第2話 出会い

右後ろから急に手を引かれ、座席に座らされるナル。


「席ここだよ!迷ったの?」

青のTシャツに白の短パンを穿いた男の子に急に声を掛けられる。

ナルがその子の方を向くと、

男の子はこっそりと舌を出し、変な顔をした後立ち上がる。


「この子は僕の友達なんだけど、なんか文句ある?」


「友達?こんな汚い奴が友達なわけないだろ?」

イヤミったらしく、小太りの中年男が半笑いで言う。


男の子はおもむろに足元にあるリュックからゴールドに光るカードを取り出し、

中年男に見せつける。


「おじさんどこの人?」

そのカードを見た中年男は驚いた表情を見せ、舌打ちしながら席に戻っていく。


男の子は窓際の席に再度腰かけると、

「はぁ~。で、どこまで行くの?」

と問いかけてくる。


「エルム!エルムでMNBのプロテスト受けに」


「マジ?名前は?」


「ナルだよ」


「俺はシュウサ!俺もテスト受けんだよね。電車は初めて?」


「うん。村から出るのも初めてなんだ」


 《こいつ俺と同い年ぐらいだよな?》


「何歳?」


「12歳」


「俺と同じじゃん!」


「それよりさぁ~、さっきのゴールドのカードってあれなに?」


「あっ、これ?」

ナルにカードを渡すとナルは色んな角度からカードを眺める。


「俺の家族一応金持ちでさぁ!このカード見せればみんな黙り込むんだぜ」


「え~そうなんだ!こんなカード初めて見た!」


「そりゃそうだよ!この国ではこのカードがあれば何でもできるからね」


「次はエルム、エルムです。お忘れ物のないようお気おつけください」


シュウサは席を立ち、

「さあ降りよう」


ナルも慌てて立ち上がる。



電車から降りると

そこには遠くの景色が見えないほどタワーが立ち並んでいた。


「はぁ~疲れた。」

シュウサが背伸びをしながら言っている横で、左右をゆっくり見渡しているナル。


「ほら行くぞ!」

ナルの手を引き、人ごみの中を早歩きで歩いていく。



駅の改札を出るとそこは大きな塀で囲われている。

入り口には多くの門番がいてチケットの確認を素早く行っていた。


大きな門番に歩み寄るスタイルの良い男。


「チケット落としたんだよ。入れてくれ。たのむよ」


「チケットがない?邪魔だ!どっかいけ」


「ホントに落としただけなんだよ」


「うるさい」


強い力で突き飛ばす門番。


 《なにやってんだろ 大丈夫かな?》


そう思い駆け寄るナル。


「どうしたの?」


「来る途中にチケット落としちまってよ。これがテスト受ける最後のチャンスだってのにホントついてないよな俺」


「なんで最後なの?」


「いろいろあんだよ!」


シュウサが近づいてくる。

「なる!早く行くぞ?」


「この人もテスト受けるんだって!でも今年で最後なのにチケット落としちゃったみたいで」


「そんなバカほっとけよ!行くぞ」


「誰がバカだって?」

立ち上がりシュウサの胸ぐらに掴みかかろうとするも、片手で払われる。


「弱そうだし出ても意味ねぇよ」


「はぁ?なんだと!!!!!」


「ちょっと待って!」


ナルが二人の間に入る。

悩んだ表情で何かを考えた後、ナルはポケットからチケットを取り出す。


「お兄さん!これ使って」

満面の笑みでチケットを差し出すナル。


「はぁ~お前なに言ってんの?なんでこんなバカに?」

あきれた様子のシュウサ。


「来年もあるしお兄さんが使って!」


一瞬悩んだ表情を見せた男も冷静になり、

「いや悪い!これは受け取れねぇ。ありがとなお嬢さん。後、坊主も悪かったな」


「なんでぇ?使っていいよ?」


「お前みたいな奴に出会えただけでここに来てよかったと思ったよ」


シュウサが自分の髪の毛を両手でグシャグシャにしながら

「あぁ~もっ!!!わかったよ!オジサンもついてきて!」


と門番のところに歩き出す。


「門番さん。このおじさん友達なんだけど一緒に入っていいだろ?」

門番にゴールドカードを出すシュウサ。


「通りな」

周りの門番の目を気にしながら3人を通してくれる。


「お前もしかして4家のものなのか?」

驚きながらシュウサに聞く男。


「そうだけど?おじさん感謝するならこいつにしろよ」

ナルの方を指をさす。


「ホントに助かったよ。ありがとう」


「お兄さん名前は?」


「俺か?俺はアキだ」

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