第17話:ナイフ入手、チェシャールの詫び

 第17話:ナイフ入手、チェシャールの詫び


「みなさんこんにちは! 今日も配信始めまーす!」


「にゃー!(やるなのー!)」


『おーなのだ!』



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 :やったー!

 :こんにちはー!

 :配信ひゃっほー!

 :マタタビちゃんこんにちは!

 :初見です、わこつー

 :小5です! こんにちわ!



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「まずは、昨日早めに切り上げちゃってごめんなさい! クエストだったとは言え、なんだか気持ちが追いつかなくて……今はもう大丈夫なので、また頑張っていきますね!」


「にゃー? にゃごにゃん(だいじょぶなのー? なでなでしていいなの)」


『大人でもビックリする内容だったのだ、心臓に悪いのだ』


「猫聖女の専用クエストで、なった直後に発生してたんです。 でもチェシャール様の変わりようにビックリしちゃって、クエストのアナウンスが目に入ってなかったんですよ……全部が終わってリザルトが出てから気が付いた感じで、本当にビックリしました」


 ……ということにしておいた。

 ナビさんに伝えてなかったんだけど、運営さんから既に聞いてたのか話を合わせてくれた。

 もしかしたら昨日のログアウトの後に伝えてくれてたのかな?



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 :なるほど、たしかにアレは大人でもすごくビックリするよ

 :クエストでよかった!

 :本当にナビさん消されるのかと思った、クエストでよかったー

 :俺ならアワアワして解決できたかわからないな……

 :マタタビちゃんの家族への思いがあったからこそだよ

 :また三人の旅が見られるなら嬉しいわん♪

 :昨日なにかあったんですか?

 :実は昨日な……



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 視聴者さんが初見さんたちに向けて説明をしてくれる。

 それを読んで納得したのか、すごいすごいと褒めてくれて、顔が熱くなった。


「そそそそれじゃあ! ……どうしよっか? 正直昨日のが衝撃的すぎて何も決めてないんだよね……」


『武器と防具を揃えて街の外に出てみるのがいいのだ! けど……昨日【獣化ビーストモード】のスキルを手に入れてるのだ?』


「え? そういえばそんなスキル手に入れてたかも?」


『獣化は獣人が持つ種族固有スキルなのだ。 体の一部が獣のように変化して、身体能力が飛躍的に向上する、というものなのだ。 それがあれば戦闘は大丈夫なのだ』


「そうなんだ! んーじゃあどうしよう? 武器が必要ないってことになるんだよね」


『でも、まだ全然使い慣れてないから、咄嗟にスキルが使えるか分からないのだ。 だから短剣くらいは持っておいた方が良いと思うのだ』


「たしかにそうだね! じゃあゴドロフさんのところで装備を整えて、教会に行って安全祈願してから街の外に行ってみよう!」


『そうするのだ!』


「にゃー!(行くなのー!)」



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 :ついに街の外か!

 :ここまで長かったなー

 :戦闘系スキル持ってない他のプレイヤーもこれくらい大変な思いするってことか

 :他の街で手に入るアイテムとかあるし、ずっとプロロギアには居られないもんな

 :情報サイトに注意書き追記しておくわ

 :こだわりある人も居るだろうから、専用ページあってもいいかもな

 :あーたしかに、戦闘系スキル取るの強制する感じになるのはちょっと違うもんな



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 コメントを横目に見ながらゴドロフさんの鍛冶工房に向かう。

 配信に乗らないようにナビさんに聞いてみたら、やっぱり昨日の内に聞いてたみたい。

 ネシア様の対応の速さは本当にありがたい、助かった。


「こんにちはー」


「はーい。 お、マタタビちゃんこんにちは!」


「今日は街の外に出ようと思ってるので、ナイフ買いに来ました!」


「おぉ、ついに草原に出るんだね! ナイフで大丈夫なのかい? もっと威力が出る武器じゃなくて大丈夫?」


「大丈夫です! 戦闘に役立つスキルを手に入れたので、緊急用にナイフを持っておこうと思って」


「なるほどね。 でも無理はしちゃダメだよ? ナイフじゃ心もとないと思ったら、ちゃんと他の武器を買いにくるようにね」


「はい!」


「お、武器を買いに来たのか」


「あ、ゴドロフさん! はい、ナイフを買いに来ました!」


「そうか、ならコレ持っていきな。 お嬢ちゃんが買いに来た時のために作っておいたんだ」


「え、工房長いつの間に!」


「嬉しいです、ありがとうございます! おいくらですか?」


「そうだな、2000Gでいい」


「2000Gですね、はい! これでお願いします!」


「よし、たしかに受け取った。 ほら、持っていきな」


「やったー! これで街の外に出られる!」


 新品のナイフを鞘から抜いてみる。

 刃がキラキラしてて、すっごく綺麗……はわぁ……。

 これからこのナイフで戦うことになるんだね……。


「お嬢ちゃんは街から出ていくのかい?」


「いやいや、まだですよ? まずは草原で経験を積んで、ギルド依頼をこなして、次の街に行ける実力がついたらですね。 なので、ナイフのお手入れとか世間話しにこれからもこさせてもらいます♪」


「そうか。 ……良かった(ボソッ)」



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 :ゴドロフの旦那がデレたwww

 :これがおっさんのツンデレか

 :いやツンではないだろ、クーデレじゃね?www

 :クールとはまたちょっと違うような?

 :なんだかんだ最初からデレだった気もwww

 :俺この工房行ったことあるけど、工房長もっとツンツンしてたぞ?

 :好感度を上げたまえ、これはそういうゲームだ

 :笑顔で出直しな!



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「素敵なナイフありがとうございました!」


「ああ、無理せず頑張んな」


「はい! 行ってきます!」


「おう」


「行ってらっしゃい、気を付けてね」


 ナイフを腰にさして、二人に手を振って工房を後にした。



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「工房長もやりますねー」


「何がだ」


「あのナイフ、性能的に2000Gじゃ安すぎですよね? 普通に売ったら2万Gくらいするやつじゃないですか」


「……さあ、俺は知らんな」


「ははは、そういうことにしておきますよ」


「ちっ、無駄口叩いてないで掃除でもしとけ」


「はーい」


 命を散らされちゃ困るんだよ。

 マタタビはもう俺にとって孫みたいなもんだ、生きてまた笑ってもらわにゃ夜も寝られん。

 はあ……いつかは街を出るんだろうが、それまでは元気な姿を見続けたいもんだ。


 ☆--☆--☆

 ・好感度

  鍛冶見習い ニコロフ 小上昇

  鍛冶工房長 ゴドロフ MAX

 ☆--☆--☆



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 工房を出てから、二人と雑談しながら教会に向かう。

 途中視聴者さんともナイフの話をしながらだったから、思ったより早く着いた気がする。

 お喋りしてると時間が早く感じることあるよね。


「お邪魔します」


「にゃー(するなのー)」


『お邪魔するのだ』


「おー猫聖女様! よくぞおいでくださいました!」


「どうも神官様」


「私のことは是非ゴローニャとお呼びください。 敬称などは不要ですので」


「いやいやそれはちょっと……ゴローニャさんとお呼びしますね」


「ふむ、そうですか……わかりました」


 すごく残念そうな顔してるんだけど、なんで?!


「今日はどのようなご用向でしょうか? また猫の集会ですかな?」


「いえ、今日は街の外に出てみようと思っています。 なので安全祈願といいますか、無事帰ってこられますようにとお祈りにきました」


「そうでしたか、ではこちらへどうぞ」


「ありがとうございます」


 ゴローニャさんの後ろを着いていき、女神像の前に到着する。

 そこで片膝を突くと、またワラワラと猫さんたちが集まってきた。

 あたしと同じようにお座りをして、女神像へと顔を向けている。


「ネシア様、チェシャール様、ライブーラ様、今日初めて街の外に出ます、無事街に帰って来られますように……」


 手を組んで女神像を見ながら祈願をする。

 周りの猫さんたちもにゃーと鳴きながら、一緒にお祈りをしてくれてるみたい。

 そうやって数秒、チェシャール様の像が輝きだした。


「にゃー! マタタビ、ユキ、ナビ、よく来たのにゃ」


「チェシャール様!」


「にゃーん!(チェシャール様なのー!)」


『あわわわ……』


「街の外に出ると聞いたのにゃ。 昨日怖がらせてしまったお詫びも兼ねて、あちしからも無事帰ってこられるよう祈るのにゃ」


「っ! ありがとうございます!」


『おぉ……』


「加護は与えられにゃいけど、三人に一度だけ攻撃を無効化するシールドを付与するのにゃ……にゃんぱらりっ!」


 チェシャール様の持つ杖が輝くと、あたしたちに光りが飛んでいく。

 それぞれにぶつかるとスーッと体に吸い込まれていって、光りがシュッと収まった。


 <(マタタビさん、ナビ、これでバグはにゃおったのにゃ。 他のナビAIからもバグは消えたから、おにゃじことはもう二度と起こらにゃいのにゃ)>


「ありがとうございます、これで安心して街の外に出られます!」


『ありがとうございますなのだ!』


「にゃーん!(ありがとうなのー!)」


「では行くのにゃ! 小さな旅の始まりにゃのにゃ!」


『「おー!」なのだ!』


「にゃー!(おーなのー!)」


「「「「にゃーん!」」」」


 みんなで気合をいれて叫ぶ。

 周りの猫さんたちも一緒に叫ぶ。

 それを見ているゴローニャさんが、シワを深く刻みながらニッコリと微笑んだ。



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 :詫びとは言え太っ腹だな

 :一発でも相手によっては危ないからな

 :これで本当の意味でクエストが終わった感じか

 :ついに街の外か、こっちまでドキドキしてきた

 :何事もなく終わることを祈ってるわん!

 :私もドキドキしてきました! マタタビちゃん頑張ってください!

 :草原にはウサギとか居るけど、マタタビちゃんは攻撃できるのか……?

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