初めての客(2)
「どぉも〜」
それはもう、こっちまで気持ちが明るくなるような声で三十代前半の色黒な男が、大きな荷物持って入って来た。
コーヒー器具専門店の人だった。
「ここに設置して良いですか」
「あ、うん。 そこにお願いします」
男は、コーヒーメーカーをカウンターの端に設置し、真っ白な歯を光らせた。
「これで、カフェラテを美味しく淹れれますよ」
「いや、エスプレッソじゃ無くてもカフェラテは美味しく淹れれますよ」
と、私は少しむかついて男の言葉に被せて言った。コーヒー器具専門店の人間なのにエスプレッソマシンが無いと美味しいカフェラテを淹れれ無いとでも思っているのか。いや、器具を売りたいからそういうふうな考え方になったのか。
カフェラテの淹れ方講座を開くつもりはない。ただ、今ここでエスプレッソマシンを使わないカフェラテを飲んだ客が居るのだ。
その客が、男の「これで、カフェラテを美味しく淹れれますよ」に反応したら、どうするんだよ。この客は、けっこう取り扱い注意なんだ。
すると、私の心配は的中した。
「あれっ!」
「このカフェラテ、エスプレッソじゃ無いの!」
背伸び女は、色黒男の発言を聞き逃してなかった。
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