第10話:小さな目標、初めてのギルド依頼

 第10話:小さな目標、初めてのギルド依頼


 フリークエストを終えた後、工房区画を見て回った。

 革細工工房、防具工房、アクセサリー工房、本当にいろんな工房があって楽しい。


「あそこ、宝石工房だって」


『採掘で宝石の原石が手に入ることがあるのだ。 それを宝石に加工して、アクセサリー工房や宝石店に卸してる工房なのだ』


「へー、工房同士で助け合ってるんだね」


『現実でもそうなのだ、その会社だけで全て完結する方が少ないのだ』


「そうなんだ、勉強になるなあ」


 ぶらぶら歩きながら目についた工房に入ったりして、その度にナビさんが教えてくれる。

 本当にいろいろな事を知ってて、頼もしいパートナーができて良かったよ。


「それにしても、串焼き美味しかったね」


「んにゃん(また食べたいなの)」


「そうだね、またマグダラさんの所で買おうね」


『串焼きのお肉も、ギルドに依頼して獲ってきてもらってるのだ。 こういう助け合いはどこでも行われているのだ』


「ギルド? 何をするところなの?」


『一般の人が冒険者や旅人に依頼をする場所なのだ。 このお肉が欲しいとか、この薬草を採ってきて欲しいとか、戦う力がない人とか採りに行く時間がない人がお願いしに行く、なんでも屋さんって感じなのだ』


「そんな場所があるんだ! あたしも旅人だし、見ておきたいかな」


『じゃあ行ってみるのだ! 途中に教会もあるから、ついでに見て回るのだ』


「うん、そうしよっか!」


 ナビさんの提案で、教会の方へ向かってからギルドに行くことに。

 教会ってことは、神様が祀られてるってことだよね?

 猫神様っていうのが居るのは知ってるけど、他にも神様が居るのかな?

 それからしばらく歩いて……。


「うわー、これが教会かー」


「にゃーにゃおー(おっきーなのー)」



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 :やっぱりデカいな

 :ザ・教会って感じの見た目だよな

 :ここステンドグラスが綺麗なんだよ

 :作り込み半端ないよね

 :新しい街に行ったら教会行くといいよ、リスポーンポイント登録できるから



 ----


「あ、リスポーンポイントって教会で登録するんですね」


『教会でリスポーンポイントを登録すると、街の真ん中にリスポーンするようになるのだ』


「街の真ん中? この街だと噴水前がそうってこと?」


『そうなのだ。 他の街だとただの広場だったりするのだ』


「そうなんだね、必ず行くようにしないと。 せっかくだし、お祈りして行こうか」


「にゃー(そうするなのー)」


 三人で教会の入り口に近づくと、扉の横に立ってるシスターさんがお辞儀をした。

 それにならってお辞儀をして、緊張しながら扉をくぐった。


「中もすごいね、厳かっていうか、喋っちゃいけないような雰囲気だよ」


「んにゃー(ユキも静かにするなの)」


「ふふ、そうだね。 あ、教会の中にも猫さんいるんだね」


『どの街にも、どこにでも居るのだ。 それだけ大事にされてる証拠なのだ』


「あたしには天国のような世界だよ」


 ゆっくりと歩を進めて、女神像が置かれている場所にたどり着く。

 そこには、3体の像がそびえ立っていた。


『真ん中は創造神【ネシア】、左が天秤の神【ライブーラ】、右が猫の神【チェシャール】なのだ』


「世界を作った神様と、善悪と平等の神様と、猫の神様か……なんで猫なんだろう」


『創造神が猫好きだからと言われているのだ。 なんでも、神様の世界では猫が大人気だそうなのだ』


「なるほど、猫はどこに居ても人気者なんだね」


 はえーと口をパカリと開けて女神像を眺める。

 しばらくそうしているとユキさんがにゃーと鳴いた。

 そうだった、お祈りしないと。

 女神像の前に片膝をついて、両手を組んでお祈りをする。


(みんなで楽しく旅ができますように……)


 <旅人の行く道に幸多からんことを>


 <善悪を見定め、善き行いを心がけるよう>


 <たくさん猫を愛してあげてほしいのにゃー>


 ハッとして辺りを見回すけど、特に何も変化はない。

 もしかして、女神様が語りかけてくれたのかな。



 ----


 :初めての時はビックリするよな

 :まさか声聞こえると思わないもんな

 :最後だけ妙に和やかなのが笑えるw

 :俺たちのことも愛してほしいのにゃー

 :挟まり侍か! 天誅!

 :やめいw



 ----


「あ、声がするのが普通なんだね、すごくビックリしました」


『お祈りは終わったのだ?』


「うん、楽しく旅ができますようにってお願いしたよ」


 そうして話していると、一人の男性が近づいてきた。

 服装的に神官様かな?


「熱心にお祈りなさってましたね」


「はい、あたしは旅人なので、楽しく旅ができますようにと」


「そうですか、それは良いことです。 私からも、あなたに幸多からんことを……」


「ありがとうございます」


「それで……あなたはとても猫に好かれる猫人様なのですね」


「え? あ、こんなに猫さんが、いつの間に」


「お祈りしている時も周りに集まって、一緒に目を閉じていましたよ」


「あらら、一緒にお祈りしてくれてたのかな? ありがとうねーよしよし」


 近くに居た数匹を撫でてあげると、神官様の笑顔が深くなる。

 教会が猫神様を祀ってるくらいだから、やっぱりこの神官様も猫が大好きなのかな。


「この教会に住み着いてる猫も居ますので、よければたまに顔を出してあげてください。 きっとここの猫達も喜びますので」


「そうですね、わかりました。 是非そうさせてもらいます」


「ほっほっほ、ところで、猫人様は回復魔法に興味はありますかな?」


「回復魔法ですか?」


『回復魔法っていうのはそのままの意味なのだ。 怪我とか毒とかを治す魔法のことなのだ』


「なるほど……その回復魔法があれば、傷ついた猫さんとかを治すことができますか?」


「そうですね、人だけでなく生きとし生けるものであれば効果を発揮しますよ」


「それはすごく興味あります! 目の前に傷付いて鳴いてる動物さんが居たら助けてあげたいです」


「とても良い心をお持ちのようだ。 スキルスクロールの販売を行ってますので、もし覚える時が来ましたら是非ご利用ください」


「あ、そ、そうなんですね。 はい、わかりました」



 ----


 :そうなんだよ、有料なんだよ

 :まあ教会を維持していく為だもんな

 :しょうがないとは思いつつも……なぁ

 :猫のために回復魔法覚えたいのか、優しい子だなぁ

 :ポーションだと都度金がかかるしな

 :自分で作れればいいんだろうけど、そこはしょうがない



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 なんだか微妙な気持ちになってしまった……。

 神官様にお辞儀をして教会を出たけど、なんだかモヤッとした物が胸に残った。

 うーん、視聴者さんの言う通り維持には必要だって分かるんだけどね……。

 まさか営業されるとは思わなかったな、あははは。


『次はギルドなのだ。 この道を行けばすぐなのだ』


「う、うん。 行こっか」


「にゃー(なのー)」


 ナビさんに微妙な気持ちになったのを話ながらギルドへと向かう。

 困った笑いを返されたけど、どっちの気持ちも分かるからって言われちゃった。

 まあそうだよね、この世界に生きる人にとって必要なことなんだもん。

 ユキさんを抱きしてながら歩いてると、大きな建物が見えてきた。


『ここがギルドの1つ、冒険者ギルドなのだ』


「3階建てくらいかな、大っきい建物だね」


『1階が受付になってるから、さっそく入ってみるのだ』


「うん!」


 中に入ると、右側の壁に紙がいっぱい貼られたスペースが。

 奥にはカウンターがあって、女の人が何人か中に立ってるね。

 左側は飲食スペースなのかな? 何かを飲みながら喋ってる人が居る。


『大地人の冒険者も利用するし、旅人も自由に依頼が受けられるのだ。 もちろんマタタビから依頼を出す事もできるが、達成した時の成功報酬が必要だから今は難しいのだ。 あの紙がいっぱい貼ってあるところが、依頼リストになるのだ』


「渡せる物もお金もないからね、それはしょうがないかな。 何か受けられる依頼はないかな……?」


 さっそく近づいてみると、沢山の依頼が貼り出されていた。

 薬草採集、ゴブリン討伐、ウルフ討伐、隣街への護衛などなど。

 お使いとか雑用の依頼もあるみたいだね、これならあたしにもできそうかも。


「ちょっとだけごめんなさいね、新しい依頼の貼り出しをしますので」


 たぶんギルドの制服かな? を着た受付のお姉さんが紙の束を持ってやってきた。

 他の冒険者さんや旅人さんもちょっとスペースを空けるように移動した。

 こんな感じで増えてくんだなーと思ってたら、気になる依頼が貼り出された。


「あの! これ! あたしでも受けられますか!」


「え? これは……料理の納品依頼ですね。 はい、料理に自信がありましたら是非お受けいただければと思います。 内容は、ジャーマンポテトの作成、材料は依頼主が全て負担してくださるようです。 報酬は600Gなので、相場よりちょっとだけ高いくらいかと思います」


 ☆--☆--☆

 ・ギルド依頼

  ジャーマンポテトの納品

 ・報酬

  600G

 ・期限

  7日以内

 ☆--☆--☆

 

「そ、それ受けたいです! 受けます!」


「ありがとうございます。 あら、ちょうどあそこに依頼主が居ますので、詳しい話を聞いてみるといいかもしれないですね。 受付は済ませておきますので、よろしくお願いします」


「はい! えっと……あの人か!」


 受付のお姉さんが手で指した方に居た人に向かって歩いていく。

 お姉さん? いや、お兄さん? 不思議な雰囲気の人だけど、勇気を出して声をかけた。


「あ、あのお姉さん!」


「あ、あらん? あたい? え、どうしましょん、想定外だわん……」



 ----


 :お前かーwww

 :まさかのwww

 :お姉さんって言ったぞwww

 :いやはや羨ましいwww

 :そこはお兄さんって呼ばないとwww

 :神タイミングすぐるwww

 :マタタビ料理ずるいお!



 ----


 なんだかコメントが騒がしかったけど、ド緊張してるあたしの目には入っていなかった。

 そのため、視聴者の1人だということには気付かないのだった。

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