第9話:ゴドロフの鍛冶工房、新たなクエスト
第9話:ゴドロフの鍛冶工房、新たなクエスト
さっそく噴水広場を離れて工房区画に入っていく。
たしか、あの井戸の近くに工房があるって話だから……この辺りかな?
「あった! ゴドロフの鍛冶工房……見たことない文字なのに、ちゃんと読めるんだね」
『この文字は、この世界で使われている標準語の文字なのだ。 どのプレイヤーも最初から読めるのだ』
「ふーん、なんで日本語じゃないんだろう?」
『そこは世界観を大切にするためなのだ。 異世界なのにどこを見ても日本語だとちょっと残念に思う人も居るのだ』
「そっか、そういうものなんだね……入ろっか」
『マタタビはあんまり興味ないのだ……まあいいのだ』
「すみませーん」
ナビさんが何か言ってるけど、構わずドアを開けて中に入る。
中には剣とか槍とかが置いてあって、奥にはカウンターが置かれてる。
カウンターの中に座ってる人がこっちを見て笑顔になった。
「あの時の猫人様じゃないですか! いらっしゃいませ、さっそく来てくれたんですね」
「はい、旅の準備をしたくてお邪魔しました」
「そうなんですね、ここは見ての通り武器を作っている工房です。 工房長が丹精込めて作った武器達なので、じっくり見ていってくださいね」
「ありがとうございます、見させてもらいますね」
そう言って周りを見ると、たくさんの武器が目に入る。
剣の数が多いのかな? ナイフから大っきい剣までいろんな種類が所狭しと並んでる。
隅の方にクワとかが置いてあるから、武器以外も作ってるのかな?
「武器以外にも売ってるんですか?」
「それはこの辺りに住む人向けですね。 見習いが作った日用品も置かせてもらってるんですよ。 農具から調理道具までご要望があれば作ります」
「そうなんですね。 あたしも料理術持ってるし、包丁とか持ってた方がいいのかな?」
『料理術もアイテムを召喚する系のスキルなのだ。 良い道具があれば交換しておいた方がいいのだ』
「そっか、今はお金がないから機会があったら揃えていきたいな」
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:アイテム召喚系のスキルって金かかるんだな
:知り合いに鍛冶やってるプレイヤーが居ればいいんだがな
:それでもタダってことはないだろ、安くは済むだろうけど
:素材提供で相殺ってわけにもいかないしな
:あたい鍛冶取ろうかしらん……
:私は魔道具作成とか錬金術かしら、トリマーの道具作ってあげたい
:貢ぐちゃんが沸いてきたぞwww
:まあ気持ちは分からんでもない、俺もちょっと悩んでる
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「今日は相場を知りたかったんですが、お値段はどこもここくらいですか?」
「うーん、武器のランクによるから絶対とはいえないけど、うちの工房は平均的な値段設定だと思うよ?」
「なるほど……」
「どうした? 客か?」
「あ、工房長! そうです、相場を見に来たみたいで商品を見てもらってたんですよ」
「ほう、猫人様の旅人か。 まだ駆け出しってところか」
「初めまして、マタタビといいます。 まだ初心者なので、お金を貯める目安を知っておこうかなと」
「そうか、まあゆっくり見ていってくれ。 それにしても、ずいぶん若い旅人だな」
「あ、今日12歳になったばかりなんです。 ユキさんと一緒に旅をしたくて……」
「そうかそうか、おじさんが力になれることがあったら是非頼ってくれ」
「ありがとうございます!」
強面でちょっと怖かったけど、目を細めて優しい顔で頭を撫でてくれる。
お兄ちゃんもそうだけど、見た目で人を判断しちゃダメだね、覚えておかなくちゃ。
それから工房長さんはまた奥に戻っていった。
「工房長のあんな顔初めて見たよ……あ、そうだ。 もしよかったらお使いを頼まれてくれないかい?」
「お使いですか?」
「うん、店番できる人が他にいなくて離れられないんだ。 どうだろう?」
☆--☆--☆
・フリークエスト
マグダラにお届けもの
・成功条件
制限時間内にマグダラにお届けものを渡す
・失敗条件
制限時間をオーバーする
☆--☆--☆
『フリークエストは、会話の中で自然発生するクエストなのだ。 やってもいいしやらなくてもいい、ただやっておくと好感度が上がるから、できるならやってあげるといいのだ』
「なるほど、わかりました。 お使いやります!」
「ありがとう、本当に助かるよ。 この包丁を、市場で串焼きを売ってるマグダラさんに届けてほしいんだ。 恰幅のいい女性で、けっこう声が大きいからすぐわかると思う。 急いでるみたいだったから、早めにお願いね」
「はい! さっそく行ってきますね!」
「よろしく頼むよ」
店番の男性から布に包まれた包丁を受け取ると、スッと腰のポーチに入れた。
手を振って工房を出て、さっそく市場に足を向けた。
「この右上に出てるのが制限時間なのかな?」
『そうなのだ、制限時間が0になると失敗になるから注意なのだ。 今回のはかなり余裕があるから、ゆっくり行っても大丈夫だと思うのだ』
「そっか、でも急ぎって言ってし早めに渡さないとね」
『うむ、いい心がけなのだ』
「恰幅のいい女性で、串焼き屋さんか……どこだろう?」
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:市場の真ん中らへんにそんな感じの店なかったか?
:噴水広場近くじゃないの? あ、あれはおじさんか
:この市場いろんな店あるから覚えるの大変なんだよな
:串焼きなら匂いするしわかりやすいんじゃね?
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「そっか匂いか! 視聴者さんありがとう! 市場の真ん中ら辺で串焼きの匂いだね!」
「んにゃー(あっちからいい匂いがするなのー)」
「ほんと? 行ってみよっか!」
「にゃー(おーなのー)」
ユキさんの後ろをついて行ってみると、食べ物屋さんが集まってる場所に出た。
スープを売ってるお店や、サンドイッチを売ってるお店、ケバブみたいなのもあるね。
串焼き屋さんならジュージューって音もするかも?
「あ、もしかしてここかな? すみませーん」
「あいよ! おや小さな猫人様だね、買い物かい?」
「マグダラさんですか?」
「ん? たしかにあたしゃマグダラだけど」
「よかった合ってた、ゴドロフの鍛冶工房から包丁を預かって来ました!」
「あらやだありがとう! 刃こぼれしたのしか残ってなくて困ってたのよ!」
「はい、これです。 確かにお届けしました!」
「本当にありがとうね? そうだ、お礼に串焼き食べてって? うちのは美味しいって評判なんだから!」
「いいんですか? ありがとうございます!」
「はいどうぞ! よかったら今度は買いに来ておくれ!」
「はい! 絶対来ますね!」
手を振って別れると、そのままの足で鍛冶工房へと戻る。
後ろに猫さんがいっぱい付いてきてたけど、ごめんね? 制限時間があるから急がないと。
「おや、もう戻ってきたのかい?」
「はい、無事お届け完了しました!」
「よかった、本当にありがとう。 すごく助かったよ」
「お、さっきの猫人様か? なんだ、何か頼んだのか?」
「工房長、マグダラさんの包丁を届けてもらったんです。 ちょっと離れられなかったんで」
「あー、マニロフの奴が熱中症になったからな……すまんな、面倒押し付けちまって」
「いえいえ大丈夫です! マグダラさんから串焼きも貰えて得しちゃったので!」
「そうか、マグダラも気前の良いことするじゃねぇか。 ニコロフ、報酬にちょっと色つけて渡しておけよ」
「わかりました、はいお使いの報酬だよ。 本当に助かったよ、ありがとう」
「こちらこそありがとうございます! また何かあったら言ってくださいね? お手伝いしますので」
「すまんな、ありがとう」
☆--☆--☆
クエストクリア!
・報酬
120G
・特別報酬
串焼き 2本
・好感度
鍛冶見習い ニコロフ 微上昇
工房長 ゴドロフ 微上昇
串焼き屋 マグダラ 微上昇
☆--☆--☆
報酬をもらうと、工房長は奥に戻っていった。
初めての報酬にニコニコしていると、にゃーと鳴き声が聞こえた。
「あれ? あの時の汚れてた猫さん?」
「にゃー!(マタタビさんだ!)」
「あれ以来この工房に遊びに来るようになってね」
「そうだったんですね! ここに来たらまた会えるのは嬉しいな♪」
「んにゃお♪(ボクも嬉しい♪)」
「よーしよしよし! もう汚れるようなことはしちゃダメだよ?」
「んにゃ!(うん!)」
『さて、相場もだいたい分かったし、どうにかしてお金を貯めないとなのだ』
「そうだね! ニコロフさんに猫さん、また来ますね!」
「ああ、待ってるよ」
「にゃーお(またねー)」
ちょっと後ろ髪引かれる気持ちだったけど、手を振って工房を後にするのだった。
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:あの時の猫と再会できてよかった
:猫撫でてる時の顔が最高に良いんだよな
:バカやろう! マタタビちゃんはいつだって可愛いだろ!
:そうよん! お尻ぺんぺんしちゃうんだから!
:それだけはやめてくれ!
:お金貯める方法かー、何かあるかな
:街を出て薬草集めるのが手っ取り早いか?
:攻撃系のスキル取ってれば初期装備があって安全だったんだが……
:無手で街の外は危険なんだよな、完全職業系だから紙装甲だし
:トリマーとしてなんとか稼げないのか?
:どうなんだろうな、聞いたことないからわからんな
:猫ちゃんを手入れしながら旅をする、わるくないわね
:そうだな、俺たちの癒やしにもないるし一石三鳥だ
:金が稼げる、猫が綺麗になる、経験が積める、俺たちが癒される
:四鳥だった件
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