第4話 練習場

バトル練習場に着き受付に向かう。


「MNB練習場へようこそ!まずは簡単な説明をさせていただきます。」

受付スタッフが続ける。


「まず、対戦する二人はこちらの青と赤、二つの扉から別々にフィールドに入っていただきます。」

受付のすぐ脇に二つの扉が1メートルほど離れて並んでいる。


「扉の中に入ったら速やかに準備してベットに横になってください。横になると名前を聞かれますのでお答えいただき、その後身体データを取得させていただきます。互いの準備が整い次第、同時にシミュレーションの世界にワープします。」

受付スタッフはイメージ映像をモニターに映しながら説明を続ける。


「ステージに関してですが、ワープ後にどちらかの目の前に液晶が出てきますので、そこで選択していただきます。どちらに出てくるのかはランダムになっておりますので、もし練習したいステージがありましたら事前にお互いで話し合っておいていただくとスムーズです。」

ナルはうなずきながら説明を聞いている。


「最後に、どちらかが戦闘にて致命傷を負うと現実世界に戻されます。その他に相手選手が戻った場合や心で《戻りたい》《戻して》と強くお願いした場合に『本当にもどりますか?』と声が聞こえますので『はい』と返答していただけたら帰還できます。以上で説明は終わりますが何か質問はありますか?」


シュウサが手を挙げながら質問する。

「はいはいはい!質問なんだけど、今使えるステージって何個あんの?」


「質問ありがとうございます。現在使えるステージは42個となっております。なお、ステージに特にご希望がない場合は、ランダムをご選択ください。」


「OK!じゃさっそくやろうぜ」

「じゃ俺が最初に相手してやる」

シュウサの意気込みにアキが続く。


アキは赤い扉、シュウサは青い扉に向かい、それぞれが部屋に入る。


ナルとシンは両扉の間上にある大きなモニターを見ている。

「シンは練習場やったことある?」

「うん」

「そうなんだ!なんかすごいね!」


ワクワク感が表情から湧き出ているナル。



シュウサは部屋に入るとテーブルにリュックを置き、さっそくベットに寝ころぶ。


 《サクッと終わらせちゃおっと!》


「お名前をお願いします」

機械音で女性が話しかける。


「シュウサ」

「シュウサ様ですね。それでは準備の間お待ちください」


10秒後、周りが真っ暗になり、5歩前方に青く光る扉が現れる。

シュウサは淡々と扉に向かって歩いていき、ドアを開ける。


「キャー!」

「待ってたぞー!」

多くの歓声が聞こえる。


「なんだ闘技場か」

中央のアリーナを取り囲むように観客席が放射線状に丸く配置されている。

いわゆる円形闘技場タイプのステージだ。


高さ3メートルの石壁で囲われたアリーナの中央まで歩いて行くシュウサ。

一万人ほどの観客席はびっしりと埋まっている。


向かいのドアからアキが出てくる。


お互い中央に歩みを進め、向かい合う。

「それでは試合を始めます。準備はいいですか?」

二人の間に立っている審判が両者に問いかける。


「オッケー!!」

楽しそうに答えるシュウサ。


「大丈夫だ」

気合の入っているアキ。


「それでは始めます。メイクニューバトーーール」


――カーン!

鐘の音と同時に両者は素早い動きで大きく2歩下がり、間合いをあける。



モニターからは実況が流れている。


「さぁ始まりました。ステージは闘技場。シュウサ対アキの試合です。まずは両者間合いを取りけん制しております。」


モニターを見上げながらナルがシンに聞く


「これって誰が実況してんの?」

「AI。観客も審判も」


「ここでアキが動きます。自身の周囲3メートルに液体のような物を撒き散らし地面に円を描きました。

一方のシュウサもアキの動きに構うことなく仕掛けます。自身の背面に波紋のような光の壁を作り出し、それを蹴って高速でアキへ向かっていきます。

おぉっと!アキの周りの水が氷の壁に変わりました!氷の前でストップするシュウサ。

今度は地面に波紋を作り高く飛び上がり、上から固そうなブーメランのような物を投げて攻撃です。

アキは盾を作り上部からの攻撃を防ぎます。

が!しかし、ブーメランはアキではなく周りの氷を壊して手元に戻っていきます。

素晴らしい攻防戦。再度両者間合いを取ります。」



モニター前には多くの人が集まってきている。

「あのシュウサって子、子供なのに凄いな」

「あんな技見たことないよ」


シンが小さな声で言う

「シュウサ凄い。この世にないものを作り出すのは本当に困難だから」



「やるじゃんおっさん」


ヘッドフォンのようなものを耳に装着しながら言い返すアキ。

「だれがおっさんだ」


ラッパとスピーカーが一体化した様な装置をアキが作り出し胸元に抱えると

シュウサは慌てて耳を押さえる。


 《やばい。電気?いや電波か?時間かけてらんない。やるしかないな》


同時にその装置から音響攻撃が発せられる。


シュウサは耳を塞いだまま瞬時に波紋の壁を再度作り出し、

青に光るその壁を強く蹴って高速でアキの元へたどり着く。


自身の耳を塞いでいた手を一瞬放し、アキの頭を両手で挟みこむように広げた。

「あぁぁぁぁあ!!!!!!」

シュウサは耳への強い攻撃に大声を上げつつも、


――ドーンッ!!!!!


アキの頭に向けて両掌から爆発を起こし、アキは消えた。


「痛ってぇ~」

シュウサの耳からは血が少し流れていた。


「勝者 シュウサーーーーー!」

観客が立ち上がり大歓声と拍手をおくる



「くそ~」

悔しそうなアキが赤い扉から出てくる。


もう一方の扉から出てくるシュウサ。

「おっさんまたやろうぜ!」

「おう」


モニターを見てた観客から拍手が送られる。

「プロの試合みたいだったな」

「何歳だよあの子」


「俺疲れたから先ホテルいくわ。人の試合見るの苦手だし」

シュウサは出口に向かい歩く。


「俺も悔しいから帰るわ」

アキも続いて歩いていく。


「う~ん。どうする?」

とシンに聞くナル。


「……」

無言のまま周りの観客を見渡すシン。


 《私初めてだし、ちょっとやってみたかったんだけどなぁ~》



「今日は私たちも帰ろっか」


「うん」


2人も後を追いかけていく。

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