初めての客(4)完

 ゴジラの怒りは、どうしたら収まるのか。


 私の身体は、ヘビに睨まれたカエルの様に固まり、被汗をかきながら顔から血の気が引いていくのを感じていた。


 そんな、哀れなカエルが次に口にしたのは


「す、すみません。未熟な物を出してしまって。」

「お、お代は、けっこうです」


 これしか無いな。


 カエルは、最後の攻撃として『お代は、けっこうです』を放った。


 これで、なんとかゴジラと化した背伸び女から、避難しようとした。


 甘かった。


 彼女は、ますますエスカレートしていった。


「なによ、私がいちゃもん付けてるみたいじゃない!」

「それにねー、あなたさっき私のスマホを覗いたでしょう。」


「いえ、覗いてません」


「じゃ、なんでインスタにアップしてるって分かったのよ!」


 あれだけ、カシャカシャ写真を撮って、その後スマホイジってたら、インスタかと思うでしょ。とは、言えない!

 絶対に言えない!

 言ってはいけない!


「なんとなく、そんな感じがしたので」


 と、言葉を選びながら怯えるカエルが言うと。


「お代は、けっこうですって、早く帰れ!」

「出て行けってこと!」


「あ。いや、そうではなく・・・」


 と、言ったところで


「良いわ、そんなに言うなら帰ってあげるわよ!」

「お代はいらないのよね!」


 そう、言い放つとゴジラは去って行った。


 なんだよ、結局金払わないのかよ。


 でも、帰ってくれて助かった。生きた心地がしなかった。


 今日はこれで店を閉めよう。



 でも、ゴジラと化した背伸び女の攻撃はこれでは終わっていなかった。


 店を閉めた後、インスタで『不・純喫茶〜幻』を検索すると。これ以上無いというくらい、店の悪口が書かれていた。


 ただ、救いだったのは、インスタで彼女のフォロワーが少なかったこと。しかも、ある時から、急にフォロワー数が増えていて、その割に『いいね』が極端に少ない。

 明らかに、フォロワー数を買ったインスタだった。


 そういえば、誰かを見返してやりたいとか言ってたなぁ。それはフォロワーを買うところまで深刻だったのか。


 ちょっと、彼女が可愛そうになった。


 いかん。いかん。

 相手はゴジラだ。気を許してはいかん。




 結局、初日『不・純喫茶〜幻』赤字。



 さてさて、明日はどうなるかなぁ~



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