第13話:鍛冶工房での一幕、誰?

 第13話:鍛冶工房での一幕、誰?


「お邪魔しまーす」


「にゃおにゃーん(おじゃまするなのー)」


『なのだー』


「おっいらっしゃい! 今日はどうしたんだい?」


「えっと、今日は確認に来ただけなんですけど」


「おっ、猫人様か? どうした?」


「あ、ゴドロフさんこんにちは! えっと、今日は事前確認に来ました!」


「ふむ、何を聞きたいんだ?」


「あたし料理術を持ってて、お願いしたら調理器具の制作依頼って受けて貰えるのかなって」


「なんだそんなことか。 全然大丈夫だ、住民からも受けてるしお安いご用ってもんだ」


「その場合は見習いが作ることになるけどね」


「嬢ちゃんのは俺が作るから大丈夫だ」


「えっ! 工房長が作るんですか! 珍しい!」


「あの、大丈夫なんですか?」


「俺が作ってやりたいんだ、むしろ作らせてくれって頼みたいくらいだ」


「この後槍でも降ってくるんじゃないですか? 大丈夫ですか?」


「ニコロフてめぇ! 給料減らすぞ!」


「じょっ冗談じゃないですか! 勘弁してくださいよー」


「ふんっ! 嬢ちゃんの前だから冗談ってことにしといてやるが、次はないからな」


「へーい……」


 なんだかコントを見てるみたいで面白い。

 笑いを堪えてると、ゴドロフさんが真剣な顔で質問を投げかけてきた。


「それで、何が必要なんだ?」


「あ、まだお金の問題があるので作ってもらうのは先なんですが……」


「そうか、事前確認って言ってたもんな。 ならリストだけでも先に作っておくか? それと値段の提示だな。 分かってれば金集めの目安になるだろう?」


「確かに! それじゃあですね……」


 最低限必要な物と、できればあるといいなーっていう物を伝えていく。

 もしかしたら途中で別の街に行くかもしれないことも一緒に伝えるのも忘れずに。

 おおよその値段を見て、一瞬天を仰いだのは言うまでもないですね……。


「一気にまとめてじゃなくてもいいんだし、買えるようになったら1つずつ注文してくれや」


「そうします、ユキさんのご飯も作ってあげたいし、早めに揃えられるといいんだけどなぁ」


「まあ焦らないことだ、どんなことにも近道はないからな」


「そうですね、頑張ってお金貯めます!」


「おう、いつでも待ってるからな」


 ☆--☆--☆

 ・好感度

  鍛冶見習い ニコロフ 微上昇

  鍛冶工房長 ゴドロフ 小上昇

 ☆--☆--☆


 そう言って優しく撫でてくれる。

 ゴドロフさんのこういうところが大好きだな、優しくて頼りがいがあって。

 またニコロフさんが目を丸くしてるけど、黙っておくことにしよう。

 改めてお礼を言って、手を振って工房を後にした。


『武器を頼まなくても良かったのだ?』


「あ……」


『まあ金策に必要であるし、良いといえば良いのだ。 でもこれじゃあトリマーじゃなくて料理人なのだ』


「そこは拘ってないからいいかな? 料理ができるトリマー、いいと思う!」


『うーん言われてみれば、確かに悪くないのだ』


「でしょ? 美味しい料理を作って喜んでもらって、動物さんを綺麗にして喜んでもらう、どっちも嬉しいから大丈夫♪」


『じゃあアレなのだ、メイン:トリマー、サブ:料理人って感じなのだ』


「そうだね、その方向でロールすることにするよ」



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 :正式にロールが決まったな

 :完全職業ロールか

 :今のところ珍しいってことになるのかな?

 :そうね、だいたい戦闘職か生産職になるから

 :戦闘より癒やす方向なのはマタタビちゃんらしくて良い

 :そうだな、血なまぐさいのは似合わない

 :これからが楽しみねん!



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「工房長、良かったんですか?」


「なにがだ?」


「武器以外の依頼を工房長が受けるなんて、今まで無かったじゃないですか」


「確かにな……なぜだかあの子は目が離せないんだ」


「娘さんが歳近いんでしたっけ?」


「うむ、正直重ねてるところはある。 職人として良くはないんだろうが……」


「僕もなんですけどね、なんだか猫人様ってのを抜きにしても心配になるっていうか」


「そうなんだよな、あんな小さな子が旅に出るってだけでも心配なのに……はぁ……」


「親心ってやつなんですかね。 安全に旅ができるといいですね」


「本当にな……。 ほら、お前はこの剣研いどけ、そろそろ引き取りに来る頃だからな」


「はい、さー仕事仕事っと!」


 現実でもあるあるな、日本人は若く見られるアレが発動していたりする。

 髪と目の色、胸の大きさ以外弄ってないのも原因の1つと言えるかもしれない。

 ゴドロフの娘は6才、年齢が近いとはちょっと言い難いのだが、二人にはそう見えている。

 これからのマタタビに思いを馳せながら、二人は仕事に戻っていくのであった。



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 あの後は、依頼主のプレイヤーと会って材料を確保していく。

 全員と会うのは大変だと思ってたけど、視聴者さんが集まってくれていたので助かった。

 どうやら、完成した料理をみんなでワイワイ食べることにしているらしい。

 そういうことなら、気合入れて作らないとね!


「ありがたいことに、調理器具の心配はしなくて大丈夫そうかな?」


『であるのだ。 どれも今の道具だけで作れる料理なのだ』


「んにゃ?(おたたはあるなの?)」


「お魚はないかなー、お肉ならあるけど人に渡すものだからね?」


「にゃー……(そうなの……)」


「ジャーマンポテトもレシピ登録されてるし、今から作るのも後で作れるからさ♪」


「んにゃ?にゃーお(そうなの? じゃあがまんするなのー)」


「よしよし♪ じゃあ早速作っていきましょう!」



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 :16種類は大変だぞ?

 :無理しないでね?

 :ゆっくりでいいからね?

 :途中ちゃんと休憩してねん?

 :水分補給はちゃんとするんだよ?

 :保護者が大量に沸いてますねwww

 :あーウチもハラハラしてきた

 :保護者の皆様、ゆっくり見守ってあげましょう

 :ギルドの酒場で集まってる連中から聞いて来ました

 :おっ初見さんいらさい



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 まずは簡単なところから、ベーコンエッグを作ってポーチに入れる。

 次にシンプルなサラダ、これは火を使わないから楽でいいね。

 裏でゆで卵を作っておかないと、それなりに数が必要だからね。

 さすがにナビさんのサポートが無かったら、絶対に混乱してたと思う。


 半分くらい作ったところで、周りがざわざわし始めた。

 どうしたんだろう? と思って視線が集まっている先を見ると、綺麗な女性が歩いてた。

 なんだろう? あれ? こっちに近付いて来てる?


「ちょっとよろしいかしら?」


「え? あ、はい、なんでしょうか……?」


「いえ、色々な種類のお料理をなさっていたので、見学させてもらえないかと思いまして。 お邪魔でなければですけども」


 ☆--☆--☆

 ・ランダムクエスト

  お忍びお料理見学

 ・成功条件

  一定時間経過

 ・失敗条件

  なし

 ☆--☆--☆


「あ、はい、大丈夫です。 手際悪いかもしれませんが、それでもよければ……」


「ありがとう存じますわ、邪魔はしませんのでご安心ください」


「わ、わかりました」



 ----


 :お忍びって、お偉いさんか?

 :こんなクエストもあるのか

 :まさか料理ギルドの人だったりして

 :いやいやまっさかー

 :見られながらって緊張するだろ



 ----


 なんでこんなことになってしまったのか?

 正直そこまで緊張はないんだけど、視線はバシバシ感じるんだよね。

 大丈夫って言った以上、諦めて料理続けるしかないか……。

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