宮さんじゃない…と思う。

自分でも分かんないから


あくまでも、隣の席の…ただのクラスメイトだから。






▽羽宮いろは side


隣の席の「咲原さきはら さく」っていう人、とても笑ってるな。…私は笑ったことがないから笑うってどんな感じなんだろうって思う日々。


でも、何故か私には友達がいる。……笑ってない人なんて、ただの薄気味悪い人…としか思ってないと思ってた。けどそれは違ったんだね。


……でも笑ってみたいな。


私はそう思いながら廊下を歩いた。


「いろはー?」


「あ…、ん?どうしたの?」


「昨日のいせこれ見たー?」

※“いせこれ”は架空のアニメ“異世界これくしょん”の略である


「……うん。面白かったよ。」


いせこれ、スキル、アイテムを全て集めるっていう異世界系のアニメ…それがなんかシュールで好き。

…面白い。


私の友達…の「奏音かのんさん」と「帆乃ほのさん」が勧めてきたアニメなんだけど、

とても面白くて原作も買ってしまった…。


でも笑わないから、お母さんに

「無理して読まなくていいからね」と

心配されている。………面白くて読んでいるのに。


「あ、あの…。」


後ろに振り返ると、咲原さんが居た。

おそらく咲原さんが話しかけてきたのだろう。


「どうしたの?」


「これ、羽宮さんのですよね…?羽宮いろはって書いてありますし…。」


咲原さんの手に持っていたのはキーホルダーだった。

幼い頃に作った、世界に1つだけのキーホルダー…

そして、そのキーホルダーには当時好きだったゲームのキャラクターと私の名前が刻まれていた。


「あ、ありがと…咲原さん…。」


咲原さんの手に触れた瞬間、私の心臓がどくんっとなった。

……何故か分からないけど、ドキッとしたのだろう。


即座にキーホルダーを受け取り、逃げてしまった。


……おそらく、顔は赤くなっているのだろう…。凄く、顔が熱い。


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