第5話 誘い
「ねぇ、今度の日曜、暇?」
その日の下校中、いきなりミサキにそんなことを聞かれた。
「え……。日曜日?」
「暇、だよね?」
ミサキは俺の方に近づきながら、少し威圧的に俺に訊ねてくる。
「……まぁ、暇、かな……」
「じゃあ、ちょっと付き合ってよ」
付き合うって……一体なんだろう? ミサキからこんなことを言ってくるなんて珍しい気がする。
長い付き合いだが、小さい頃はともかく、最近は、二人でどこかに出かけるとか、そういうことはなかったな……なんて、俺は昔のことを懐かしんでしまう。
「わかった。まぁ、俺でいいなら付き合うよ」
と、俺がそう言うとミサキが少しムッとしたような顔をする。
「……あのさぁ。俺でいいなら、って何?」
「え……。いや、俺はただ……」
すると、ミサキはさらに俺に顔を近づけてきて、鋭く俺のことを睨む。
「私、別に誰でもいいって感じで、誘ったわけじゃないんだけど」
「あ……。いや、俺も別に深い意味で言ったわけじゃなくて……なんか……ごめん」
なんだか変なところでミサキの怒りを買ってしまったようである。俺は反射的に謝ることしかできなかった。
ミサキはしばらく俺のことを睨んでいたが、少しすると、俺から離れていく。
「それとも、何? 私は、君以外の人を誘ったほうがいいわけ?」
「え……。いや、それは……」
正直、それは嫌だった。ミサキが俺以外と二人きりで出かけるのは……なんだかモヤモヤするような気がする。
だが、それは……完全に俺のエゴなのだ。
「……いや。ミサキがそうしたいのなら、俺は――」
と、そこまで言おうとしてミサキが俺のことを鋭い目つきで睨みつけているのに気付く。俺はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。
「そもそも、私、君以外の人を誘いたいって、言ったかな?」
「あ、いや……。言ってない、です……」
と、そこまで言うと、ミサキはまた俺の方に近づいてくる。そして、いきなり耳元で囁いた。
「日曜日。絶対来て」
それだけ言ってミサキは去って行ってしまった。俺は呆然とその場に立ち尽くす。
ミサキは……どうしたのだろうか? 俺はただただ、そのことが気になってしまったのだった。
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