第6話 理由 

 そして、日曜日。俺とミサキは……近所を一緒に歩いていた。


 昼頃に、ミサキが俺の家まで迎えに来た。そして、そのまま流れで俺はミサキと一緒に出かけることとなった。


 しかし……ミサキはどこに行くというわけでもない。先程からずっと、黙って歩いている。


「……えっと、ミサキ。その、どこへ行くんだ?」


 俺が聞くと、ミサキはちらりと俺の方を見る。


「別に。どこにいくとか、考えてないよ」


「え……。そ、そうなの?」


「うん。適当に近所をぶらぶらしようかな、って思っただけだから」


 ぶらぶら……いや、実際完全に目的もなく出歩いている感じだし、嘘ではないのだろう。


 ……いや、まぁ、それでいい。正直、ミサキと二人でどこかに出かけるというと……それは、それでなんだか――


「デートだと思ってた?」


 ミサキは俺が思っていたことをそのまま言ったので、俺は思わずごまかすように咳き込んでしまった。


「い、いや……。別に……」


「ふーん。じゃあ、なんだと思っていたの?」


「え? いや、まぁ……ミサキがどこかに出かけたいのかな、って」


「うん。でもさ、もし出かけたいなら1人でどこかに行けばいいじゃん。わざわざ君のことを誘う必要、ある?」


 ミサキは俺に迫るように、ジッと俺のことを見つめてくる。


 ……言われてみれば確かにそうだ。どこかに行きたいのならば、わざわざ俺を誘う必要なんてない。


 そうなると、なぜ、ミサキは俺のことを誘ったのか、ということになるが……


「……いや、1人で出かければいいよね」


「じゃあ、なんで私が君を誘ったか、理由、わかる?」


 そう言われて俺は答えに困ってしまう。ミサキは俺のことをジッと見てくる。その瞳はまるで「答えを間違えるなよ」と言っているようだった。


「……わからない、かな。あ、あはは……」


 俺がそう言うとミサキは俺のことをまたしばらく見ていた。


「じゃあ、どうして私がわざわざ君のことを誘ったか、その理由を今日、別れる時に最後にもう一度聞くから、よく考えておいて」


「え……。ミサキ、それは……」


 そして、ミサキはそれ以上話を続けようとしなかった。


 こうして、何故、ミサキが俺をわざわざ誘ったのか……。そのことを俺はその日一日考えなければいけなくなったのであった。

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