第2話 side 良太の母親 (真奈) 8/15更新
なんであんなこと言ってしまったんだろう…
半年前
私はいつも通り家事をしていると、リビングから電話の音が鳴る。
誰からだろうと思い、番号を見てみると学校からだったので電話を手に取る。
「はい、もしもし。」
『もしもし、県立桜野高校の2年A組担任の前田と申します。』
「橋本です。いつも息子がお世話になっております。」
「すみません。今回の話は親御様に学校に来てもらいたいのですが、お時間よろしいでしょうか?」
「はい、分かりました。今からそちらに伺いますので、失礼します。」
私は色々考えてみたが、何故呼ばれるのかよく分からなかったが、あえず学校に向かうことにした。
学校に着いて、良太の担任の先生に連れられてカウンセリングルームに入ると、良太と校長先生がいた。
良太の様子はいつもよりおかしく、顔が青白くなっている。
「わざわざ御足労いただきありがとうございます。今回呼んでまで話させていただきたかったのは、……」
私はその話を聞いて、ショックを受けてしまった。
簡潔に言うと、良太が女子生徒の体操着を盗んだこと。
本当なら退学処分にする予定だったが、成績が良かったこと、部活動を真面目に取り組んでいたこと、ボランティア活動も度々参加していたことから、1ヶ月の停学処分になったこと。
「本当に申し訳ありませんでした!」
私はその話を聞いてすぐに謝罪をしたが、良太がそんなことするとは思っていなかったので悲しさや、怒り、絶望という負の感情が沢山溢れてきた。
私は心を負の感情に支配されてそれ以降の話は入ってこなかった。
帰って来て、たまたま全員帰ってきていたので、全員呼んで、さっき聞いた事を彩音と旦那に話す。
良太は自分がしていないことを主張していたが、信じていない私たちを見て疲れてきたのかだんだん喋らなくなっていった。
話しているうちに中に留めていた感情が溢れ出してしまった。
「良太がそんなことするやつだったなんて…、そんなことするならあんたなんか産むんじゃなかった!」
「お前をそんな風に育てた覚えはない!そんなやつ俺たちの家族じゃない!」
「あんたってそんなやつだったんだ…」
私が感情を爆発させてしまったせいか、みんなが感情を表に出してしまった。
「良太、あんたは1回部屋に戻ってなさい!」
私は語気を強めて良太を強制的に部屋にもどし、家族会議を行うことになった。
盗まれてしまった女子生徒、その家族への対応や、これからのことなど、色々話すことになった。
「このことを近所や世間に知られると、俺が働いてる仕事とかもなくなって肩身が狭くなってしまうぞ……。」
女子生徒らへの対応の仕方を話し終わったあと、夫がこんなことを言ってきた。
「確かに、そうですけど……。」
「そこでひとつ考えがあるんだが…、こんなのでどうだ?」
その中の一つで、良太のことになった時、2人は旦那と彩音が特に一人暮らしさせようとしてそのまま押し切られて、しかも生活費は家賃、水道などのお金しか渡さないということだそうだ。
「さ、流石にそればどうなんですか…」
「そんなこと言ってると、犯罪を犯したヤツなんて反省しないんだぞ!」
「……」
私は何も言うことができず、押し切られる感じでその案が採用されるのであった……。
そして今、現在、良太に冤罪をかけた男子生徒とその両親が今、自宅の玄関にいる。
良太はもう走ってどこかへ行ってしまった。
「今更そんなこと言われても、家族までぐちゃぐちゃになったんですよ!どうしてくれるんですか!もう帰ってください!」
感情に任せて発してしまっていた言葉は、男子生徒とその両親にはとても辛かったみたいで、頭を下げてすぐに出ていった。
「良太、本当にごめんなさい、信じてあげられなくてごめんなさい。」
旦那と彩音は顔を青白くさせて椅子に座って、私はそう呟いて泣き崩れた。
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