第8話:再ログイン、ご挨拶
第8話:再ログイン、ご挨拶
「ふぅ……」
「正しいかわからないけど……おかえり、好香」
「うん! ただいま!」
「楽しそうだったわね♪」
「お姉ちゃんすごいね! 猫があんなにいっぱい寄ってきて!」
「いやー、ここまですごいものだと思わなかったっすよ!」
「すごく楽しかったし、初めての経験もできて嬉しかったな」
「そうだね、プレゼントした甲斐があったよ。 それでね好香? 僕や一香がどこに居ても見れるように、配信設定をしておいたんだ」
「配信設定?」
配信は聞いたことある、UTVとかでやってるやつだよね?
「そう、好香が遊んでる様子をUTVで流して、僕たちが家に居なくても見れるようにしたんだ。 他の人も見れるけど、コメントは好香の方には見えないようにしてあるから、さっきみたいに自由に遊んでもらって大丈夫だよ」
「えー! いろんな人に見られちゃうってこと?! じゃあさっきのも……」
「事後報告になってごめんね? さっきのも60人くらいの人が見てたかな、たくさんコメントも来てたよ。 見るかい?」
「なんか恥ずかしいよ……でも……うん、見る……」
あたしがそう言うと、お父さんがSPDを操作してコメントを見せてくれる。
街の感想から始まって、癒されるとか、これからも見守りたいとか。
最後にはお誕生日おめでとうの言葉もたくさん……なんだろう、すっごく嬉しい。
恥ずかしいことに変わりはないけど、暖かい言葉もたくさんあって悪くない……かも?
「この方が、お父さんもお母さんも安心できるんだよね?」
「そうだね、見えないところで何かあるかと思うと仕事が手につかないと思って……」
「……分かった。 あたしも心配かけたくないし、それで二人が安心できるならいいよ? ただ、コメントは見えるようにしてほしいかな……一人じゃ無理なことも相談できるし、一方通行なのはちょっと寂しいかなって」
「ありがとう、わかった。 どんな遊び方をしてても止めないし、怒ったりしない。 自由にファンタジアの世界を駆け回って、たくさんいろんな経験をしてきなさい」
そう言って抱きしめてくれる。
お母さんも頭を撫でてくれて、すごく安心する。
まだ未成年だし、ゲームの中で何があるかわからない。
ちゃんと安心してもらうのも大切なことだよね。
「俺の嫁さんにも見てもらうっすよ! こんな可愛い妹ができたぞって自慢するっす!」
「お兄ちゃんのお嫁さん入院してるんだよね?」
「そうっす、元気な赤ちゃんを産むために病院に居るっすよ? もうチャンネルも教えてあるから、次の配信から見てくれると思うっすよ!」
「そっか、あたしの旅がお嫁さんの癒やしになってくれたら嬉しいな」
「絶対になるっす! さっきのも見てたっすけど、みーんな癒やされてたっすよ! あんなに可愛い猫がたくさん居て、それを綺麗に美人にしちゃうとか見てて楽しかったっす♪」
「えへへ♪ お嫁さん……お姉ちゃんもいつか一緒に旅できたらいいな」
「そうっすね、まだ先の話っすけど絶対に一緒に遊べるっす!」
「うん、楽しみ♪」
赤ちゃんが産まれても、子育てがあるからすぐには無理だよね。
穂香の時も夜泣きとかあって、お母さんもお父さんも大変な思いしてるのを見てたし。
いつになるか分からないけど、いつか一緒にたのしく旅をしてみたいな。
それから改めて誕生会をスタートした。
ケーキの火を消して、たくさんの料理を食べて、決定版!まるっと生涯ゲームでも遊んだ。
それで、16時くらいにお兄ちゃんは帰っていった。
お姉ちゃんのお見舞いに行くんだってさ、話したいことがいっぱいあるって笑ってた。
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再ログインしたあたしは、また噴水前に立っていた。
どうやら、宿屋に泊まらなかった場合は必ず噴水前に現れる仕様らしい。
こういうのを【リスポーンポイント】って言うんだってさ。
「ユキさん、ナビさん、戻ってきたよ」
『おかえりなのだ、マタタビ』
「んにゃー(おかえりなのー)」
「そういえば、二人はログアウト中ってどうしてるの?」
『我たちは専用の空間に転送されるのだ。 そこらの宿屋より快適な空間だから、まったりマタタビが来るのを待ってたのだ』
「にゃー、んにゃんにゃ(でもー、やっぱりマタタビの近くがいいなの)」
「ありがとう♪ わしゃわしゃー」
「んにゃー♪(やーんなのー♪)」
そうやって二人と戯れていると、目の前に小さな白い球体が近寄ってきた。
そっか、これが配信用のカメラなんだ、今のも見られてるんだよね。
「あ、その、えっと……みなさんこんばんわ! マ、マタタビです!」
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:おっこんばんわ!
:こんばんにゃー!
:ついに俺たちが認知されたぞ! こんばんわー!
:やーんプリティ! こんばんわ、んちゅっ♪
:配信が本人公認になったってことかな? こんばんわ!
:ばんわんこー
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カメラの周りに吹き出しがぴょこぴょこ出てきて、たくさんの人が挨拶を返してくれる。
なんか楽しいかも♪
「えっと、家族がどこでも見れるようにって配信設定してくれました。 まだ配信については分からないことばかりだけど、みなさんと一緒にいろんな場所を旅できたらいいなって思ってます!」
『おや、配信しているのだ? 我も写ってるのだ? 写ってるのだ?』
「んにゃー?(ユキも見られてるなのー?)」
「そうだよ? 二人もご挨拶しよっか」
『うむ! 我はチュートリアルナビゲーションAI、ナビというのだ! 本来は絶対にテイムできない存在なのだが、ちょっとしたきっかけでマタタビと旅をすることになったのだ! よろしくなのだ!』
「んにゃー、にゃー(ユキはユキなのー、よろしくなのー)」
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:ほう、この妖精はテイムできないのか、残念
:猫の方はにゃんにゃん言ってるだけでわからないなwww
:どっちも可愛いからよし!
:そのきっかけが気になるが……つっこまない方がいいんだろうな
:対応されてないってことは、運営からOKが出てるんだろうしいんじゃね?
:私もナビ欲しいなー、けっこう手探りなんだよねこのゲーム
:いいじゃない、この配信で解消することもあるかもしれないわよん?
:なにはともあれ、よろしくだな!
:よろしくー!
:三人の旅に幸あれ! よろしく!
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「そっか、ユキさんの声はあたしにしか分からないんだっけ」
『そうなのだ。 でも、マタタビが伝えてあげれば問題ないのだ』
「そうだよね。 ユキはユキなの、よろしくなのって言ってました!」
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:語尾が「なの」なのは意外だ
:パートナー猫もAI積んでてそれぞれ性格が違うらしい
:そうなのか、ツンデレ猫さんと旅してみたいかも
:いいわね、あたいも猫耳買っちゃおうかしらん
:猫耳オカマとか誰得だよwww
:あん?
:ごめんなさい……
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「と、とりあえず! 目標は特にないんだけど、色々な場所に行って綺麗な景色をいっぱい見たいなって思ってます! その中でいろんな猫さんと出会えたら嬉しいかな」
『うむうむ、出会いや別れはかけがえのない経験なのだ。 そのためにも準備はしっかりしないとなのだ』
「そうだね! とりあえず、ゴドロフの鍛冶工房だっけ? そこに行ってみようかなって思ってるよ」
「にゃー(行くなのー)」
「配信ってこんな感じでいいのかな? 大丈夫?」
『大丈夫なのだ、あまり意識しすぎて楽しめないのは本末転倒のだ。 たまにコメントを見るくらいが丁度良いと思うのだ』
「そっか、じゃあ今は目的地も決めたし向かおっか」
『そうするのだ』
「レッツゴー♪」
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:さすがナビ、よく分かってる
:このほんわかした雰囲気がいいんだよなー
:あたいにも子供がいたらこんな気持になるのかしらん
:親心で見守っちゃうよね
:ゆったり暖かい目で見守っていこうぜ
:はてさて、どんな旅になるのかね、楽しみだ
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