第17話 Prince of the sea ②

数年前、某国のプリンセスが婚約を発表した時、国民は諸手を挙げて喜んだらしい。


某国の王族は男性しか王位を継承できないという決まりがある。

それゆえ、王族のプリンセスは結婚と同時に王家から離脱するのだが、離脱したとはいえ王族出身という品位を保つために、家柄も収入もきちんとした、いわゆる貴族階級の男性と見合い結婚するイメージがあった。



しかし今回は、爽やかな見た目に柔らかい物腰、さらに一流大学院に通うという一見すると申し分ない人物ではあったが、母子家庭で苦労して勉学に励むという部分がクローズアップされると、甘やかされたおぼっちゃまじゃなく、しっかりした男性を選んだと…

『さすが新しい時代のプリンセスだ』と皆が称えていたのだが、1本の告発でガラッと風向きが変わってしまった。

そこからはドンドンドンドン、彼の悪事が表沙汰になって行った。



当然プリンセスとの婚約は流れると思いきや、プリンセスの思いは更に強固になって行く。


私が彼を守らなきゃとでも思ったのか…

まぁ色恋なんてのは反対されればされるほど、燃え上がるのは世の常で……



王族だけでなく、全ての国民の反対を押し切って2人は強引に結婚して、うるさい母国を離れ自由の国・米国へと渡って行った。



おとぎ話ならここで、めでたしめでたしとなるんだろうが、リアルな世界じゃそうは行かない。


それでも、まだ男が学生の内は姫をたてて暮らしていたから良かったらしい。

ところが金もコネも使って、難関試験をパスしてからは、それなりの収入を得た男と姫の立場は逆転したのだ。



正直プリンセスとして、かしづかれて生きてきた姫にとって、当たりのキツくなった男に少し嫌気はさしてきていた。

更にやたらと口を挟む姑にも……



とはいえ、あれだけ国民にもタンカを切ってしまった以上、今更戻れないってのが本音かも知れない。

離婚して母国に戻る事もままならない状況に、プリンセスの両親である、王や王妃も途方に暮れていた。



俺は過去のプリンセスたちの結婚事情についてひたすら調べる事にした。なにか作戦を成功させる糸口を見つけるために……



基本的に身体検査をきちんとしてるせいか、プリンセスたちの離婚率は低い。

だからといって、みんながみんな夫婦円満って訳じゃない。


離婚したとて実家に帰れる訳じゃない。

確かにそれなりの家柄に嫁いでいるのだから、離婚したとしても実家に頼る必要もないのだが、仮面夫婦という選択をするプリンセスも意外に多いのだろう



しかし今回の依頼は単にプリンセスを離婚させるだけではない。


依頼にあたっての条件は3つ

・ケンカを売った形になった国民を納得させる形で離婚する事。

・あくまでもプリンセスは悲劇のヒロインでなくてはならない。

・そんな姫が可哀想だから再婚するまで王の手元に置けること。



そんな時、この条件にピッタリ当てはまる1つのレアケースがあった事を俺は見つけた。

ニヤリと笑って、朝まで俺の上で腰を振っていた彼女を見つめた。

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