第3話 大都市エルム

門をくぐるとそこは多くの人であふれ、

はるか見上げるほどに高いビルがそびえ立っている。


眼前に広がる景色に圧倒され、

ナルは首を真上まで上げたまま立ち止まる。


 《こんな高い建物どうやって作ったんだろ?》


「おい!早く行くぞ」

振り向きざまにシュウサがナルに声をかける。


「うん」

ナルはまた足早に歩き出す。


「まずはエントリーだな。こっちだ!ついてきな」

アキはスマートフォンで地図を調べながら進んでいく。


シュウサとアキが歩いている後ろをついていくナル。

様々な飲食店、雑貨屋、屋台……


ナルは生まれて初めて見るそのすべてに目を奪われてゆく。



アキが立ち止まり、手元の端末を二度見する。

「ここが受付会場か」


3人は建物を見上げた。



「こちら受付です」

長いカウンターには10人の受付スタッフが立っている。


「それではこちらの記入をお願いいたします」

用紙を渡される3人。


そこには名前、出身地、年齢の記載欄、

そして注意書として

・当施設内で起きた事故に関しては一切の責任を負わない

・出場資格は出場時点で12歳以上であること

・アクシデント等によりドクターがストップをかけた場合は失格と同じ扱いとなる

・施設内には一切の危険物、武器の持ち込みを禁止する


との記載があり、署名欄にそれぞれサインをおこなった。


用紙を受付に渡すと番号のついたゼッケンが手渡された。

アキが79番、シュウサ80番、ナル81番。


「それではテストは明日の朝からになりますので、

本日はこの建物の横にある、ユトホテルにてゆっくりお休みください」


3人は部屋のカギを渡される。


「おなか空いたからご飯食べに行こうぜ」

シュウサが言うと

「俺がごちそうしてやる」

とアキ。

「いいねー!何食べる?」

シュウサがナルに聞くと

「ナルはいいや!お弁当あるし」

「じゃあさぁ!フードコート行こうぜ!色んなもの食べたいし」

シュウサが提案する。


話を聞いていたアキは

「この近くに確かあったな!」

スマートフォンで調べながら

「おれが案内するぜ」


アキを先頭に3人は歩き出す。



そこには10軒のお店がの字に並んでいて、

中央にテーブルと椅子が多く置かれている。


お店のラインナップはステーキに中華、ラーメンなど様々なジャンルが揃う。


「俺ステーキとラーメンとお寿司にしよおっと」

「おいおい。そんなに食べるのかよ」

アキが焦って財布の中を確認する。

「じゃナルが席とっとくね」


ナルは一人、席を探し歩くが、

ほとんどの席が家族連れやカップル、学生などによって埋まっている。


端の方に四人席を一人で使っている客を見つけるナル。

席にはゼッケン22番と荷物が置かれていた。


 《この人もテスト生かな?ここしか空いてないしなぁ》


近寄っていき声をかける。

「君もテスト受けるの?」


ナルが話しかけると不愛想に小さい声で

「そうだけど」

と冷たく答える少年。


「3人なんだけど一緒に座っていい?私たちもテスト受けるんだ」

「別に・・・」

「ありがとう!名前は?」

「シン」

「シンはテスト初めて?」

「2回目」

「そーなんだ!!!」


シンは前髪で隠れた目でナルの方を1度見るも、

基本は下を向いている。


ナルがリュックから弁当を取り出し席に広げる。

そこには卵サンド3つにゆで卵3個が入っている。


シュウサとアキがトレーに大量の料理を乗せて席に向かってくる。


「ナルー!お待た!」

「ここの席しか空いてなかった。この子もテスト参加者なんだって!」

「へぇ~そうなんだ。てか腹減ったから食べようぜ」


テーブルにはラーメン、ハンバーガー、ステーキ、お寿司、餃子、パスタが並ぶ。

「お前ホントにこんなに食べれんのかよ」

アキがシュウサに言う。


「余裕余裕。ナルの卵サンドうまそうだな。1個くんない」

「いいよ。ママが作ったんだ」

卵サンドを二口で頬張るシュウサ。


「んまいぉ」

"うまい"をほおばりながら伝える。


「ところでさ、君一人なの?」

食べながらシュウサがシンに話しかける。


「うん」

下を向いたまま答えるシン。


するとナルが

「みんな自己紹介しようよ!」

「いいねいいね」

シュウサも続く。


「まずは私からね。私はナル!12歳になったばっかりで生まれも育ちもナマシナ。5歳の時に世界一になるって決めてから毎日練習してるの。はい次アキね!」

「俺は18歳でバンシュ出身。どうしてもお金が欲しくてこのテストで一攫千金を狙ってるって感じだな。次は坊主だ」

口に入ってるのを必死に飲み込み、

「俺はシュウサ。サンガ出身。4家の一つのアイランド家で生まれて今は12歳。まぁ一人っ子で過保護に育てられるのがうざくて今ここにいるんだよね。最後君ね」


「……。」


沈黙が少しあり、小さい声で話し出す

「シン。……16歳。生まれは……。」


「……。」


またの沈黙にアキが気をきかせて口を開く。

「まぁ自己紹介はこれで終わって、俺らバトラーならこの後MNBの練習ゲームで戦おうぜ。それが1番の自己紹介になるだろ」


「いいね」

ワクワクした笑顔のシュウサ。


建物を出た4人はお腹が膨れ笑顔で歩いている。

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