第11話 好印象タレント【C】③

とにかくチャンスは限りなく少ない。

その少ないチャンスを、最大限に活かせる人材が必要だ。

幸いなことにターゲットはまだ入院中だ。

この間に下準備を進めておこう。


ひたすらターゲットに関する情報を追う。

そんな時にターゲットの仲間が、バラエティ番組で発した発言見つけてニヤリと笑った。


とかくタレントってのは話を盛りがちだ。

ウケを狙って言ったその言葉が、自分の大切な仲間や、自分の人生すらも変えちゃうんだからな…口は災いの元ってその通りだな。



その発言を元にストーリーを組み立てる。

そして刺客として送り込むのに、ピッタリの人材も見つかった。



なぁ、みんな健康診断とか受ける時に結果を気にして、数日摂生してから受信した経験はないかい?

そして受診した帰り道に、ココぞとばかりに背脂マシマシラーメン食べたり……



なんで急にこんな話をしてるかって?

人間はなかなか自分を律するなんて、できやしないのさ。

そんな人間の甘さを今回は、トコトン使わせて貰う事にした。



退院前のターゲットのスケジュールは、病院から現場に向かう。

1日の仕事をこなす。

病院に戻るってパターンだ。



だいたいどのテレビ局でも、楽屋には弁当が用意されている。

それを写メって病院に送る。

それを見た病院側が、病院に戻った後の食事のカロリーや、バランスを考えて一日の総カロリーを減らすって感じらしい。

そのカロリー減らすって制限の中には、当然だけど禁酒は含まれてるわけで……



退院したその日の仕事はオフ。

部屋でのんびり呑みながら、それでもワーカホリックなその男は、自分が入院していた間の出演番組でもチェックしている事だろう。



そんな気持ちも緩んだ時に、共演者からのLINEがあったらついつい返信しちゃうだろ?



程よく酔いが回って、気持ちよくなってる奴を自分の思うように誘導するなんて赤子の手をひねるより簡単だ。




あとは俺の台本通りに、彼女たちが動けばいいだけ。

そう今回の刺客は2人。

もちろん、1人では警戒する相手を油断させる目的と、前回のように実際に性行為がある訳じゃないから、証人ってのもいるからな。



俺の台本を知りたいかい?


退院して酒を呑んで気分よくなってる頃に番組共演者からきた連絡。

警戒心を解くために共演者2人で訪問する旨を告げ油断させる。

日頃から学生相手に、教師にでもなったかの様に調子に乗ってる奴をよいしょして、しこたま呑ませてしまう事だ。ヤマタノオロチの時代から、酒に呑まれたら終わりだぜ。


酔いつぶれて眠ったのを確認したら、あとは親を呼んで警察へGOだ。


その時に注意する事は、決して事務所には事が公になるまで話さないこと。

事務所同士が手打ちしたら台無しだからな。そのあたりは親にもきちんと言い含めておかせなきゃな。


そして刺客から上手くいったとの報告をもらった俺は、当日にそいつが呑んでいたのと同じ焼酎で、軽く祝杯をあげることにした。

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