第22話:冒険者ギルドにて、暴走娘
第22話:冒険者ギルドにて、暴走娘
「3人ともお待たせ」
「にゃー(マタタビなのー)」
「キュッ!(マタタビ!)」
ユキさんとおもちくんが、あたしを見て飛びついてきた。
あはは、可愛い子たちめうりうり♪
『こんにちはなのだ、マタタビ。 今日は料理する日なのだ?』
「ナビさんこんにちは♪ そうだね、まずはギルドで昨日の素材を売って、それから市場で材料見て回ろうかなって」
『わかったのだ、どんな料理を作るのか楽しみなのだ♪』
「あはは、あんまり期待しないでね」
そのまま2人を撫でながら冒険者ギルドに向かって歩き出した。
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:こんちはー
:今日も癒やし配信始まったねー
:ユキさんとおもちくん可愛いなー
:はー開幕モフモフ助かる
:こんにちはん♪ マタタビちゃん♪
:今日も癒やされに来ました! 押忍!
:もっとリラックスしろよ……
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「こんにちは」
「ようこそ冒険者ギルドへ」
ギルドに入ってまっすぐ受付に向かう。
目の前には、前に受付をしてくれた受付嬢さんが座ってる。
とっても綺麗な女性で、できる女! って感じで憧れるなー。
「えっと、草原の素材を持ってきたので買い取りお願いします!」
「かしこまりました、お売りいただける物を出していただいてよろしいでしょうか?」
「はい! えっとホーンラビットの角と、グラススネークの牙に抜け殻です」
「お肉や皮は取れませんでしたか?」
「お肉は料理に使いたくて、皮は装備にしようかと思ってます!」
「なるほど、かしこまりました。 もし余りましたら是非お持ちください」
「わかりました!」
「ふふふ♪ では計算しますので、お座りになってお待ち下さい」
「はい!」
ふーちょっと緊張した。
胸のあたりをポンポン叩きながら、入り口近くにあるソファに腰掛ける。
みんなも膝や肩、頭の上に乗ってリラックスモードに突入する。
モフモフ……モフモフ……。
…………
……
「マタタビさん! 買い取りでお待ちのマタタビさん!」
「あ、はい!」
あぶないあぶない、モフモフ天国に旅立ってたよ。
慌てて立ち上がって受付に向かう。
「計算が終わりました、こちらが買い取り金額になります」
「はい、ありがとうございます!」
「……あの、もしよろしければ、冒険者登録なさいませんか?」
「冒険者登録ですか?」
「そうです、冒険者にしか受けられない依頼というのがありまして、もしよろしければいかがかなと……」
「うーん、冒険者か……」
『冒険者は力のある大地人がなるものなのだ。 旅人は何にも縛られず自由に旅をする民、たしかに依頼は魅力的だが他にメリットはないのだ。 冒険者にはランクがあって、上がれば上がるほど強制依頼だとかで拘束力が上がるのだ』
「うぐっ! で、でしたら私が専属受付嬢になります! どうでしょうか!」
『マタタビは旅人なのだ、この街を出たらその意味もなくなるのだ……』
「ん~~っ! ででででしたら従者としてお供してお助けしますわ!」
「ちょっ! あんた何言ってんのよ! 受付嬢辞めるつもりなの!?」
とっても混乱した様子の受付嬢さんがとんでもないことを叫んだ。
隣に座っていた別の受付嬢さんが慌てて肩を掴んで問いただしている。
うーん、どうしてこうなった?
「テンパリすぎだから! 一回落ち着きなさい!」
そう言って両頬をパチンと叩くと、正気に戻ったのかな?
肩をビクンと震わせてハッと息を飲んだのが分かった。
「戻った?」
「は、はい……」
「はぁ……奥で水でも飲んで頭冷やしてきなさい」
「はい……」
小さく返事をすると、ふらふらと立ち上がって受付の奥へと消えていった。
大丈夫かな……ちょっと心配だな。
「大変申し訳ありませんでした。 あの子ちょっと混乱しやすいところがあって……私が代わりに説明しますね?」
「あ、はい、お願いします」
「冒険者ギルドは、街中や外で活動する方が登録する場所で、雑用や討伐、調査、素材採集、護衛の仕事を斡旋しています。 力のある冒険者がなるものと仰っていましたが、登録自体は10歳からすることができるので、必ずしも力があるからなるものではないんです。 むしろギルドの存在意義は、そういう方々の死亡率を下げるようサポートをすること、困っている方々を助けることにこそあります」
「なるほど」
「冒険者になるメリットですが、冒険者以外が受けられる依頼には制限がかかっているので、それが撤廃されること。 それから、
「たしかに、情報によっては命がけで手に入れたものも含まれるんですもんね」
「ご理解いただいてありがとうございます。 それから、冒険者ギルドには宿泊所や鍛冶場、調合室など様々な施設が併設されてます。 旅人が使用しているレンタル作業場がいっぱいだった場合でも冒険者であればそれらの施設を無料でご使用いただけるようになってます」
「え、それって大きな街ほど助かるんじゃ?」
『たしかにそうなのだ。 人口密度が上がればレンタル作業場は埋まりやすいのだ』
「最後に、高ランク者に発生する強制依頼ですが、こちらは依頼が発生した街に滞在している該当ランク以上の冒険者には必ず受けていただくことになります。 ただ、発生頻度は高くないですし、そもそも緊急で高ランク者が必要になるのは稀と言えば稀ですしね。 また、高ランク者には活動拠点を提供したり、貴族からの依頼が優先的に回されるというメリットもあります。 貴族からの依頼は通常の依頼よりも高額なので、実入りはかなり良いです」
「うーん、さっきの説明が紙1枚以下だったのはよーくわかったよ……」
『ははは、であるな。 どちらにしても決めるのはマタタビなのだ。 我らはマタタビについていくだけなのだ。 ただ、活動拠点は街から街へ旅をするマタタビにはあまり必要とは思えないのだ』
「そうだね、うーん……」
「ちなみになんですが、【冒険者は大地人がなるもの】というのは間違いなんですよ? そんなルールはどこにも記載されていませんし、冒険者をやりながら旅をした旅人、というのも本として残っています。 子供を寝かせる時に聞かせるお話にもあるくらいなので、全然おかしなことではないので、覚えておいてもらえると嬉しいです」
「知らなかったです! へー、うーん……わかりました、冒険者登録します!」
「ありがとうございます! では今からギルドカードを作りますので、こちらの用紙に記入をお願いします♪」
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:どれもこれも超重要情報じゃねぇか
:絶対今まで誰も知らなかっただろ
:なれるのか聞こうともしなかったよ……僕は攻略組失格だな
:冒険者は大地人がって誰が言い始めたんだ?
:マジかよ、俺も冒険者やってみたかったんだよ!
:異世界みたいなものだし、冒険者って1つの夢だよな
:あらん、あたいも冒険者にならなきゃん♪
:カマちゃん、一緒にパーティ組もう! 冒険の旅だ!
:うおー! 一気に世界が広がった気分だ! 押忍!
:1階より上って何があるんだろうって思ってたけど、施設が入ってたのか
:そりゃ建物もデカくもなるよな
:ギルマスはどこに居るんだ? 地下か?
:ギルマス室が地下はウケるwww
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それから数分後、ニコニコ笑顔でカードを渡された。
はえーとカードを掲げて見ていたら、ふつふつと実感が沸いてくるのであった。
<称号:【始まりの冒険者】を獲得>
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「はぁ……」
「落ち着いた?」
頭をコツンと叩かれて声をかけられる。
「いてっ……うん、もう大丈夫」
「まったく、あんたは入った頃から治らないのね。 パニッキングっていうんだっけ?」
「うん、産まれた時から付いてる状態異常だね……教会でも治せなくてさ」
「統括も分かってて採用したんだし、しょうがないとは思うけどさ、あれはちょっと酷かったよ?」
笑いをこらえるように言うものだから、ちょっとイラッとした。
「好きでこんなんなわけじゃないし……」
「ごめんごめん」
眉をハの時にして手を合わせる友人にため息が漏れそうになった時、コンコンと音がした。
「クリィミストさん、大丈夫ですか?」
「統括! 先程は申し訳ありませんでした!」
「いいのよ、大丈夫。 あなたはしっかり仕事ができますから、プラスかマイナスかでいえばプラスだと思っているから安心してください」
「あ、ありがとうございます」
まさかそんな風に思ってくれているだなんて知らなかった。
ちょっと嬉しくて頬がほんのり熱くなった。
「それで、マタタビ様のことなんですが……」
「は、はい……」
「あなたに専属受付嬢になっていただきます」
「え……えっ!」
「ギルドマスターからのお達しではなく、私からの指名になります。 あなたのこれまでの仕事を見込んでの指名です。 また多くの旅人が訪れるようになった中、旅人として初めての登録者、しっかりと職務を全うするよう頑張ってください」
「は、は、は、はい! がががが頑張ります!」
まさかまさかまさか!
えええええええええええええええええええええええええ!
嬉しい! きゃーーーーー! 嬉しすぎる!
「あ、あの統括? 旅人として初めての登録者、というのは……?」
「カスタディアさん? ええ、言葉のままですよ? これまでの歴史上で初めての登録者がマタタビ様になります……どうかしましたか? 顔が青いですよ?」
私が専属? 本当に! きゃーーーー!
「そ、その、物語に出てくるのって史実なんじゃ……」
「ああ、あれは創作と言われています。 実際には旅人と冒険者が共に旅をしていたらしいのですが、どこかで混ざってしまったんでしょうね、旅人が冒険者をしていたという内容になったようですよ。 王都の王立図書館に原本が残っているのを読んだので間違いないです」
どうしよう! 次会う時どんな顔して会えばいいの?
とにかく笑顔の練習しないと! いい気分で冒険してもらわなきゃ!
「あ、あはは……マタタビさんに、過去に居たっていっ言っちゃいました……」
「…………まあ仕方ないでしょう、知らなければそう言ってしまうのも分かりますから。 訂正も必要ないです、世間一般で脈々とそう語られている以上、間違いというわけでもないですから。 事実を知った後でどう思われるかは分かりませんが」
それよりも周辺情報ちゃんと覚えなきゃ!
どんな情報でも即座に伝えられるようにしないと! 滾ってきたー!
「あ、あは、あはははは……」
「クリィミストさん、よろしくお願いしますね? 2人共早めに受付に戻るように、やるべきことはまだありますからね」
「はっ! はい! 頑張ります! ひゃっほー♪」
「あははは……はーい……」
☆--☆--☆
・好感度
受付嬢 クリィミスト 特大上昇
受付嬢 カスタディア 小上昇
受付嬢統括 ベリィローズ 中上昇
☆--☆--☆
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「暁色の旅路」
旅人の青年と冒険者の少女が世界各地を旅していた。
旅人はサポートが得意で魔法を主に使用し、料理や建築、治療などで人々を助けた。
冒険者は力が強く、身の丈を超える剣で数々の邪悪な敵を倒した。
全ての国を周り、襲い来る邪悪を打倒し、世界に真の平和が訪れる。
後に二人は結婚をし、当時栄花を極めた国王から領地を賜り幸せに暮らした。
それからその地は国が興り、二人は初代国王、初代王妃となる。
国の名前は【プロロギア】、時を経て城は移り、当時の空気をそのままに街だけが残った。
遙かなる時が流れ、人々が語り継ぐ内容に変化が起こった。
旅人と冒険者は一人の人物となり、なんでも熟す凄腕の旅人冒険者と語られるように。
形を変え、人々の記憶から薄れてしまった【二人の冒険物語】。
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