第13話 躓き…バイプレイヤー【D】
たった3年間で、億に近い金を手にした俺だったけど…それでもこんな商売が長くは続くとは思っちゃいない。
儲かるからと粘るから、みんなしくじるってのが俺の持論なんだよね。
だから少しでも小さな石につまずいたら、転んでケガする前に撤退する。
まぁそれでも、結果オーライだったってケースもあったんだが……
役者の世界にあって2枚目・3枚目・仇役ってのは立ち位置がハッキリしてるけど、いわゆるバイプレイヤーって定義がハッキリしてない俳優が、最近は注目浴びてるってのは知ってるかい。
つまりイケメンでもないし、必ずしも重要な役どころじゃないけど、なんとなく場が締まるっていう雰囲気がある俳優が使われることが多いんだけど……
そんなバイプレイヤーが注目を浴びて、主演を演じたりなんて事も最近は多い。
特に昨今のSNSの普及で〚普段は苦虫を噛み潰したよう役どころを演じている〛俳優が〚SNSでは気さくなあんちゃん〛を出す事から、本人に来るオファーも、ヤクザ者からランチに命がけみたいなサラリーマン役を演じたりなんて事もあったりする訳だ。
もちろん実力が伴わなきゃダメだろうけど、顔にこだわりがない分、ある意味実力があれば誰にでもチャンスはあるわけで……
逆に誰かを蹴落として、その場に自社の俳優をつかせたい事務所も沢山ある。
今回はターゲットとキャラが被る俳優を売り出したい事務所からの依頼だった。
俺はいつもの様にターゲットの出演したバラエティや、SNSまでしらみ潰しに目を通した。
俳優だけど、素顔の俺はちょっとエッチな気のいい男をアピールしたいのだろう。
彼のSNSは、風俗店で遊んだ話が面白おかしく書かれている。
いわゆるイケメン俳優では無いとしても、さすがに店内での遊びではなぁ…と思った矢先に彼のSNSに面白い投稿を見つけた。
『自宅で受けるメンエス最高!』と……
ターゲットの利用するメンエス、つまりメンズエステってのはすぐに判明した。
女性が一般的に利用する、美肌や痩身のためのエステの施術を男性にも!ってのが本来のメンズエステだが、それを自宅で女性のエステティシャンが行うってだけで男なら普通に妄想するだろw
ましてやエステティシャン一覧の、写真の顔を1部を手の甲で隠してる時点でお察しだ。
利用規約として〚当店はマッサージを主とした派遣型エステサロンであり、わいせつ行為は固く禁じております〛なんて書類にサインさせられるものの、そんなのは絵に描いた餅だ。
とはいえ、その絵に描いた餅は店側にとっては中々美味い餅らしい。
早い話が店は風俗営業許可を取らずに営業できるし、仮に当局からの捜査が入ってもあくまで自由恋愛で通せるって寸法だ。
女は女で、客が気に入らなければ、それを盾に手だけでフィニッシュさせたらいい。
ま、本番を期待してエステ嬢を呼んだ客には可哀想だがな。
とりあえず風俗ライター時代からの手駒リストから、ターゲットの好みそうな女を選んで送り込んでおいた。
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