第14話 躓き…バイプレイヤー【D】②

この時、俺は軽く考えていた。

今まで俺の台本で失敗した事は無かった。



実際に訴えられた側のタレントたちは、なんとか不起訴に持ち込もうと、はらわた煮えくり返る思いを押し殺して多額の慰謝料を支払い示談に持ち込んできた。



もちろん当初は奴自身も金で解決を計った節はある。だが女側が俳優の提示した500万って金額に難色を示したらしい。

元々エステとは名ばかりの風俗なんて事は、みんな分かっている。

ハッキリ言って、500万の金が貰えるなら御の字だろう。

しかし奴の事件の前に、俺が仕掛けた案件が女の欲をふくらませてしまった。

そう…あの人気タレントが女子高生にキスをしたって話だ。

女からしたら若いってだけでキスが数千万なのに、身体まで提供して500万って舐めんなよって気分だったんだろう。



示談に応じない自称・被害者にだんだんと腹を立てたターゲットは徹底抗戦の構えを見せ始めた。

キスとは違い強姦となれば重罪だ。

ましてや本人的には知られたくなかったであろう出自まで、晒されてしまった事が怒りに拍車をかけた。


風の噂では一応保釈はされたらしいが…

まだ裁判で争ってるらしく最高裁までもつれるのではと言われているとか…


女もここまで来たら、引き下がれやしないだろうし、あの時欲をかいたのを後悔してるんだろうな。


まぁ、被害者と加害者がいくら揉めようが、もう既に目的を達成出来てるので、俺はさっさと全ての証拠を隠滅し、住処を後にした。

約束の金もちゃんと手に入れたしな。



だが今回の1件で、いわゆる考察系を名乗る奴らが、【D】は嵌められたのではないか?などと言っているらしい。


その程度のYouTuberだか配信者だか知らねーけど、そんな奴らに見抜かれる様なヘマはしていないつもりだ。



とはいえ君子危うきに近寄らずだ。

当初予定していたターゲットに見切りをつけた俺は、依頼者に連絡する。

もちろん予定していた刺客にも。


依頼者には今回

『この案件は降ろさせてもらう。とはいえ、1度引き受けた以上はターゲットを抹殺する事は出来なくても、多少のダメージぐらいは無償でやらせて頂きます』と伝えた。やはりこの商売、信頼と実績が大切だからな。



そして予定していた刺客にも連絡した。

『前に話した夢物語は、君の度胸を試しただけだから。実際に頭が余程回るヤツじゃないと難しいよね』と……



前に会った時よりかなりハイクラスな持ち物を増やした女。

金を貰うつもりで買い揃えたんだろう。

だから君には是非とも頑張って貰わなくちゃね。俺のスケープゴートになるために……

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