第12話:朝のひととき、依頼祭り受注

 第12話:朝のひととき、依頼祭り受注


「フレンド欄に初めて名前が……うー、嬉しいです! ありがとうございます!」


「いいのよん♪ あたいからお願いしたんだからん、お礼を言うのはあたいの方よん♪」


「えへへ♪ 初めてのフレンド♪」


「うふふん♪」


 あたしがフレンド欄を眺めてニコニコしてると、カマウィさんが何かを見て微笑んだ。


「ねぇん? 1つお願いがあるんだけどん、いいかしらん?」


「え? お願いですか?」


「あたいの友達たちもマタタビちゃんの料理が食べたいみたいなのん。 もし良かったら指名依頼でお願いしてもいいかしらん?」


「全然いいですよ! あたしも旅の準備にお金が必要で、どうにかしてお金貯めたかったのでむしろありがたいです!」


「よかったわぁん♪ 配信にたくさん友達が来てるみたいなのよん、それでいいなーって言うからどうかなってねん」


「わっ視聴者さんになってくれてるんですね! でしたら、明日からでもいいですか? 今日はもうそろそろ時間が……」


「あらん? もう21時になるところだったのねん、それはしょうがないわん」


「すみません……13時頃にまたログインするので! 依頼出してもらえれば受けておきますので!」



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 :やったー! 何作ってもらおうかなー

 :悩むな……持ち物と相談しないと

 :設備のことも考慮しとけよ?

 :簡単に作れて、時間もかからないものか……うーむ

 :明日の昼間で時間があるんだ、よく考えておこう

 :カマさんありがとう!

 :カマさん助かる!

 :あんた女神や!



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「調子いいこと言っちゃってん……まったくん」


「みなさん素敵なお友達ですよ♪ では今日はここまでで、また明日ログインするので視聴者さんもちゃんと寝てくださいね! お疲れ様でした!」


 カメラに向かって挨拶して、カマウィさんに手を振ってログアウトに指を伸ばす。



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 :はーい、おつかれー

 :お疲れ様! そしておやすみなさい!

 :おつすみー

 :今日は早めに寝るわ、おつおつー

 :マタタビちゃんもゆっくり寝てね? お疲れさまー

 :おっつおっつー



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 そんなコメントを見ながら現実に戻るのであった。



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「はー楽しかったー」


「おかえりなさい、好香ちゃん」


「ただいま、お母さん! あのね、お願いがあるんだけど……」


「見てたから分かってるわよ♪ お料理、一緒に作ってレパートリー増やしましょうね♪」


「私はお菓子の方を沢山教えてあげるからね」


「ありがとう! お母さんもお婆ちゃんも大好き!」


「あらあら♪」


「さっそく明日何か作ってみようかね?」


「うん!」


「僕は……何も教えられないな、寂しい……」


「お父さん……な、何か考えておくね! ちゃんと頼るからね!」


「うぅ、ありがとう好香」


「お姉ちゃんが楽しそうで良かった! ねぇねぇ猫のさわり心地ってどうなの?」


「それがね、現実と変わりなくてね……」


 家族との楽しい団欒、あんなだった、ここは違ったと話に花が開いていく。

 明日はどんなことを経験できるのかな?

 そんなことを思いながらベッドに潜り込み、幸せな気持ちで眠りについた。



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「ふわぁ……お姉ちゃんおはよう……」


「おはよう穂香。 朝ごはんもうできてるよ」


「うん……食べる……」


「その前に顔洗ってきなねー」


「はーい……ふわわわぁ……」


 今日の朝ごはんは、白飯、納豆、味噌汁、銀鮭焼き、シンプルな日本の朝ごはん。

 銀鮭焼きは魚焼網を使ってコンロで焼いたやつで、お母さんに教えてもらいながら作った。

 料理スキルアップ! ゲームでも約に立つ! どっちのあたしもレベルアップだね♪


 みんなで朝ごはんを食べた後は、お母さんとレシピ本を眺めた。

 お母さんとお婆ちゃんが持ってる、手書きのレシピ集も引っ張りだしてくれて嬉しかった。

 油鍋も欲しいね、あとお玉とかの調理器具も必要だ、お金……どれくらい必要だろう……?

 お父さんも一緒に何が必要だろうねって考えてくれて、すごく楽しかったよ♪


 お昼はお婆ちゃんとホットケーキを作った。

 甘いやつじゃなくて、ちゃんとご飯として食べれるやつ。

 ツナ、コーン、チーズが入ったホットケーキはすごく美味しかった!

 当然普通のホットケーキも教えてもらったよ、ホットケーキミックスを使わないやつ!



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「2人とも、お待たせ」


「にゃー(マタタビなのー)」


『こんにちはなのだ! 今日も頑張るのだ!』


「うん! 視聴者さんもこんにちは」



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 :こんにちはー

 :昨日ぶり! こんにちはー!

 :今日は料理を作ってもらえるの楽しみにしてたよー

 :楽しみだなー、こんちわー

 :初見です

 :初見でーす



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「しょ、初見さん! こっこんにちは! あ、あの、よろしくお願いします!」


『マタタビ、リラックスなのだ』


「そ、そうだね……ふぅ……配信に来てくれてありがとうございます、ゆっくりしていってくださいね♪」



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 :おうふ

 :キラースマイル

 :心が浄化される……

 :天使だ……猫天使がおる……

 :癒されるわん……

 :よろしくー

 :浄化されてるのは常連さんかな?



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「今日はギルドで依頼を確認して、料理を作る前にゴドロフさんのところに相談に行こうかなって思ってます」


『何か作ってもらうのだ?』


「お昼まで家族とどんなのが必要だろうねって話してきたの。 それをゴドロフさんの工房で作れるのか確認だけね? まだお金があれだからさ」


『なるほどなのだ、急な制作依頼は迷惑になる場合もあるし事前確認は大事なのだ』


「だよね! じゃあまずはギルドに行こっか♪」


「にゃー(おーなのー)」


『うむうむ!』


 3人でまったり喋りながらギルドに向かうと、リリース初日よりも人がたくさん居た。

 本格的にプレイヤーがログインし始めたってことなのかな、賑わうのはいいことだね!

 依頼リストを眺める人を横目に、あたしたちは受付カウンターに向かった。


「すみません」


「ぼっ冒険者ギルドへようこそ。 何かご用でしょうか?」


「あの、指名依頼が来てるか確認したいんですが、受付でできますか?」


「はい、大丈夫ですよ。 お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


「あ、マタタビといいます、旅人です」


「少々お待ちください。……はい、16件依頼が来ていますね。 全て料理の納品依頼となっております」


「そんなに! あ、ありがとうございます! 全部受けます!」


「かしこまりました。 ではこちらで処理しておきますので、完成しましたら依頼主への納品をお願い致します」


「わかりました、頑張ります!」


「ふふふ、頑張ってくださいね♪」


 思ってたよりもかなり依頼来てた!

 うわー、全部ちゃんとできるかな……でもお仕事だもんね、頑張らないと!

 ふんすっ! と胸の前で両手をグーに握ると、ギルドを後にした。



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「あの旅人さん可愛らしかったわー」


「あら、猫人様の対応したの?」


「そうなのよー、昨日見た時に可愛いなーって思ってたら私のところに来てくれて!」


「羨ましいわー、あたしも話してみたかったなー」


「うふふふ、このまま専属受付嬢になれればいいなー」


「そうは問屋が卸さないわよ? 周り見てみなさいよ」


 マタタビの受付をした女性が周りを見ると、こちらをギラギラした目で見る他の受付嬢が。


「あの子可愛いし、狙ってる子は多いわよー? ま、あたしもその一人だけど」


「うー、競争率高すぎないかしら……そういえばあの子配信してたわね」


「そういえば、配信球はいしんきゅうが浮いてたわね」


「たしかマタタビちゃんだったわね……あ、あった!」


「どれどれ? あら本当ね。 ふーん、今から鍛冶工房に向かうのね」


「ずっと見てるのは無理だけど、楽しみが増えたわね♪」


「仕事に支障でないようにしなさいよ? あ、当然あたしも一緒に見るからね」


「わかってるわよそれくらい……善処するわ」


「それできない人の言葉だからね?」


「う……」


 こうして受付嬢たちの注目の的になっているマタタビ。

 ゲーム内AIにまでファンができるのは、制作陣にとっても予想外の出来事なのであった。



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 筆者より


 1.配信の視聴について

 プレイヤーはブラウザを使って配信を見ることができます。

 なので、視聴者はログインしながら見ている人が半数以上居る想定となってます。

 制作側が想定している使い方の1つなので、みんな大いに活用しているようです。

 当然、掲示板も同様になります。



 2.AIについて

 ナビさんたちの様子を見てわかる通り、AIには人格や性格、感情が個別にあります。

 この世界の住人、大地人全てにAIが備わっているので、性格も本当に様々です。

 その為、もし大地人の一人が死んでしまうと、二度と復活することはありません。

 その逆に、新たに産まれる大地人も居ます。

 大地人同士が結婚して子供が産まれれば、それだけ住人が増えることになります。

 マタタビは当然知らないことですが、自然と生きている人たちとして接していますね。


 もしゴドロフが死んでしまった場合、他の鍛冶工房がマグダラの依頼を引き継ぎます。

 クエスト中に死んだ場合は、その流れを汲んだ内容に変更されます。

 なので、クエストが完全消滅するのは超重要NPCが死んだ場合に限ることになります。

 もし王様が死んだら……関連クエストが完全に一新されることになるでしょう。


 好感度が設定されているのも、このAIの特性があるからです。

 善良に接していれば、それ相応に接してくれますし、その逆もまた然り。

 天秤の女神の存在が大きく関わっている部分でもあります。

 この辺はどこかで本編に絡ませますが、事前情報として提示しておきます。



 3.AIの配信視聴について

 受付嬢が配信を見るシーンが最後にあります。

 受付嬢の権限として、ギルド内に限りブラウザを開くことができます。

 ただし検索機能は完全封印されており、各配信サイトのみ閲覧が許されています。

 何かトラブルが起こった時に、配信していたという情報があれば事実確認に使います。

 配信設定にアカウントの紐づけが行われるので、そこから配信を特定する形になります。

 なので、私的利用はギルド規定で禁止されているのですが……。


 このシーンでギルド受付嬢統括もその行動に気付いています、いるのですが……。

 おっと、受付嬢統括が睨みを効かせてこちらに来てますので、ここまでで……したらな!

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