第16話 Prince of the sea
過去話をを脳内再生してる間に、どうやら眠っていたようだ。
さっきまで俺と眠っていた女が、沸かしてくれたコーヒーの香りで目が覚めた。
『うん、美味い!』
それほど味覚が鋭敏ではないが、安いドリップのコーヒーではあったが、丁寧に入れたかどうかぐらいは分かる。
ハーフタレントとはいえキャバ嬢のバイト。
生活はかなりキツイのは、身につけてる物で何となく想像はつく。
とはいえ、キチンとした家庭で育てられたんだろうなってのは分かる。
さりげなく彼女の出自を聞いてみた。
商社マンである父が、海外赴任時に知り合い結婚した、アメリカ人の母との間に生まれた彼女は、そこそこ裕福な暮らしではあったが厳しい躾に嫌気がさしたらしい。
もちろん理由はそれだけではなく、1番の理由は、小さな芸能事務所からのスカウトを受けた事だ。
当然ながら両親からの反対にあったものの、アイドルになる夢を捨てきれなかった彼女は、家出同然で東京に来たらしい。
まぁ生活費からオーディションの交通費なんかを賄うために、足を踏み入れた水の世界だけど、本人いわく『接客業って性にあってる』って事らしい。
『じゃあ今もアイドルになるために頑張ってるの?』
その問いに彼女は大きく首を振った。
本人いわく、もうアイドルになるにはとうが立ってるし、とはいえ激戦区のハーフタレントの中で勝ち抜くだけのトーク力もないし…
やるだけの事はやったから、もう芸能界に未練は無いと言う。
いつか海外に住んで、カフェをしながら観光客相手のガイドをするのが夢だと言った。
『日本だといまだにこの顔だと〚あ、外人だ〛って言われちゃうでしょ?』そう言って目を伏せた。
彼女の言葉でハッと閃いた。
今回のターゲットへの罠の張り方…
今までのやり方ではなくて、今回は正攻法でいかせて貰おう。
それだけでも十分な、破壊力はあるハズだからな。
俺は彼女の肩を抱くと、スマホに映し出された1枚の画像を見せながら、今回の依頼についてゆっくりと語りかけた。
今から数年前、某国のプリンセスがとある男に出会った。
彼にほのかな恋心を抱いていたプリンセスに、彼が気持ちを打ち明けたら、姫が恋に落ちるまでは一瞬だ。
彼との婚約を発表した時は、国中がお祝いムード一色に染まった。
人目を引くルックスに柔らかな物腰、申し分ない学歴と、弁護士を目指して法律事務所勤務というのも、当時は決してマイナス要素ではなかった。
それが1本の告発記事から、プリンセスの夫に相応しい男から、単なるドブネズミへと世間の評価は180度変わっていった。
当然、この婚約自体が無効になるものと、信じて疑わなかった国民だったが姫は頑なに男を信じ込んだ。
立場上、まともに恋愛もしてこなかったんだろう…反対されればされるほど、恋って燃あがるもんだよなぁ。
男をアラジン、自分をジャスミンに置き換えた痛い姫君。
まだ、君のアラジンがジャファーとは知らないプリンセスに現実を突きつけてあげよう。君を慈しんでいる国民の為にも…
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